セルフホスト型のゲームライブラリー管理環境「RomM」を、改造済みPlayStation Vita/PlayStation TVから利用できるHomebrewアプリ「RomM Vita」のv0.3.0が公開されました。
RomM Vitaを導入すると、PS Vitaから自分のRomMサーバーに登録しているゲームライブラリーを閲覧し、ゲームデータを本体へダウンロードしてRetroArchで起動できます。さらに、ゲーム内のセーブデータやセーブステートをRomMと双方向で同期することも可能です。
10月2日に公開されたv0.3.0では、これまで対応していたスーパーファミコン(SNES)に加えて、ゲームボーイアドバンス(GBA)へ実験的に対応。さらに、ダウンロード済みゲームをネットワーク接続なしで起動できるオフラインモードや、セーブデータのバージョン管理機能なども追加されています。
●RomM Vita
https://github.com/abduznik/rommvita
PS VitaをRomMのクライアントとして利用可能に
「RomM Vita」は、PS Vita/PlayStation TV向けに開発されている非公式のコミュニティ製RomMクライアントです。RomM本体にPS Vita対応機能が追加されたわけではなく、RomMやRetroArchとは別のプロジェクトとして公開されています。
RomMは、自分で用意したゲームデータをサーバー上にまとめて管理し、複数の端末からライブラリーを利用できるセルフホスト型の環境です。「RomM Vita」では、そのライブラリーをPS Vita側から直接閲覧し、遊びたいゲームを選んで本体へダウンロードできます。
ダウンロードしたゲームは、別途導入したPS Vita版RetroArchを利用して起動します。「RomM Vita」そのものにエミュレーターが含まれているわけではなく、RomMやRetroArchがゲームデータを提供する仕組みでもありません。あくまで、自分のRomMサーバー上にあるライブラリーとPS Vitaをつなぐクライアントという位置付けです。
ライブラリーには検索機能のほか、本体へダウンロード済みのゲームだけを表示する機能も用意されています。ゲーム一覧はPS Vita側にキャッシュされ、バックグラウンドで更新されるため、毎回サーバーからすべてを読み込み直す必要がない仕組みになっています。
v0.3.0ではGBAへ実験対応
対応機種は、これまでのスーパーファミコンに加えて、v0.3.0からゲームボーイアドバンスが追加されました。
SNESではRetroArchのSnes9x系コアを使用。GBAについては現時点では「Experimental(実験対応)」という扱いで、基本的には「gpSP」コアを使用し、利用できない場合には「mGBA」または「VBA Next」をフォールバックとして使用する仕組みになっています。
ゲームを選択すると、まだPS Vita側に存在しない場合はRomMサーバーからダウンロードされ、その後RetroArchが対応するコアで起動します。今のところ対応システムはSNESとGBAのみですが、開発者は今後さらに対応プラットフォームを増やす計画を示しています。
特にGBAについては、まだ実験段階という点には注意が必要です。安定した正式対応として扱うのではなく、今後のアップデートで挙動や対応コアなどが変更される可能性を考慮したほうがいいでしょう。
ダウンロード済みならオフラインでも起動可能に
v0.3.0で追加されたもうひとつの大きな機能が、オフラインモードです。
これまではRomMサーバーへ接続してライブラリーを利用することが前提でしたが、v0.3.0ではPS Vitaへダウンロード済みのゲームであれば、RomMへログインできない状態でも一覧から選択して起動できるようになりました。
そのため、自宅ではRomMサーバーからゲームをPS Vitaへ入れておき、外出先ではネットワーク接続なしで遊ぶといった使い方もできます。
オフライン中に更新されたセーブデータやセーブステートについては同期待ちとして扱われ、後からRomMへ接続したときに同期できます。常時RomMサーバーへアクセスできる必要がなくなったことで、携帯ゲーム機であるPS Vitaらしい使い方がしやすくなったといえそうです。
ゲーム内セーブとセーブステートをRomMと双方向同期
「RomM Vita」の特徴のひとつが、RomMとPS Vitaの間でゲーム内セーブとセーブステートを同期できることです。
ゲームを起動する前にRomM側へ新しいセーブデータやステートがないか確認し、サーバー側のほうが新しければPS Vitaへ取得します。逆にPS Vitaでゲームを進めた場合には、次にRomM Vitaを開いたときに変更されたファイルをサーバーへアップロードする仕組みです。
これにより、たとえば別のRomM対応環境でゲームを進めたあと、そのセーブをPS Vitaへ取得して続きをプレイし、再びPS Vitaで進めたデータをRomMへ戻すといった運用が可能になります。
ただし、セーブステートについてはエミュレーターのコアとの互換性があります。そのためRomM Vitaでは、ステートを作成したコアとの互換性を確認し、PS Vita側で利用できないステートの場合には「Incompatible cores」と警告して取得しない仕組みが導入されています。
セーブは上書きではなくタイムスタンプ付きで保存
v0.3.0では、セーブデータの履歴管理についても仕組みが変更されています。
PS VitaからRomMへセーブやステートをアップロードすると、単純に既存ファイルを上書きするのではなく、日時を付けた新しいバージョンとして保存されます。たとえばゲームのセーブデータであれば、ファイル名に「2026-09-20_19-49-15」のようなタイムスタンプが追加される仕組みです。
RomM Vitaからアップロードされたファイルには「rommvita」という情報が付けられ、ゲームごとに新しい10バージョンを保持します。古くなったRomM Vita自身のバージョンは整理されますが、ほかのツールが作成したセーブやステートを削除することはありません。
また、RomMからファイルを取得してPS Vita側のデータを書き換える場合も、既存のローカルファイルを「.bak」としてバックアップしてから処理されます。サーバー側とPS Vita側の両方で変更されていた場合も、Vita側のファイルをアップロードしてサーバー側の既存データも残す仕組みとなっており、できるだけ進行状況を失わないように設計されています。
利用には改造済みPS VitaとRetroArchが必要
「RomM Vita」は通常状態のPS Vitaで利用できるアプリではありません。
動作にはHENkaku/Ensoを導入したPS VitaまたはPlayStation TVと、VitaShellが必要です。また、エミュレーターとしてPS Vita版「RetroArch 1.22.2」を別途インストールし、RomM Vitaを導入する前に一度起動して初期設定を完了しておく必要があります。
サーバー側はRomM 5.0.0以上が対象です。RomMのWeb UIからClient API Tokenを作成し、表示された8文字のペアリングコードをPS Vitaで入力するか、本体のカメラでQRコードを読み取ることで接続できます。ペアリング用コードは5分で期限切れになり、1回のみ利用できる仕組みです。
なお、PS VitaからRomMサーバーへWi-Fi経由でアクセスできる必要があります。READMEではLAN上のサーバーアドレスを利用するよう案内されており、PS VitaからTailscaleやVPNのアドレスを直接利用することはできないとされています。
また、HTTPS利用時もTLS証明書の検証は行われません。通信自体は暗号化されるものの、接続先サーバーの認証は行われないという制限があるため、この点も利用前に把握しておいたほうがいいでしょう。
同じRomMクライアントでもPS5版とは異なるアプリ
当サイトでは10月2日に、脱獄済みPlayStation 5をRomMのクライアントとして利用できる「RomM Sync for PS5」も紹介しました。
こちらもRomMからゲームを取得したり、セーブを同期したりできるという点では似ていますが、「RomM Vita」とは作者も実装も異なる別のプロジェクトです。PS5版ではWeb画面やバックグラウンドの同期処理を中心にRomMとエミュレーターを連携させるのに対して、「RomM Vita」はPS Vita上で直接ゲームライブラリーを閲覧し、そのままダウンロードしてRetroArchを起動するという、携帯ゲーム機向けのフロントエンドに近い使い方になっています。
さらにv0.3.0ではオフライン起動にも対応したことで、「自宅のRomMからゲームをPS Vitaへ入れ、外ではオフラインで遊び、帰宅後にセーブを同期する」といった流れをひとつのアプリから行えるようになりました。
興味深いのは、その開発速度です。GitHubの表示では10月2日10時54分に公開されたv0.1.0はRomMとの接続と認証だけを行うテスト版でしたが、11時44分公開のv0.2.0ではSNESライブラリー、RetroArch起動、セーブ同期に対応。さらに18時40分公開のv0.3.0ではGBAやオフラインモード、バージョン付きセーブまで追加されています。
まだ対応プラットフォームが少ない初期段階のプロジェクトではありますが、PS VitaからRomMライブラリーを直接利用し、ゲームの取得から起動、セーブ同期までをひとつにつなげられるのは面白いところです。今後、対応システムがどこまで増えていくのかにも注目したいところです。















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