1980年代にセガから発売された家庭用ゲーム機「セガ・マスターシステム」。そんなレトロゲーム機の映像をFPGAを使ってデジタル化し、現代のディスプレイでよりクリーンに表示するための改造基板「VDP Digitizer」が、米国のKoala Koaでも販売開始されました。
●VDP Digitizer公式販売ページ
https://www.c0pperdragon.com/product/18846104/vdpdigitizer
●VDP Digitizer公式ドキュメント/取り付け方法
https://github.com/c0pperdragon/LumaCode/wiki/VDPdigitizer-(for-Master-System)
●米国販売店 Koala Koa:VDP Digitizer
https://www.koalakoa.com/product-page/sms-lumacode-vdpdigitizer-by-c0pperdragon
RetroRGBが2026年8月17日に伝えたもので、米国での販売価格は55ドル。開発者c0pperdragon氏のショップでも39ユーロ+送料で販売されていますが、米国ユーザーにとっては送料や輸入に掛かるコストを抑えて入手できるようになります。
VDPから出てくるRGB信号をFPGAで再デジタル化
「VDP Digitizer」は、セガ・マスターシステム本体内部に取り付ける小型の改造基板です。その名前にある「VDP(Video Display Processor)」とは、ゲーム画面を作り出している映像処理チップのこと。
VDP DigitizerにはFPGAが搭載されており、VDPから出力されるアナログRGB信号を読み取り、それをデジタルの6bit RGB値として再量子化。さらに「Lumacode」と呼ばれる信号へ変換して出力します。
つまり、マスターシステムから出てきた映像をそのままアップスケーラーへ送るのではなく、一度FPGA側でRGBの色情報を判定し直して、デジタルデータとして扱いやすい信号へ作り直しているというわけです。
「Lumacode」って何?
そこで登場するのが「Lumacode」です。Lumacodeはc0pperdragon氏が開発した、古いゲーム機やコンピューターから映像情報を取り出すための方式です。
VDP Digitizerの場合は、1ピクセルにつきRGBそれぞれの色情報をLumacode信号としてシリアル化して出力します。これをLumacode対応機器側でデコードすることで、ピクセル単位のクリーンな映像として再構築できます。そのため、VDP Digitizer単体をテレビのHDMI端子に接続できるわけではありません。
現在は「RetroTINK 4K」シリーズや「OSSC Pro」、対応ファームウェアを導入した初代OSSCなどでLumacode信号を利用できます。RetroRGBでは、この組み合わせによって得られる映像について、実質的にHDMI Modに近い結果が得られると評価しています。
マスターシステムは元々RGBを出せる。それでも改造する理由は?
ここで疑問に思うのが、「そもそもマスターシステムってRGB出力できるのでは?」ということです。実際、その通りです。マスターシステムはRGB信号を出力できるため、RGB対応ケーブルを利用すれば比較的高品質な映像を取り出せます。
しかしRetroRGBによると、マスターシステムの個体によってはRGB出力にノイズやいわゆる「jailbars(縦縞)」が目立つ場合があります。特に現代の液晶ディスプレイへアップスケーラー経由で出力すると、こうしたノイズまで鮮明に見えてしまうことがあります。
VDP Digitizerでは、VDPからのRGB信号をFPGA側で再量子化してLumacodeとして送り出すため、こうしたアナログ映像由来のノイズを抑えたピクセル単位の映像を得ることができます。公式販売ページでも、「noise-free lumacode signal」を生成してピクセルパーフェクトなデジタル映像へアップスケールできると説明されています。
つまり単純に「RGBをHDMIに変換する」のではなく、一度アナログ化されたVDPのRGB信号をFPGAで読み直し、デジタル映像として再構築するところが、この基板の面白いポイントです。
チップを取り外す必要はないが、ハンダ付けは必要
取り付けについては、本体を開けて作業する必要があります。VDP DigitizerはマスターシステムのVDPから、
- Red
- Green
- Blue
- CS(同期信号)
- CLK
などを取り出し、さらに5VとGNDを接続します。対応するVDPによって接続するピンの位置が異なるため、NES向けのLumacode基板のようにチップの上へそのまま取り付ける方式ではなく、配線を個別にハンダ付けします。
とはいえ、VDP自体を取り外す必要はありません。基板上の接続しやすいポイントから信号を取ることも可能です。RetroRGBでは、ケースを切ったり恒久的な加工を加えたりせずに取り付ける「No-Cut Mod」として構成することも可能だとしています。
初代マスターシステムとMaster System II、NTSC/PALの両方に対応
VDP Digitizerは初代セガ・マスターシステムと「Master System II」の両方に対応。さらにNTSC版とPAL版の双方で利用できます。ただし、搭載されているVDPの種類によって信号を取り出すピンが異なります。
公式ドキュメントでは、315-5124と315-5246の2種類について接続先が紹介されています。また、取り付け後にはRGBそれぞれの信号を正しく判定するためのキャリブレーションが必要になる場合があります。
VDP DigitizerではRGB各チャンネルについて複数のしきい値を調整する仕組みが用意されており、設定内容は基板側に保存されます。そのため、一般的な映像ケーブルの交換と比べれば、かなりマニア向けの改造といえるでしょう。
40年近く前のゲーム機からクリーンな映像を取り出す
VDP Digitizerそのものは今回初めて登場した製品ではなく、公式GitHubのマスターシステム向けドキュメントも2026年7月29日までに公開されています。今回のニュースは、米国のKoala Koaが新たに販売を開始したことが中心です。
しかし、1980年代に設計されたゲーム機のアナログ映像を、FPGAを使って改めてデジタルデータとして取り出すという発想はなかなかユニークです。HDMI端子を直接増設する一般的なHDMI Modとも、単純なRGB Modとも異なる「Lumacode」。
RetroTINK 4KやOSSCなど、レトロゲーム向けアップスケーラーを所有している人にとっては、古いゲーム機からいかにクリーンな映像を取り出すかという新たな選択肢のひとつになりそうです。
via.RetroRGB















ダンジョンズ&ドラゴンズ ビジュアル大全 半世紀を超えるその歴史とアート









ゲームコンソール2.0