Android向けPlayStation 3エミュレーター『ARMSX3』の最新版となるバージョン0.9.7が、2026年9月6日にGitHubで公開されました。日本時間では9月7日早朝のリリースとなります。
●ARMSX3 0.9.7 GitHub Release
https://github.com/ARMSX2/ARMSX3/releases/tag/0.9.7
●ARMSX3公式GitHub
https://github.com/ARMSX2/ARMSX3
今回のアップデートでは、Snapdragon 8 Eliteクラスの端末でCPUが不必要に動き続けていた処理が修正されました。これによりCPU負荷を抑え、無駄な発熱の軽減につながることが期待できます。
さらに、Android標準の画面録画機能などからゲーム音声を収録できる「Recording-compatible audio」設定も新たに追加。『Batman: Arkham City』や『Minecraft』で発生していた不具合への修正なども行われています。
『ARMSX3』は、PC向けPlayStation 3エミュレーター『RPCS3』をベースに、ARM64を採用したAndroidデバイス向けに開発が進められている非公式のエミュレーターです。
CPUが何もしていないのに回り続けていた3つの処理を修正
今回のアップデートで、スマートフォンユーザーにとってとくに気になる変更となりそうなのが、CPU負荷に関する修正です。
開発者によると、これまでARMSX3内部には「有用な処理を何もしていないにもかかわらずCPUを消費していた」箇所が3つ存在していました。そのひとつが、本来CPUコアをスリープさせるための待機処理です。
Snapdragon 8 Eliteクラスの端末では、グラフィックスコマンドループやメモリーシステム内の待機処理が、スリープせずフルスピードで回り続けていたとのこと。0.9.7ではこれが修正され、正しくスリープするようになっています。
また、テクスチャ転送のたびにふたつの状態を行き来していた不要な処理も削除されました。開発者は、これらの変更自体が画面の見た目を変えるものではないものの、CPU時間を解放し、理由のない端末の発熱を防ぐためのものだと説明しています。
ただし、具体的に温度が何度下がる、バッテリー駆動時間がどの程度延びるといった実測値は公開されていません。また、すべてのAndroid端末やゲームで一律に性能が向上するという意味ではありません。
『Batman: Arkham City』と『Minecraft』の不具合も修正
ゲーム別では、『Batman: Arkham City』でSnapdragon 8 Elite/Adreno 830環境において発生していたGPUハングが修正されています。
原因は単純にGPUへの処理要求が多すぎたことではなく、Adreno 830でグラフィックス処理からコンピュート処理へ切り替える部分にあったとのことです。
そこで0.9.7では、一部の変換処理をコンピュート側ではなくグラフィックスパイプライン上のフラグメントシェーダーで実行するように変更。開発者によるテストでは、バットスーツが登場する場面やTwo-Faceのカットシーンを通過できることが確認されています。この変更はQualcomm製GPU向けに適用されており、ほかのタイトルにも効果が出る可能性があるとされています。
『Minecraft』では、ゲームがハングする問題とテクスチャの色が破損する問題を修正。メモリーへデータを書き戻す際のバイトスワップ処理が、本来DMAで書き込まれていない領域まで変更していたことが原因で、この処理はデフォルトで無効化されました。
Androidの画面録画でゲーム音声を収録可能に
もうひとつ実用面で大きな変更が、新たに追加された「Recording-compatible audio」設定です。
ARMSX3では音声出力にOboeの低遅延経路を利用していますが、この経路ではMMAPストリームが使われるため、Androidの「AudioPlaybackCapture」からゲーム音声を取得できませんでした。そのため、端末ではゲーム音声が聞こえていても、画面録画した動画には音声が入らないケースがありました。
0.9.7では「Recording-compatible audio」を有効にすることで、Android側から取得可能な音声経路へ切り替えられるようになっています。これにより、対応する画面録画機能からゲーム音声を収録することが可能になります。
一方で、低遅延経路を使用しなくなるため、開発者は「少しの遅延」と引き換えになると説明しています。普段ゲームを遊ぶときは低遅延を優先し、プレイ動画を録画するときだけ有効にするといった使い分けがよさそうです。
RPCS3本家から84コミットを取り込み
0.9.7ではこのほか、ベースとなっているRPCS3から84件のコミットが取り込まれています。
とくにblitエンジンとsurface cacheが大きく更新されており、ゲーム側が要求していない補間処理の抑制や、BGRA8フォーマット選択の修正などが導入されています。blitエンジンのアップスケーリングも再び有効化されました。
開発者は今回のバージョンについて、AYN Odin 3とTurnip Gen8 V34/V35を組み合わせた環境でテストしたとしています。
当サイトでは8月19日に『ARMSX3 0.9』について紹介しましたが、その時点ではARM64とx86で発生していた浮動小数点演算の差異解消や、『Borderlands 2』などの動作改善が大きなテーマでした。
それから約3週間でバージョン0.9.7まで進み、今回はゲーム互換性だけではなく、CPU負荷や発熱、画面録画といったAndroid端末で実際に利用するときの使い勝手にも手が入りました。まだ発展途上のプロジェクトではあるものの、モバイル環境でのPlayStation 3エミュレーションに向けて着実に改善が続いているようです。
















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