1988年の「ファミコンネットワークシステム」が2026年に復活! 『スーパーマリオブラザーズ』の通信2人プレイまで実現

1988年の「ファミコンネットワークシステム」が2026年に復活! 『スーパーマリオブラザーズ』の通信2人プレイまで実現

1988年に登場したファミコン用の通信アダプター「ファミコンネットワークシステム」を、2026年に再び通信できる状態まで復活させてしまった海外ユーザーが登場しました。

製作したのは、変わったレトロハードウェア関連のプロジェクトを手掛けているThroaty Mumbo氏です。

約5カ月にわたる作業の末、電話回線をシミュレートした環境からファミコンネットワークシステムをPC上の自作サーバーへ接続し、かつて提供されていた「スーパーマリオクラブ」を思わせるサービスを表示することに成功。

さらにそれだけでは終わらず、2台のファミコンをファミコンネットワークシステム経由で接続し、『スーパーマリオブラザーズ』をふたりで遊ぶための独自パッチまで製作しています。

1988年にファミコンを電話回線につないだ「ファミコンネットワークシステム」

「ファミコンネットワークシステム」は、1988年に任天堂から登場したファミコン用の通信アダプターです。現在のオンラインゲームのようにインターネットへ接続するものではなく、モデムを利用して電話回線経由で各種サービスへ接続する仕組みになっていました。

Hackadayによると、株式売買や銀行関連サービスのほか、「スーパーマリオクラブ」などが提供され、ファミコンネットワークシステム自体は約13万台が販売されたとのことです。ただし、当然ながら当時接続していたサービス側のサーバーは現在では存在しません。

つまり、2026年にファミコンネットワークシステム本体を入手したとしても、電話線をつないだだけでは何も利用できないわけです。そこでThroaty Mumbo氏は、ネットワークの反対側まで自分で作ることにしました。

専用の通信カードとプロトコルを解析

ファミコンネットワークシステムでは、本体へ専用の通信カードを挿入してサービスを利用します。Throaty Mumbo氏が入手した機器にはカードが付属していませんでしたが、最終的には動作する「スーパーマリオクラブ」のカードを入手。そこからシステムの解析を進めていきました。

さらに問題になったのが通信方式です。ファミコンネットワークシステムでは、NTTの「DDX-TP」と呼ばれる独自プロトコルが利用されており、現在簡単に仕様書を入手して接続できるようなものではありません。

そこで、NESdevコミュニティで以前から進められていた解析結果なども活用しています。また、Ben Boldt氏によって開発された書き換え可能な通信カード「Flash-FNS」も存在しており、ファミコンネットワークシステム上で独自のプログラムを動かす環境が整えられています。

PC上に「スーパーマリオクラブ」のサーバーを再実装

今回特に重要なのが、Throaty Mumbo氏が公開した「SMC-Server」です。これはファミコンネットワークシステム用の「スーパーマリオクラブ」カードと通信するための、PC側の模擬サーバーです。

カード内部の6502コードをリバースエンジニアリングし、ファミコン側がどのようなデータを要求し、どのような形式で受け取るのかを解析。その挙動に合わせてサーバー側を新たに実装しています。

接続には、

  • ファミコン
  • ファミコンネットワークシステム
  • スーパーマリオクラブのカード
  • 電話回線シミュレーター
  • USBモデム
  • PC

などを使用します。

USBモデム側は1200bpsで応答するようになっており、さらに当時のNTT電話網で使用されていた回線極性反転も再現する必要があります。

一般的な電話回線シミュレーターではこの処理が行われないため、Throaty Mumbo氏の環境ではリレーボードまで追加して対応しています。

こうして、1980年代のファミコンが2026年のPC上で動いているサーバーへ「電話をかける」環境が完成しました。

当時の任天堂サーバーを復元したわけではない

ただし、ひとつ重要な点があります。「SMC-Server」で表示される内容は、当時任天堂が運営していたサーバーのデータを復元したものではありません。

GitHubでもこの点は明確に説明されており、発売予定、売上予測、レビュー、販売店向けランキングなど、現在表示されるデータは当時の雰囲気を再現するために作られた架空の内容です。

任天堂のコードやROM、当時のサーバーデータなども含まれていません。つまり今回復活したのは「1988年当時のサービス内容そのもの」というより、ファミコンネットワークシステムが当時のように電話回線を通じてサーバーと通信する仕組みというわけです。

さらに『スーパーマリオブラザーズ』を通信ふたりプレイ化

ここまででも十分にすごいプロジェクトですが、Throaty Mumbo氏はさらにファミコンネットワークシステムの通信機能を使った新しい用途も実験しています。それが『スーパーマリオブラザーズ』用の「SMB-FCNS」です。

これはオリジナルの『スーパーマリオブラザーズ』へ変更を加え、ファミコンネットワークシステムを利用して2台のファミコンを接続できるようにしたものです。動作させるには、

  • ファミコン×2
  • ファミコンネットワークシステム×2
  • Flash-FNSなどの書き換え可能な通信カード×2
  • 電話回線シミュレーター
  • 電話ケーブル

などを用意します。一方のファミコンを発信側、もう一方を着信側として接続することで、2台間に通信回線を確立します。実際に公開されたデモでは、メニューに「Dial」と「Answer」が追加され、2台のファミコンを接続して『スーパーマリオブラザーズ』を2人で遊ぶ様子が披露されています。

もちろん、これは1980年代に存在していた秘密のオンライン機能が発見されたという話ではありません。

Throaty Mumbo氏自身も、もっと簡単に『スーパーマリオブラザーズ』をオンラインで遊ぶ方法が存在する2026年に、わざわざファミコンネットワークシステムを利用する意味はほとんどないとしたうえで、「Proof of Concept(概念実証)」として製作したものだと説明しています。

ファミコン同士で文字メッセージを送るアプリも公開

さらに8月16日には、「FCNS-Messenger」という新しいプログラムもGitHubで公開されています。こちらは2台のファミコンネットワークシステムを電話回線で接続し、文字メッセージを送り合うためのデモアプリです。

●FCNS用メッセージアプリ:FCNS-Messenger
https://github.com/ThroatyMumbo/FCNS-Messenge

片方のファミコンでSELECTボタンを押して着信待ち状態にし、もう片方でSTARTボタンを押して発信。接続後は画面に文字入力用のキーボードとメッセージ欄が表示され、ファミコン同士でテキストを送受信できます。

通信速度は1200bps。仕組みとしては、接続が成立すると2台のファミコンの間に1200bpsのシリアル通信経路が作られ、そこへテキストデータを送り込んでいます。1988年のファミコン用モデムを使って、2026年にファミコン同士でチャットしているわけです。

38年前の周辺機器が再び「開発プラットフォーム」に

今回のプロジェクトで面白いのは、単に古い通信サービスの画面を再現したところで終わっていない点です。専用カードや通信プロトコルを解析し、PC側のサーバーを再実装したことで、ファミコンネットワークシステムを使った新しいソフトまで作れるようになりました。

当時のサービスを模した「SMC-Server」。ファミコン2台で『スーパーマリオブラザーズ』を遊ぶ「SMB-FCNS」。そして文字メッセージを送り合う「FCNS-Messenger」。38年前に登場した通信周辺機器が、2026年になって再びひとつの開発プラットフォームとして活用され始めたともいえそうです。

今ならエミュレーターやインターネットを使えばはるかに簡単に実現できることを、あえて1988年のファミコン用通信機器を使って実現するというこのプロジェクト。レトロハードウェアの解析という意味でも、かなり興味深い試みではないでしょうか。

ABOUT US
アバター画像
retrogamer