MiSTer FPGAといえば、TerasicのFPGA開発ボード「DE10-Nano」をベースにしたレトロゲーム環境としておなじみですが、より新しいFPGAを搭載した「DE25-Nano」でMiSTerのような環境を実現しようというプロジェクトが動き始めています。
その名も「MiSTic」。
まだ開発初期段階ではあるものの、すでにカプコンのCPS1、CPS1.5、CPS2に加え、NES(海外版ファミリーコンピュータ)やゲームボーイのコアがDE25-Nano上で動作するところまで開発が進んでいます。
●MiSTic開発者Fulvio氏「MiSTic – Dev Blog #1」
https://ko-fi.com/post/MiSTic–dev-blog-1-T7O424AVH4
DE25-NanoでMiSTerのような環境を構築
「MiSTic」はFulvio氏が開発を進めているFPGAプロジェクトで、同氏は2026年8月2日に「MiSTic – Dev Blog #1」と題した開発ブログを公開しています。
MiSTer FPGAで利用されている仕組みをDE25-Nanoへ適応させ、既存のゲーム機やアーケード基板を再現するFPGAコアを動作させようというものです。
8月中旬にはPixel Cherry Ninja氏が実機で5種類のコアをテストした動画も公開。DE25-Nano上で実際にゲームを起動し、プレイできる状態まで到達していることが確認されています。
現在動作が確認されているのは、
- CPS1
- CPS1.5
- CPS2
- NES
- ゲームボーイ
の5系統です。
CPS2では『ストリートファイターZERO 3』のほか、『エイリアンVS.プレデター』などが動作。CPS1でも『ストリートファイターII ダッシュ』や『マジックソード』などが実際に動いています。
もちろんMiSTer FPGAで利用できる膨大なコア数と比べれば、現時点ではごく一部に過ぎません。それでも重要なのは、MiSTerとは異なる新しいFPGAボードへコアを移植し、実際のゲームが遊べるところまで動作していることです。
MiSTerのDE10-Nanoより大きなFPGAを搭載
「MiSTic」で使用されているDE25-Nanoは、Terasicが販売しているFPGA開発ボードです。MiSTer FPGAで使用されているDE10-NanoはCyclone V SoC FPGAを搭載しており、FPGA部分には約11万のLogic Elements(LE)が用意されています。
一方、DE25-Nanoには、より新しい「Agilex 5」世代のSoC FPGAが搭載されています。Macnicaによる製品情報では、DE25-Nanoに搭載されている「Agilex A5EB013BB23B SoC FPGA」は約13万8000 Logic Elementsと8.42Mbitの内蔵メモリーを備えています。
単純なLogic Elements数だけで比較すると、
DE10-Nano:約11万LE
DE25-Nano:約13万8000LE
となり、DE25-NanoのほうがFPGA内部で利用できるリソースに余裕があります。さらにDE10-Nanoが1GB DDR3 SDRAMを搭載しているのに対し、DE25-NanoではLPDDR4が採用されています。
ARM側も大幅に強化
FPGA部分だけではなく、CPUとして利用されるHPS(Hard Processor System)側も大きく強化されています。DE10-Nanoでは800MHz動作のデュアルコアARM Cortex-A9が採用されています。
一方のDE25-Nanoでは、
- ARM Cortex-A76×2
- ARM Cortex-A55×2
という構成になっており、Cortex-A76は最大1.4GHz、Cortex-A55は最大1.25GHzで動作します。もっとも、CPUやFPGAのスペックが高いからといって、そのまま「MiSTerより高性能なゲーム機」になるわけではありません。
FPGAコアは対象となるハードウェアをFPGA内部のロジックとして再構成するため、それぞれのコアをDE25-Nano向けに移植・調整する作業が必要になります。
GenerationAmigaも、DE25-Nanoの追加リソースは将来的に複雑なアーケード基板などを実装する際に役立つ可能性がある一方、現時点ではMiSTerより明確に高性能なコアが実現したわけではないと指摘しています。
ゲームボーイでは液晶風の表示にも対応
現在公開されているゲームボーイコアでは、単にゲームを動かすだけではなく表示関連の機能も実装されています。
GenerationAmigaによれば、「Brick Boy」と呼ばれる表示エフェクトを利用でき、ゲームボーイ実機の液晶で見られたゴーストや残像などを再現できます。ほかのフィルターも利用可能です。
こうした表示設定が利用できる点も、単なるFPGAコアの動作テストではなく、MiSTerに近い実用的なレトロゲーム環境を目指していることがうかがえます。
まだMiSTerの代わりになる段階ではない
もっとも、現時点で「DE25-NanoがMiSTer FPGAの後継になった」と考えるのは早そうです。MiSTer FPGAは長年にわたって開発が続けられており、家庭用ゲーム機、アーケード、パソコンなど非常に多くのFPGAコアが公開されています。
周辺機器やSDRAMモジュール、ケース、I/Oボードなどのエコシステムもすでに形成されています。対してMiSTicは、ようやく複数のゲームコアが動き始めた段階です。
GenerationAmigaも、すでにDE25-Nanoを所有している人にとってMiSTicは興味深いプロジェクトである一方、現時点でMiSTicだけを目的にDE25-Nanoを購入する必要性はまだ低いとしています。
実際、現在動作しているCPS1、CPS2、NES、ゲームボーイなどはいずれもMiSTer FPGAですでに成熟したコアが存在しています。
より複雑なFPGAコアへの可能性に注目
それでもDE25-Nanoを使用する意味がないわけではありません。MiSTer FPGAで使われているDE10-NanoのCyclone Vは約11万LEですが、DE25-Nanoでは約13万8000LEまでFPGAリソースが増えています。
MiSTer FPGAでは近年、PlayStation系アーケード基板やより複雑なゲーム機など、FPGAの容量をかなり使用するコアも増えてきました。
そのため、将来的にMiSTic向けのコアが増えていけば、DE10-NanoではFPGAリソースの制約が厳しいシステムを実装する際に、DE25-Nanoの余裕が生きてくる可能性があります。これは現時点では将来性についての話であり、MiSTicでそうしたコアがすでに実現しているわけではありません。
DE10-NanoとMiSTer FPGAの組み合わせが長年レトロゲーム向けFPGA環境の中心となってきた中で、その仕組みをより新しいFPGAボードへ持っていこうという「MiSTic」。
まだ「次のMiSTer」と呼べる段階ではありませんが、CPS2やNES、ゲームボーイなどが実際に動き始めたことで、単なる構想から実働するFPGAゲーム環境へと一歩進んだことになります。
今後どこまでMiSTer向けコアが移植されるのか。そしてDE25-Nanoの追加リソースを生かした、MiSTerでは難しいコアが登場するのか。FPGAレトロゲーム環境の新たな選択肢として、今後の開発が気になるプロジェクトです。
via.GenerationAmiga















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