昨年の11月に購入し、12月の頭に手に入れたFunny Playingの『FPGBC KIT』。こちらは、安価にゲームボーイとゲームボーイカラーのコアに対応したFPGAベースの互換機として話題になったものですが、トラブルなど紆余曲折がありようやく動作できる状態に持ってくることができました。
ここでいっておきたいことは、『FPGBC KIT』自体がトラブルが多いから避けたほうがいいということではなく、この間サポートし続けてくれたFunny Playinのサポートへの感謝です。結果的にはディスプレイのトラブルで動かなかったのですが、その間、新しいケーブルやボードなどを適時送付してもらうことができました。
というわけで前置きが長くなりましたが、今回はこちらのレビューをお届けします。
●『FPGBC KIT』の販売ページ
https://funnyplaying.com/products/fpgbc-kit?variant=40858870317117
購入時の注意事項
『FPGBC KIT』にアクセスするといくつか選択肢が表示されますが、「FPGBC KIT」と書かれているのは、ボードとスピーカーバッテリーのセットです。それだけだと組み立てることができないため、一緒に表起きされている専用のシェルを選んでおいた方がいいでしょう。
ここで注意したいのは、これだけでは足りないということです。これらとは別に、ゲームボーイカラー用の
「GBC Replacement Silicon Pads」と「GBP Custom Buttons」も合わせて購入しておきます。色の組みあわせを考えながら、こちらも一緒にかごに入れて行くのがいいでしょう。これらを合計すると、だいたい日本円で1万2500円ぐらいになります。
・FPGBC KIT:$69.90
・シェル:$9.90
・GBC Replacement Silicon Pads:$1.90
・GBP Custom Buttons:$1.90
合計:$83.6=1万2435円(送料無料)
ちなみに、本来は組み立てから動作チェックまで一気通貫してご紹介していきたいところなのですが、すでに2ヵ月以上前に組み立ていたためあまり記憶がないことから今回は省略します。しかしながら、組み立て自体はブロック合わせるレベルともいわれている自作PCよりも簡単で、ボードにスピーカーとディスプレイをくっつけて、それとバッテリーをケースに取り付けていくだけといったかなりシンプルなものとなっていました。
筆者のようにトラブルが発生しない場合は、サクッと作りあげることができるところも『FPGBC KIT』の魅力となっています。
ファームウェアは自分のボードのリビジョンに合わせる必要があり
この記事を作っている2024年2月8日時点で、『FPGBC KIT』のボードにはV1.0とV1.1のふたつのリビジョンが存在しています。問題は、これらに共通性はなくファームウェアにも別々にリンクが貼られているところ。これから入手する場合は、ほぼV1.1であるため、そちらに対応したファームウェアを入手する必要があります。
ちなみに筆者の場合は最初に届いたのはV1.0でしたが、トラブル絡みで代わりに送ってもらったボードがV1.1でした。こちらのレビューは、以降V1.1をベースにしたものです。
『FPGBC KIT』のいいところとそうでもないところ
世の中は光りもあれば影もあり。この『FPGBC KIT』もいいところばかりか? っつーと、そうでもないところもあったりなんかしちゃったりして(VC:広川太一郎で再生してください)。
【ここがイイ!】
①安価でFPGAベースのゲームボーイ/ゲームボーイ互換機が手に入る
②組み立てキットだが組み立て自体は簡単
③安かろう悪かろうというよりも、低コストならがら満足のいくレベルに仕上げられている
④トラブルがあってもサポートが親切にたいおうしてくれる
【ここはそうでもない!】
①Analogue Pocketと比べると、スポーツカーと軽自動車ぐらいの歴然として差がある
②FPGAではあるものの、ぶっちゃけ精度はそこまで正しくない
まず良いところから。なんといっても『FPGBC KIT』の最大の魅力は安価でFPGAベースの互換機が手に入るところです。安価なFPGAボードとして『Tang Nano』なのがありますが、一般的にはMiSTer FPGAやAnalogueの製品など、どちらかというとそこそこお金がかかるものが多い印象です。
また、先ほども触れましたが、なんといってもキットでありながら簡単に組み立てられるところも魅力です。そうしたことをすべて踏まえ、一部動作に問題があるところもあるものの、トータルとしては概ね許容範囲にまとめられている製品だといえます。
また、これは筆者自身が体験したことですが、実際になにかしらのトラブルが発生した場合でも無視されずにしっかりとサポートしてくれるので、安心して購入することができます。
それらの一方で、どうしても目に付いてしまうのがパフォーマンスに関する部分。同じFPGAがベースのゲームボーイ系互換機にAnalogue Pocketがありますが、クオリティに精度、遊べるゲームの多さなど、何を取っても足元にには及びません。
これは軽自動車とスポーツカーを比べているようなもので、そもそも別カテゴリーのものとしてみたほうがいいのかもしれません。それに属した内容ではありますが、精度という点でももう少し頑張ってほしいところがあります。こちらについては、後ほどご紹介していきます。
『FPGBC KIT』のODS
『FPGBC KIT』では、メニューボタンを押すことでODS(オン・スクリーン・ディスプレイ)が表示され、コアに関する様々な設定が行えます。ちなみに今回は、V1.1のボードにV1.04のファームウェアを入れた状態にしていますが、ファームウェアのバージョンによっても表示項目やフォントなどが変化しており、まだまだ発展途上の段階と言えるのかもしれません。
■『FPGBC KIT』のODSで表示されるメニュー
・Bright:AボタンとBボタンで明るさの変更
・Vol:ボリュームの調整
・Discplay Mode:X4、X4p、Fullの3段階で表示タイプを切り替え可能
・GB_Pallet:1~12で変更可能(ゲームボーイコアでのみ有効)
・Frami-mix:OnとOFFの切り替えが可能(※内容は不明)
・GB_ClrFix:OnとOFFの切り替えが可能(以前はGBC DISPという項目だった)
・Spd:0~9の10段階で変更可能(クロック速度の調整)
メニューのうち「Bright」は画面の輝度の調整に使用。「Vol」はそのまま音量の調整に使えます。「Display Mode」は3つのタイプから画面の表示スタイルを選択可能。正確にはわかりませんが、X4はおそらく元の画面を4倍にしたもの。X4Pは、4倍した画像に走査線を足したような絵になります。FULLを選ぶと、最も大きなサイズでゲーム画面を表示することができます。
「GB Pallet」はゲームボーイコアでのみ有効な項目で、色味が異なる12種類のカラーパレットを選ぶことができます。
「Frami-mix」は具体的に何に使うのかは不明。「GB_ClrFix」は、以前は「GBC DISP」という項目になっており、ゲームボーイカラーとゲームボーイのディスプレイモードを切り替えるような内容になっていました。こちらはデフォルトでONになっていますが、ゲームボーイカラーで起動していると画面の表示がおかしくなることがあります。そんなときはOFに設定しておきましょう。
コアはゲームボーイとゲームボーイカラーの2種類が切り替え可能。「Core」で利用するコアを切り替えた後で「Save」を選び、「Reset」で再起動することで切り替えられます。「Spd」はクロック速度に関するものですが、こちらは後ほどテストをしているので、そちらでご紹介していきます。
『サードの伝説』はどちらのモードでもフリーズ
初代の『ゲームボーイ』以外の機種ではタイトル画面でフリーズしてしまうことで有名な『ザードの伝説』ですが、こちらをためしてみたところゲームボーイとゲームボーイカラーのどちらのコアとも、タイトル画面に切り替わった瞬間フリーズしてしまうことがわかりました。
ちなみにAnalogue Pocketでも同様のテストを行いましたが、こちらはコアの種類にかかわらず問題なく遊ぶことができて逆に驚いた記憶があります。
『FPGBC KIT』の動作速度は完全には一致しない
次にクロック速度について調査してみました、テストには240pTest Suiteを使用しましたが、『EverDrive』はふたつ持っていなかったため、少し変わった手順でテストを行っています。
まず、オリジナルのゲームボーイカラーとAnalogue Pocketでテスト。ゲームボーイカラーでは『EverDrive』を使用し、Analogue Pocket側はopenFPGAのゲームボーイカラーコアを使用しています。つまり、厳密にいうと純正のAnalogue Pocketのゲームボーイカラーモードではありません。
ストップウォッチでボタンを同時に押して、3分以上放置してみましたが、ほぼズレがないことがわかりました。
続けて、Analogue Pocketと『EverDrive』をさした『FPGBC KIT』でも同様のテストをおこなってみることに。まずは「Spd」をマックスの9に設定してみたところ、30秒も待つことなく時間がずれていきます。つまり、オーバークロック的には効果があることがわかりました。
次に「Spd」を7に設定して試してみたところ、『FPGBC KIT』の砲が時間が早く進んでしまいます。そこで「Spd」を6にしてみましたが、こちらば微妙に時間が遅れます。つまり、ジャストタイムで設定することは現状できないことがわかりました。
最新ファームウェアでは『EverDrive-GB X7』にも対応
話が前後しますが、今年の1月25日にリリースされた最新ファームウェアのV1.04で、マルチカートリッジの『EverDrive-GB X7』にも対応するようになりました。今回のテストでも使用しましたが、こちらは概ね問題なく使うことができます。
というわけでざっくりと急ぎ足でポイントのみピックアップしてご紹介してきましたが、やはりなんといっても自分で簡単に組み立てることができる、それも安価でというのがこの『FPGBC KIT』のセールスポイントです。もしかしたらこれを機会にディープな世界にハマっていくことになるかもしれませんが、興味がある方はぜひ入手していろいろといじってみてください!