レトロPCのハードウェアや映像技術を紹介しているYouTubeチャンネル「Displaced Gamers」は、1993年に発売されたPC用グラフィックカード『Diamond Viper VLB』の性能を、DOS環境で引き出す実験動画を2026年8月12日に公開しました。
●Diamond Viper VLBのハードウェア情報
https://www.dosdays.co.uk/topics/Manufacturers/diamond/diamond_viper.php
『Diamond Viper VLB』は、Windows上では当時トップクラスの性能を発揮した一方で、DOSゲームでは非常に遅いグラフィックカードとして知られています。しかし、今回の実験ではカスタム映像モードと外部スケーラーを組み合わせることで、これまでDOSゲームではほとんど利用されてこなかった高速側のグラフィックチップを動作させています。
発売から30年以上が経過したグラフィックカードに、まだ引き出されていない性能が残されていたというわけです。
Windows用とDOS用の2種類のグラフィックチップを搭載
『Diamond Viper VLB』は、1990年代前半のPCで使われていた「VESA Local Bus」、通称VLBに対応したグラフィックカードです。
VLBは、主に486系PCで利用されていた拡張バス規格。ISAよりも高速にCPUやメモリーへアクセスできることから、高解像度のグラフィックを扱うビデオカードやストレージコントローラーなどに採用されていました。
『Diamond Viper VLB』の大きな特徴が、1枚のカードに役割の異なる2種類のグラフィックチップを搭載していたことです。メインとなるのは、WindowsやAutoCADなどのGUI描画を高速化するWeitek製の「P9000」。もうひとつは、一般的なVGA表示との互換性を確保するためのグラフィックチップです。
VGA互換側のチップはカードのリビジョンによって異なり、Oak Technology製の「OTI-087X」や、Weitek製の「5286」などが採用されていました。Windows用ドライバーが読み込まれるまではVGA互換チップが画面表示を担当し、Windowsへ移行すると高速なP9000へ切り替わるという構成です。
Windowsでは高速、DOSゲームでは非常に低速
P9000は、Windows上のウインドウ描画や図形処理を高速化するために設計されたチップです。当時としては高い描画性能を備えており、Windows 3.1や業務用グラフィックソフトでは優れた性能を発揮しました。
しかし、P9000自体には一般的なVGAとの互換性がありません。そのため、320×200ドットや640×480ドットなどのVGA画面を使用するDOSゲームでは、P9000ではなく低速なVGA互換チップが利用されます。
せっかく高速なP9000と専用VRAMを搭載しているにもかかわらず、DOSゲームを起動すると遅いチップ側へ切り替わってしまうのです。とくに『DOOM』のように画面全体を頻繁に書き換えるゲームでは、この構造が大きなボトルネックになります。
『Diamond Viper VLB』が登場した1993年当時は、WindowsやAutoCADでの性能が重視されていました。ところが、その後『DOOM』をはじめとする描画負荷の高いDOSゲームが普及したことで、同カードの弱点が目立つようになりました。
高速なP9000でDOS用の低解像度画面を出力
今回Displaced Gamersが試みたのは、DOS用の低解像度画面をP9000側から出力するためのカスタム映像モードを作ることでした。
通常のDOSゲームで使われるVGA互換モードをそのまま利用するのではなく、P9000が扱える独自の映像タイミングを設定。これにより、従来はWindows上でしか活用されていなかった高速側のチップを、DOS環境で使用しています。
ただし、ここで問題になるのが映像信号の水平走査周波数です。一般的なVGA表示では約31kHz以上の信号が使用されますが、今回作成された低解像度モードでは、それよりも低い水平走査周波数が使われています。そのため、一般的なPC用ディスプレイや現代のテレビへ直接接続しても、正常に表示できない可能性があります。
そこで利用されたのが、レトロゲーム機などの低解像度映像を現代のディスプレイ向けに変換する外部スケーラーです。31kHzを下回る特殊な映像信号をスケーラーで受け取り、ディスプレイが対応している解像度と周波数へ変換することで、P9000が出力したDOS画面を表示しています。
現代のレトロゲーム向けスケーラーが30年前のPCを救う
家庭用レトロゲーム機では、出力される解像度やリフレッシュレートがある程度決まっています。一方、1990年代のPCでは、320×200ドット、640×480ドット、800×600ドット、1024×768ドットなど、ソフトやグラフィックカードによって異なる映像モードが使用されていました。
インターレース表示とプログレッシブ表示、複数のリフレッシュレート、グラフィックカードごとの独自仕様なども存在するため、現代のディスプレイへ接続するのは家庭用ゲーム機以上に複雑です。
今回の実験は、レトロゲーム機向けに発展してきた映像スケーラーの技術を、1990年代PCの特殊な映像モードに応用したものといえます。
『Diamond Viper VLB』のハードウェア自体を改造したのではなく、映像モードと出力先を工夫することで、30年以上使われてこなかった性能を引き出しているところが面白いポイントです。
誰でも簡単に利用できる機能ではない点に注意
今回公開された内容は、『Diamond Viper VLB』へ新しいドライバーをインストールするだけで、すべてのDOSゲームが高速化するというものではありません。
P9000用のカスタム映像モードに加えて、特殊な映像信号を受け取れるスケーラーや、適切な映像タイミングの設定が必要です。ゲームや使用する表示モードによっても、対応状況が異なる可能性があります。
現時点では、一般ユーザー向けの簡単な高速化ツールというよりも、「当時使われなかったグラフィックチップをDOS環境で動かす技術実験」として見るのがよさそうです。
それでも、発売当時はDOSゲームに向かないカードとして評価されていた『Diamond Viper VLB』が、現代の映像技術によって再評価されるという展開は、レトロPCファンにとって興味深いものではないでしょうか。
via.RetroRGB















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