『モンハン3rd HD』ネイティブ移植「Yakumo」が大幅高速化。ロード2~5倍、Android 10にも対応

『モンハン3rd HD』ネイティブ移植「Yakumo」が大幅高速化。ロード2~5倍、Android 10にも対応

『モンスターハンターポータブル 3rd HD Ver.(Monster Hunter Portable 3rd HD Ver.)』をPCやSteam Deck、Mac、Android向けにネイティブ移植するオープンソースプロジェクト「Yakumo」の最新版「v0.6.0-alpha.4」が、2026年9月24日に公開されました。

今回のアップデートでは、特に描画処理とロード処理の高速化に重点が置かれており、Steam Deckでは高解像度・高フレームレート設定時の描画時間が大幅に短縮。さらにロード時間についても従来比で2~5倍高速になるなど、実際に遊ぶうえで体感しやすい改善が加えられています。

●Yakumo GitHub Releases
https://github.com/TeamGDB/Yakumo/releases

●Yakumo GitHubリポジトリ
https://github.com/TeamGDB/Yakumo

Steam Deckで描画時間が16~18msから約11msに

v0.6.0-alpha.4では、レンダリング処理の仕組みそのものに大きな手が加えられています。

これまでCPUとGPUが互いの処理を待ちながら描画していた部分を見直し、現在はCPUとGPUが異なる2フレームを並列的に処理できるようになりました。加えて、新しいテクスチャーを読み込む際にGPU全体を止めない仕組みが導入され、テクスチャーのデコード処理も約5倍高速化されています。

さらにシェーダーを実行間で保存して起動時に準備するよう変更されたほか、1フレームあたりの描画コール数も従来のおよそ3分の1まで削減。不要なEarly Depth Testの無効化処理も取り除かれるなど、GPU側の負荷を減らすための改善がまとめて行われています。

その効果はSteam Deckでも確認されており、内部解像度6倍、90fps設定時には、1フレームあたりの描画時間が従来の16~18msから約11msまで短縮されたとのこと。また、これまで動作が重かったSnapdragonやExynos搭載スマートフォンでも、フルスピードで動作するようになった例が報告されています。

ロード時間も2~5倍高速化。6.9秒が1.7秒に

もうひとつ大きな変更が「Fast loading」の強化です。

Yakumoではロード画面が表示されている間だけ、PSP本来の実行速度に縛られず、使用しているデバイスが処理できる速度でゲームを進める仕組みを採用しています。v0.6.0-alpha.4では、この機能によってロード画面を従来比で2~5倍高速に終了できるとされています。

開発チームが示している例では、村からクエストへ移動する際のロード時間が6.9秒から1.7秒まで短縮されています。

なお、この高速化が適用されるのはロード中のみです。通常のゲームプレイやメニュー、ムービー、オンラインプレイまで高速化されるわけではなく、ゲーム自体の速度やバランスには影響しません。「Fast loading」は標準で有効になっており、Videoメニューから設定を変更できます。

Android 10も新たにサポート

Android版では対応OSも拡大されました。

これまでAndroid 11以降が対象となっていましたが、v0.6.0-alpha.4からAndroid 10にも対応。64bit ARM環境とVulkan 1.1を備えたAndroid端末で利用できるようになっています。Androidではシステムに継続的なパフォーマンスが必要であることを通知する処理も追加され、CPUコアがフレーム間で低クロックへ落ちることを防ぐ改善も行われています。

Android版ではAPKが用意されており、初回起動時にユーザー自身が所有する『Monster Hunter Portable 3rd HD Ver.』のディスクイメージを指定する仕組みです。ディスクイメージはアプリ側へコピーされるため、インストール時には約2.5GBの空き容量が必要とされています。

PSPのDXT圧縮テクスチャー表示なども修正

パフォーマンス以外にも複数の不具合が修正されています。

PSPのDXT圧縮を利用しているモデルでテクスチャーが正常に表示されない問題が修正され、『METAL GEAR SOLID PEACE WALKER』とのコラボ装備やリオレイアの翼などで発生していた表示崩れが改善されています。

またAndroidでは、端末側で自動回転を無効にしていてもゲーム画面を横向きに維持するよう修正。Steam Deckを含むAMD GPU環境で、キャラクター選択画面においてGPUが停止する可能性があった実験的な処理についても、標準では無効化されています。

「Yakumo」はエミュレーターではなく静的再コンパイル方式

Yakumoは、一般的なPSPエミュレーターとは異なるアプローチで『Monster Hunter Portable 3rd HD Ver.』を動かすプロジェクトです。

ゲームに含まれるPSP向けコードをあらかじめ解析し、C++コードへ変換したうえで使用するPCやスマートフォン向けにコンパイルする「静的再コンパイル」という方式を採用しています。プロジェクト側では、インタープリターやJITを中核としてPSPのCPUをリアルタイムにエミュレートする一般的なエミュレーターとは異なるものとして説明しています。

グラフィックスにはVulkanが使用され、Windows、Linux/Steam Deck、Apple Silicon搭載Mac、Android向けのビルドがそれぞれ配布されています。Apple Silicon Mac版はmacOS 13以降に対応しています。

ゲーム内部のシミュレーション自体はPSP版と同じ30fpsのままですが、フレーム補間によって45fps、60fps、90fps、120fpsなどで表示する機能も搭載。ゲーム速度を変えず、より滑らかな表示が可能になっています。右アナログスティックによるカメラ操作や、PPSSPP互換のHDテクスチャーパックにも対応しています。

利用には自分で所有するゲームのディスクイメージが必要

Yakumo本体には『Monster Hunter Portable 3rd HD Ver.』のゲームデータは一切含まれていません。

利用する場合は、自分で正規に所有している『Monster Hunter Portable 3rd HD Ver.』(NPJB-40001)のディスクイメージを用意し、初回起動時にYakumoへ指定する必要があります。配布されているビルド側にはゲームの実行ファイルやテクスチャー、モデル、音声、映像などは収録されていません。

Windowsではx86-64向けZIP、Linux/Steam DeckではFlatpakおよびポータブル版、Apple Silicon MacではDMG、Androidではarm64向けAPKが配布されています。以前のYakumoからそのまま更新した場合、設定やセーブデータは維持されます。

まだAlpha版。端末によっては既知の問題も

今回のアップデートで大幅な高速化が図られたYakumoですが、バージョン名が示す通り、現時点ではまだAlpha段階のソフトウェアです。

たとえばフレーム補間を有効にした状態では、VSyncとの組み合わせによって11~17秒ごとに短いカクつきが発生する可能性があるほか、Windowsでの90/120fps動作は十分に検証されていません。またSamsung製Exynos搭載スマートフォンでは、集会浴場から移動した際にクラッシュする問題も報告されており、現在調査が進められています。

それでも、9月23日に公開されたv0.6.0-alpha.1で追加されたAndroid/Apple Silicon Mac対応、右アナログスティックによるカメラ操作、最大120fpsまでのフレーム補間などに続き、わずか1日ほどでパフォーマンス面まで大きく手が入ったことになります。特にSteam DeckやAndroid端末での動作速度とロード時間が数字として改善されている点は、実際にYakumoを試しているユーザーにとって大きなアップデートといえそうです。

ABOUT US
アバター画像
retrogamer