2024年も気が付けば7月に突入して後半戦に。ということで、ここら辺で1度注目のFPGA系レトロゲームハードについて、現時点での最新の情報をまとめてご紹介しておきたいと思います。いずれもまだ不確定な情報が多いため、今後さらなるアップデートが行われる可能性もあるので、その点はご了承ください。
目次
- オールインワンのセガハード互換機『SuperSega』
- セガが発売を見送った幻のマシンを現代に蘇らせた『GF1 Neptune』
- アーケードとコンシューマーゲームが遊べる強力なプラットフォーム『MARS FPGA』
- NINTENDO64が遊べる期待のFPGA系互換機『Analogue 3D』
- MiSter FPGAやMARS FPGAの対抗馬となるか?『Replay2』
- Taki Udon氏が開発を進めているMiSTer FPGA互換ボード&携帯ゲーム機
オールインワンのセガハード互換機『SuperSega』
6月の終わりに突如発表されたのが、メガドライブ、メガCD、マスターシステム、SC-3000、SG-1000、サターン、ドリームキャストが1台で遊べるFPGAベースの互換機『SuperSega』です。本機には、FPGAチップに「AMD Virtex UltraScale」を採用。スーパー32Xはオリジナルのハードが必要ですが、それ以外については可能な限り正確に再現することを目指して開発が進められています。
●SuperSega
https://supersega.com/
ドリームキャストについてはGD-ROMという特殊なフォーマットが読み込めるドライブが必要ですが、そちらと互換性があるドライブについて検討しているとのこと。たとえ互換ドライブが使えなかったときでも、SDカードなどからゲームを読み込ませることができるといいます。
ハードの価格は400ドルから450ドル程度を想定しており、9月から10月頃にプロトタイプボードが完成する予定。その後GUIなどを作り込んでいくということなので、発売はもう少し先になりそうです。
セガが発売を見送った幻のマシンを現代に蘇らせた『GF1 Neptune』
ブラジルのGames Careが開発を進めているのが、FPGAベースのメガドライブとジェネシス、スーパー32X互換機『GF1 Neptune』です。こちらは、セガが計画していたものの発売にはいたらなかったジェネシスとスーパー32Xをひとつのマシンに融合した『Sega Neptune』の筐体デザインをそのまま採用しており、まさに幻のマシンを現代に蘇らせたような形となっています。
●Games Care
https://gamescare.com.br/
この『GF1 Neptune』は、すべてのリージョンのゲームを動かすことができ、アダプターを使用することでマスターシステムのゲームも動かすことが可能です。HDMIで最大1080pの映像出力ができるほか、Genesis 2と同じMiniDINでのアナログ映像も出力可能です。
また、自作のゲームを読み込むためのmicroSDカードスロットが用意されているほか、Wi-Fi経由で直接ゲームも購入可能になる予定です。こちらを活用して、クリエイターがレトロゲームを簡単に販売できる場所を提供することを目指しています。
このFPGAを活用するために特別に作られたゲーム『Sword Of Apocalypse』のプレビューも公開されています。今のところ価格やリリース日は未定ですが、かなり期待が持てそうですね。
アーケードとコンシューマーゲームが遊べる強力なプラットフォーム『MARS FPGA』
FPGA開発者のAtrac17氏やPramod Somashekar氏、3DOとドリームキャストエミュレーターの開発者であるFlxel氏、『OSSC』や『MiSTer FPGA』のケースも手掛けた工業デザイナーのToddsNerdCav氏、RetroTINKの作成者として知られるMike Chi氏、光線銃技術のパイオニアとして知られるJaybee氏など、そうそうたるメンバーが集結して開発が進められているのが、アーケードゲームとコンシューマーゲームに対応したFPGAベースのマルチプラットフォーム『MARS FPGA』です。
この「MARS」とは「マルチ・アーケード・アンド・レトロ・システム」の略語から名付けられたもので、OSにはLinuxではなくRTOS (リアルタイム オペレーティング システム) が採用されています。
2024年4月に仕様変更を発表しており、デュアルFPGAを採用。ゲームに使われているFPGAは「Efinix Ti180」で、それとは別にビデオ用のFPGAとして「Efinix Ti120」が搭載されています。9MBのSRAMが搭載されているほか、192MBのトリプルバンクSDRAMも採用。ハードのサイズはPlayStation 2のスリムバージョンとPS Oneの中間ぐらいと、比較的小ぶりに収められています。
『MARS FPGA』のひとつの特徴として、『MiSTer FPGA』のSNAC方式で交換可能なコントローラーポートを搭載しており、ファミコンやスーパーファミコン、メガドライブ、ネオジオ、PCエンジン、NINTENDO64などのコントローラーを接続することができます。また、カートリッジスロットが用意されており、そこからオリジナルのカセットも読み込むことができます。
プロジェクト自体はオープンソースとなっており、『MiSTer FPGA』ではまだ実現していないドリームキャストや3DOなどのコアをサポートすることも検討されています。正式なリリース日や価格などは確定していませんが、かなり完成に近づいてきていることは間違いないと言えるでしょう。
NINTENDO64が遊べる期待のFPGA系互換機『Analogue 3D』
毎年10月17日(現地時間の10月16日)は、「アナログデイ」とも呼ばれており、Analogue社が毎回大きな発表をすることで知られていますが、昨年のアナログデイに発表されたのがFPGAでNINTENDO64を再現した互換機の『Analogue 3D』でした。
ほんの少し前まではFPGAでNINTENDO64を再現するのは不可能ともいわれていましたが、MiSTer FPGAでコアが開発されて以来、その扉が大きく開かれた感があります。この『Analogue 3D』では、4K解像度の映像出力に加えて、CRTなども再現出来るモードも用意されています。
発表の時点で3年という時間を掛けて開発が進められており、同社の歴史の中でも最も強力で高価な内部テクノロジーが含まれているといわれています。Analogueの製品には、これまで「Cyclone V」と呼ばれるFPGAチップが採用されていましたが、それとは桁違いに異なる性能を持つFPGAチップが採用されているそうです。
NINTENDO64で発売された様々な周辺機器が利用できるほか、セーブデータはカートリッジパックが無い場合でもセーブステートというかたちでゲームのプレイ情報を保存しておくことができます。64DDについては、形状的にそのままでは取り付けることができないものの、コミュニティが独自に開発したアダプターなどを利用することで使えるようになる可能性はあるようです。
ひとつ残念なポイントは、『Analogue Pocket』で採用されていた「openFPGA」には対応していないところ。ということで、最初の発表以来、本機については沈黙を守り続けているAnalogue社ですが、そろそろ続報が欲しいところですね。
●Analogue 3D公式サイト
https://www.analogue.co/3d
MiSter FPGAやMARS FPGAの対抗馬となるか?『Replay2』
FPGAベースの新たなプロジェクトとして登場したのが、『Replay2』です。こちらは、 Intel 7nm Agilex 5 FPGAを搭載したMini-ITX ボードで、高速なDDR4メモリなどを搭載。SDRAMは『MiSTer FPGA』とも互換性があるため、現在存在しているコアも簡単に移植することができます。
●Replay2のデザインが完成に近づいています
https://www.fpgaarcade.com/replay2-design-nearing-completion/
マルチモードデジタルビデオ出力により、少なくとも4K60で映像が表示可能なほか、高品質の30bitアナログVGA出力やデジタル出力を備えた高品質のオーディオコーデックも利用することができます。
『Replay2』には2種類のバージョンが用意されており、『R2Phat』には、『MiSTer FPGA』で使われている DE10-Nanoボードの約4倍の大きさを持つFPGAが採用されています。もうひとつの『R2Lite』は、そちらよりは控えめな性能となっているものの、Cyclone Vより性能は上となっています。
今のところ開発が続いている状況のため発売時期や価格は未定です。
Taki Udon氏が開発を進めているMiSTer FPGA互換ボード&携帯ゲーム機
YouTuberのTaki Udon氏が現在開発を進めているのが、『MiSTer FPGA』で採用されているDE10-nanoの互換ボードです。DE10-nanoの価格が高騰しているなか、ボードが$99、キットが$115よりさらに値段が下げられるというアナウンスもされています。こちらが実現することで、より安価に『MiSTer FPGA』が使える環境を構築しやすくなります。
また、Taki氏はAMOLEDを搭載したMiSTer FPGAの携帯ゲーム機も開発しており、こちらは$150程度で販売される予定です。ボードの方はもうすぐ完成しそうですが、こちらも続報に注目していきたいですね。
追加:パルマー・ラッキーのゲームボーイカラー互換機『Chromatic』
すっかり存在を忘れてましたが、Oculus創業者のパルマー・ラッキー氏が開発したゲームボーイカラー互換機の『Chromatic』もFPGAベースでした!