マルセイユより発売されている、プラグ&プレイのグラフィックプロセッサ『mClassic』を入手しました。こちらのアイテムは、簡単に説明するとゲーム機とディスプレイの間のHDMIケーブルに挟む形で接続することで、最大4Kの映像までラグ無しでアップスケールできるというものです。
2019年にINDIEGOGOで行われたクラウドファンディングでは、8326人の支持者から8500万円もの資金を調達して作られています。
この『mClassic』のコンセプトは、PCゲーマーがグラフィックカードをアップグレードするようにコンシューマーゲーマーもグラフィック機能をアップグレードできるようにするというもの。2017年にビデオプロセッサーを内蔵した世界初のスマートHDMIケーブル『mCable』を発表。そこから得られた数多くのフィードバックが、本製品にも反映されています。
『mClassic』の5つの特徴
主な特徴は5つあります。ひとつは「4Kアップスケーリング」。高性能なスケーラーにより、ネイティブな高画質の映像と区別できないぐらい、低解像度のソースを最大4Kまでの高解像度にすることができます。
ふたつ目は「アンチエイリアス機能」です。テレビやディスプレイは、ピクセルと呼ばれる小さな正方形で出来ています。しかし、実際のオブジェクトは丸みを帯びており、ギザギザなジャギー状態で見えてしまいます。これは、曲線を作り上げるために、正方形のピクセルから階段状に並べられたことによって見えるエッジのためです。
『mClassic』では、独自のアンチエイリアシングアルゴリズムにより、鋭いエッジと小さなテクスチャで、ぼかし効果を使わず滑らかな曲線を実現しています。
3つ目は「被写界深度」です。プロのカメラマンのテクニックのひとつに、浅い被写界深度で撮影するという方法があります。これにより、背景または前景の焦点をぼかして、一部に焦点が合っている絵を作ることができます。同社の被写界深度アルゴリズムは、画像の前景と背景の両方の側面を特定するという課題に取り組み、可能な限り最高の画像をリアルタイムで作成します。
4つ目は「画像の鮮明化」です。グラフィックプロセッサは、通常画像の鮮明さまたは自然さのいずれかに焦点を合わせたものになっています。『mClassic』では、同社の高度なリアルタイムアルゴリズムにより、クリエイターが意図した通りの色の明瞭さとデティールを提供します。
5つ目の特徴は「ノーレーテンシー」です。『mClassic』を付けた状態と外した状態を比較しても、わずか0.2ミリ秒というほぼラグが無い状態でこれらの機能を実現しています。
まさにプラグ&プレイ! 使い方はとっても簡単
使い方は至ってシンプル。先ほども触れたようにゲーム機とディスプレイの間にあるHDMIケーブルに挟むだけでOK。本体にはHDMIの延長ケーブルと電源供給用のUSBケーブルが含まれているので、それらを活用して繋いでいきましょう。
モードは3種類で、それ以外の設定は一切ありません。トグルスイッチを赤いパーツ側に動かすと「スケールオフ」になり、本機の機能を無効にしてパススルーの映像で出力します。
真ん中は「スケーリングON」で緑色のライトが光ります。こちらは、一般的なゲーム機向けのアップスケールモードです。ゲーム機や環境にもよりますが、最大4Kにアップスケールされた映像の出力ができます。また、アンチエイリアス機能もONになるため、ジャギーも抑えられます。
トグルスイッチを右側にするとライトが紫に光り、「レトロ」モードに切り替わります。こちらは、480pの映像を1080pに引き上げたいときに有効で、レトロゲーム機向けといえるモードです。また、アスペクト比も16:9ではなく、当時の4:3で出力されます。
ちなみに『mClassic』は、対応している入力の解像度は幅広いものの、映像により出力の効果が異なります。また、ディスプレイが対応しているかどうかも大きな要素となります。まずは下記の表で確認しておいた方がいいでしょう。
なお、公式に対応しているゲーム機は以下の通りです。この中のレトロゲームに関しては、HDMI出力ではないため、何かしらのコンバーターを利用する必要があります。今回はこの中からレトロゲームを中心に、本機の検証を行っていきます。
- Nintendo Switch
- Wii U
- PlayStation 3
- PlayStation 4
- PlayStation 4 Pro
- Xbox 360
- Xbox One
- Xbox One S/X
- ゲーミングPC
- レトロゲーム
実機で『mClassic』の効果をチェック!
レトロゲームの場合、元の240pまたは480iの映像をアップスケーリングし、480pでHDMIで映像出力するというコンバーターがわりと多く市場に出回っています。480pでも悪くはないものの、やはり最近の1080pなどのゲームに見慣れてしまうとやや見劣りしてしまいます。そんなときに最適なのが、この『mClassic』というわけですね。
ということで、早速複数のゲーム機でどれぐらい変化があるのかチェックしてみました。
PlayStaiton 1 + RAD2Xケーブル
480p → 1080p
初代PlayStationのチェック用として今回使用したのは、Retro Gaming Cables(RGC)の『Sony PlayStation RAD2X cable』です。こちらは、大元の240pまたは480iの映像を、単純に2倍にして480pで出力できるというもの。
わるくはないものの、元のPlayStation自体の映像が今ひとつ綺麗じゃないということもあり、思ったほどの効果が得られないことがありました。そこで、こちらの映像を『mClassic』でアップスケーリングしてみました。これにより、480pの映像が1080pという高解像度に。しかし、やはりPlayStationではもうひとつといったところですね。
NINTENDO64 + EON Super 64
480p → 1080p
NINTENDO64に接続して、480pの解像度でHDMI出力出来るアイテムの『EON Super 64』。元々甘い印象の映像が多いNINTENDO64ですが、『mClassic』でスケールアップすることでややマシになったような感じがしますね。
ゲームキューブ + GCHD
480p → 1080p
ゲームキューブの初期型に接続することで、480pにスケールアップして出力できる『GCHD – Gamecube HD Adapter』。こちらは現在販売されている『GCHD Mk-II』ではなく、ひとつ前のモデルです。『mClassic』を使用する前の映像はやや眠たい感じですが、使用後は映像の解像度が明らかに上がりいい感じですね。
セガサターン + OSSC(line x 2)
480p → 1080p
セガサターンに、Retro Gaming Cables(RGC)のScartケーブルでOSSCに接続。OSSC自体は、元の映像の2倍から5倍まで拡大することができるのですが、2倍以上ではキャプチャーカードとの相性が悪い場合があります。そこで、2倍の480pの映像を『mClassic』で1080pにスケールアップしてみました。PlayStationと同様、期待したほどではありませんでしたが、やはり解像度が上がる恩恵はありそうです。
ドリームキャスト + PACKAPUNCH RGB 480p SCART cable+ OSSC(line x 2)
480p → 1080p
ドリームキャストは、OSSCに接続するケーブルにRetro Gaming Cables(RGC)の『Sega Dreamcast PACKAPUNCH RGB 480p SCART cable』を使ってみました。こちらは、元の映像を480pで出力できるものです。OSSCは、ディスプレイが対応していない場合は480pの映像はそのまま出力されます。そこで、『mClassic』で1080pにスケールアップしてみました。こちらも期待通り、解像度が増した絵になっていい感じです。
AVS
720p → 1080p
FPGAのファミコン互換機である『AVS』。出力の解像度を720pに固定することでコストを抑えていますが、ためしに『mClassic』で1080pにスケールアップしてみました。たしかに解像度は上がっているものの・・・・・・色味も変わってしまい、絵もどことなくとげとげしさが増してしまった感じがします。少なくとも、『AVS』の場合はそのまま使用した方が良さそうです。
XBOX360 & Nintendo Switch
1080p → ?
レトロゲーム機だけではなく、HDMI出力が可能なゲーム機にも対応しているのがポイントですが、手持ちのXBOX360とNintendo Switchでチェックしてみました。残念ながら4Kが表示できるディスプレイを所有していなかったということもあり、XBOX360のほうは何も映らず。
720p → 1080p
Nintendo Switchは720pで出力された映像が、1080pにスケールアップされます。たしかに元と比べてみると解像度は上がっている感じはしますが、まぁ、あってもなくてもいい気がするレベルですね(笑)。
実機で使用した結果はまずまず
レトロゲーム機の多くは、HDMIコンバーターを使って480pにアップスケールするものが多いため、やはり『mClassic』との相性は良かったですね。もうひと味聞かせたい隠し調味料的なニュアンスもあるので、気になる方はぜひ試してみてください。