PS5でローカルLLMが動くってどういうこと? 改造したゲーム機で270億パラメータのAIが動作した仕組みをわかりやすく解説

PS5でローカルLLMが動くってどういうこと? 改造したゲーム機で270億パラメータのAIが動作した仕組みをわかりやすく解説

ゲーム機としておなじみのソニーの「PlayStation 5(PS5)」ですが、なんと、このPS5を使って大規模なAIモデルを動かすことに成功したというニュースが話題になっています。

2026年10月13日、海外の開発者が改造したPS5上で、270億ものパラメータを持つAIモデル「Qwen 3.8 27B」を動作させたと報告しました。しかも、ただ動いただけではありません。開発者によると、1秒間に約20トークンの文章を生成できたといいます。

しかし、ここで疑問に思う人もいるのではないでしょうか。そもそも、PS5でAIが動くとはどういうことなのでしょうか? 普段使っているChatGPTのようなAIとは何が違うのか。そして、なぜゲーム機でそんなことができるのでしょうか?

今回は、話題になっているPS5のローカルLLMについて、できるだけ専門用語を使わずに、その仕組みをご紹介していきたいと思います。

そもそも「ローカルLLM」って何?

まずは、今回のニュースに登場する「ローカルLLM」について説明しておきましょう。LLMとは「Large Language Model」の略で、日本語では「大規模言語モデル」と呼ばれています。簡単にいえば、私たちが入力した文章を理解し、それに対して自然な文章を生成するAIのことです。

ChatGPTなどの対話型AIでも、こうしたLLMが使われています。では、その前に付いている「ローカル」とは何なのでしょうか?

一般的なChatGPTの利用方法では、スマートフォンやパソコンから質問を送信すると、インターネットの先にある高性能なサーバーでAIが処理を行い、その結果が送り返されてきます。

一方、ローカルLLMは、自分の手元にあるパソコンなどの機器でAIモデルを直接動かす仕組みです。つまり、今回のPS5の例では、ソニーのゲーム機そのものがAIの計算を担当しているのです。

▲ローカルLLMは、モデルをあらかじめ用意しておけば、文章生成のたびに外部のAIサーバーへ接続する必要がありません。

この仕組みには、いくつかメリットがあります。たとえば、AIとの会話内容を外部のサーバーに送らずに処理できることや、必要なモデルを保存しておけば、インターネットにつながっていなくても文章を生成できることなどです。

もちろん、動かす機器の性能によって生成速度などが変わるという制約もあります。

今回話題になっているのは、通常ならパソコンなどで動かすこの仕組みを、PS5で実現したというわけです。

なぜPS5でAIを動かせるのか?

そもそも、PS5はゲームを遊ぶための専用機です。それなのに、なぜAIを動かすことができるのでしょうか?実は、PS5の内部には、一般的なパソコンと共通する部分が多く使われています。

たとえば、ゲームの処理などを担当するCPUにはAMDの「Zen 2」アーキテクチャが採用されています。また、映像描画などを担当するGPUもAMD製です。これらは、パソコンで使われているCPUやGPUと基本的な技術が共通しています。

PS5の主なスペック内容
CPUAMD Zen 2、8コア16スレッド
GPUAMD RDNA 2ベース
メモリ16GB GDDR6
メモリ帯域幅448GB/s
本来の用途ゲームの実行・映像処理

ここで特に重要になるのが、GPUとメモリです。GPUは本来、ゲームのグラフィックスを描画するための部品ですが、大量の計算を並列に処理することが得意です。この能力は、AIが文章を生成するときにも役立ちます。

実際、パソコンでローカルLLMを高速に動かす際にも、NVIDIAのGeForce RTXシリーズなどのGPUがよく使われています。つまり、PS5はゲーム専用機でありながら、その内部にはAIの計算にも利用できる高性能なハードウェアが搭載されているのです。

ただし、これはPS5がそのままAI用のパソコンになるという意味ではありません。市販のPS5には、一般のユーザーが自由にAIプログラムをインストールしてGPUで動かせる環境が用意されていないためです。そこで登場するのが、今回開発された「PS5LM」というプロジェクトです。

PS5をAIマシンに変える「PS5LM」とは?

「PS5LM」は、開発者のMert Cobanov氏が公開した、改造済みPS5でローカルLLMを実行するためのプロジェクトです。AIモデルをパソコンなどで動かすためのオープンソースソフトウェア「llama.cpp」を、PS5向けに移植したことが大きな特徴です。

これにより、改造済みのPS5上でもAIモデルを読み込み、文章を生成できるようになりました。ただし、当初のPS5LMはCPUを中心に動作する仕組みでした。そのため、利用できるメモリ容量などに制限があり、大きなAIモデルを快適に動かすのは難しい状態だったのです。

そこで、別の開発者であるabhi245y氏が、このPS5LMをベースに機能を拡張した「PS5LM Plus」を開発しました。こちらでは、PS5のGPUを使ってAIの計算を処理できるようになっています。

開発者によると、従来のCPUによる実験では、270億パラメータのモデルが1分間に約1トークンという非常に遅い速度でしか動きませんでした。ところが、GPUを利用するPS5LM Plusでは、同じ規模のモデルで約20トークン/秒という速度を記録したと報告されています。

では、ここまで何度も出てきた「270億パラメータ」という数字は、どれほど大きなものなのでしょうか?

270億パラメータのAIとは、どのくらいすごいのか?

AIモデルの規模を表すときによく使われるのが「パラメータ」という言葉です。これは、AIが学習によって調整した膨大な数の数値のことで、文章を処理する際の判断に利用されます。「27B」の「B」はBillion(10億)という意味です。したがって、27Bは270億パラメータということになります。

これは、決して小さなAIモデルではありません。では、270億パラメータのモデルを動かすには、どのくらいのメモリが必要になるのでしょうか? 一般的に、AIモデルを高精度の16bit形式で保存した場合、27Bモデルの重みデータだけで約54GBの容量が必要になります。

ところが、PS5のメモリは16GBしかありません。普通に考えると、とても収まりそうにありませんよね。そこで使われるのが「量子化」という技術です。

量子化によって巨大AIを小さくする!

量子化とは、簡単にいえば、AIが計算に使う数値をより少ない情報量で表現する技術です。たとえば、16bitの数値を4bitや2bitなどに変換すると、モデルを保存するために必要な容量を大幅に減らせます。

写真を圧縮してファイルサイズを小さくするようなイメージに近いかもしれません。もちろん、AIの場合は画像圧縮とは仕組みが異なりますが、データ量を減らして扱いやすくするという意味では似ています。

今回使用された「Qwen 3.8 27B」も、この量子化技術によって大幅に軽量化されています。開発者が公開した情報によると、約6.8GiBまで小さくしたモデルや、約9.2GiBのモデルで動作が確認されています。

これなら、16GBのメモリを搭載したPS5でも、AIモデルを収められる可能性が出てきます。ただし、量子化を強くかけるほど、本来のモデルに比べて回答の精度が落ちる可能性があります。そのため、今回の成果は270億パラメータのAIをそのままの精度で動かしたということではなく、大幅に軽量化したAIモデルをPS5の限られたメモリで動かしたところが重要なのです。

実際にPS5でAIを動かすと何ができる?

では、PS5でローカルLLMを動かすと、具体的に何ができるのでしょうか?PS5LM Plusには、AIモデルを管理するための画面や、動作状況を確認するダッシュボードなどが用意されています。

また、同じネットワークに接続されたパソコンやスマートフォンのブラウザから、PS5上で動いているAIに質問することもできます。これは、なかなか面白い仕組みではないでしょうか。

たとえば、手元のパソコンから質問を入力すると、その文章が家庭内ネットワークを通じてPS5に送られます。PS5は内蔵されたGPUを利用して回答を生成し、その結果をパソコン側に送り返します。このとき、文章を生成しているのはパソコンでも外部のAIサーバーでもなく、PS5です。

Many people have asked me about my desktop tech setup, so here it is:- FlexiSpot E8 Standing Desk For WFO and WFH E8- Ergotron LX Desk Mount Monitor Arm- LG 27UL850W 4K UHD LED LCD Monitor-… | Andrew Baisden

つまり、PS5を家庭内の小さなAIサーバーのように利用できるわけです。ちなみに、開発者が公開した情報によると、PS5LM Plusは「Qwen 3.8 27B」以外のAIモデルにも対応しています。実際に報告されている生成速度は、以下の通りです。

AIモデル生成速度
Qwen 3.8 27B約20トークン/秒
Gemma 4 E4B約61トークン/秒
Llama 3.2 3B約124トークン/秒

ここでいう「トークン」とは、AIが文章を処理する際の文字や単語の一部などに相当する単位です。日本語の場合、必ずしも1トークンが1文字になるわけではありません。そのため、20トークン/秒という数字だけで実際の体感速度を判断するのは難しいものの、質問に対して文章が少しずつ生成されていく様子を確認できる程度の速度といえるでしょう。

ただし、これらは開発者が報告した測定結果であり、第三者による検証が十分に行われたわけではありません。また、AIモデルの種類や量子化の方法によって、回答品質や処理速度も異なります。

普通のPS5でもAIを動かせるの?

ここまで読んで、「それなら自分のPS5でも試してみたい」と思った人もいるかもしれません。しかし、残念ながら、今回のPS5LM Plusは一般的なPS5にそのままインストールして使えるものではありません。

実行するには、いわゆる「脱獄(Jailbreak)」と呼ばれる方法で、通常は制限されているプログラムを動かせるようにしたPS5が必要になります。さらに、対応するシステムソフトウェアや、非公式アプリを動作させるための環境も必要です。

こうした改造には、セキュリティ上のリスクや本体が正常に動作しなくなる可能性があります。ソニーが公式にサポートしているものでもありません。また、AIを動かすためにPS5を改造したからといって、ChatGPTのような高度なサービスをすべて同じように利用できるわけでもありません。

そのため、現時点では一般ユーザー向けの便利な機能というよりも、技術に詳しい開発者たちによる実験的なプロジェクトとして捉えたほうがよいでしょう。

PS5でAIが動いたことには、どんな意味があるのか?

今回のニュースで注目したいのは、PS5でAIを動かせるようになったという結果だけではありません。そもそも、PS5には発売当初から高性能なCPUやGPU、大容量の高速メモリが搭載されていました。

しかし、それらは基本的にゲームを動かすために利用されており、一般のユーザーが自由にほかの用途へ活用することはできませんでした。今回のPS5LM Plusでは、そうしたハードウェアの能力を引き出し、ゲームとはまったく異なる用途に利用しています。

かつて、家庭用ゲーム機でLinuxを動かしたり、本来は対応していないソフトウェアを移植したりする試みが行われてきました。今回のローカルLLMも、そうしたゲーム機の可能性を探る取り組みのひとつといえるのではないでしょうか。

もちろん、PS5がAI専用の高性能パソコンに匹敵するという話ではありません。また、今回報告された速度だけをもって、AI用の機器として優れていると判断することもできません。それでも、本来はゲームを遊ぶために作られたPS5で、270億パラメータという大規模なAIモデルを動かせたことは、興味深い成果といえそうです。

今後、ソフトウェアの改良やAIモデルの軽量化がさらに進めば、家庭用ゲーム機の意外な活用方法が新たに生まれるかもしれません。ゲーム機はゲームを遊ぶだけのものとは限らない。今回の取り組みは、そんなハードウェアの奥深さを改めて感じさせてくれるニュースではないでしょうか。

●PS5LM(オリジナル版・GitHub)
https://github.com/cobanov/PS5LM

●PS5LM Plus(GPU対応版・GitHub)
https://github.com/abhi245y/PS5LM

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