ScummVMで未完成だった2系統のエンジンが一気に実用段階へ!『KULT』はAmiga版を含め最後までプレイ可能に

ScummVMで未完成だった2系統のエンジンが一気に実用段階へ!『KULT』はAmiga版を含め最後までプレイ可能に

クラシックゲームを現代の環境で楽しむためのオープンソースプロジェクト「ScummVM」で、長年正式サポートに届いていなかった2系統のゲームエンジンが、大きく完成へ近づきました。

2026年8月18日、Google Summer of Code 2026(GSoC 2026)に参加していた開発者Ion Andrei Cristian氏が、約12週間にわたる開発作業の最終報告を公開。今回集中的に改良されたのは、『Chamber of the Sci-Mutant Priestess』と、「MacVenture」と呼ばれるエンジンです。

ScummVMには、ゲーム自体は起動するものの、グラフィック機能が未完成だったり、クラッシュや進行不能になる不具合が残っていたりするため、正式に提供できない状態のエンジンが存在します。

今回のGSoCでは多数のエンジンへ少しずつ手を加えるのではなく、その中から2系統を選び、実際にリリースできる状態まで完成させることが目標に設定されました。

『KULT』はDOSからAmigaまで最後までプレイ可能に

ひとつめは、1989年に発売されたアドベンチャーゲーム『KULT: The Temple of Flying Saucers』です。北米では『Chamber of the Sci-Mutant Priestess』というタイトルで発売されています。

ScummVMの対応エンジン自体は以前から存在していましたが、CGA表示は動く一方でEGA表示に問題があり、Amiga版には対応していないほか、ゲーム進行を妨げるさまざまな不具合が残されていました。

今回の開発ではEGAレンダラーをはじめ、タイトル画面の表示、マウス座標、カーソル、スクリプト処理、ランダム処理、セーブ/ロードなど多数の問題を修正しています。さらに大きな作業となったのがAmiga版への対応です。

Amiga版ではDOS版とは異なる16色のプレーナーグラフィックスや12bit RGBパレットなどが利用されているため、データ形式を解析したうえで新たな描画処理を実装。欧州版『KULT』だけではなく、データ構造が異なる北米版『Chamber of the Sci-Mutant Priestess』にも対応しました。

その結果、現在ではCGA、EGA、Herculesに加えて、欧州版と北米版のAmiga版も最後までプレイできる状態になっています。Steamで販売されているバージョンについても認識してプレイ可能です。

『Chamber of the Sci-Mutant Priestess』についてはすでにScummVMでデフォルト有効化され、すべての対象バージョンが「Testing」に昇格。2026年7月には公式サイトでも一般ユーザーに向けた公開テストが開始されています。

『Déjà Vu』『Shadowgate』などのMacVentureエンジンも大幅改善

もうひとつが「MacVenture」エンジンです。これはICOM Simulationsが開発したアドベンチャーゲームで使用されたゲームエンジンで、『Déjà Vu』『Déjà Vu II: Lost in Las Vegas』『Shadowgate』『Uninvited』の4作品が対象になっています。

こちらもScummVMでは以前から開発が続けられていましたが、頻繁にクラッシュするほか、オリジナル版とは異なる挙動があり、ゲームを快適に遊んだり最後まで進めたりするうえで問題が残されていました。

今回の作業では、インベントリー関連のクラッシュやメモリー管理の問題、画面外へアイテムをドラッグしたときの不具合、スクリプト処理のクラッシュなどを修正。

さらに単に「落ちなくする」だけではなく、インベントリーウインドウの配置やサイズ、複数アイテムを選択するShift+クリック、ダイアログボタンの挙動などもオリジナル版に近づけられています。

17fpsだったゲームが50fpsに

中でも興味深いのが、描画処理に関する改善です。従来のMacVentureエンジンでは、GUIが毎フレーム画面全体を更新していたため、本来50fpsで動作するゲームが17fps程度まで低下していました。

この問題も今回の開発で修正され、50fpsで動作するようになっています。さらに、1秒未満の待ち時間がすべてゼロになっていたスクリプト処理の不具合も修正され、アニメーションのタイミングもオリジナルに近づけられました。

Steam版の中にはオリジナルMac版のディスクイメージが入っていた

MacVentureではもうひとつ面白い発見もありました。Steamで販売されている「MacVenture Series」を調べたところ、ゲーム本体はChromiumベースのラッパーで動作していますが、その内部にオリジナルMacintosh版の800KB HFSディスクイメージが埋め込まれていることが判明しました。

そこでScummVM向けにディスクイメージを取り出すツールも開発。抽出したゲームデータは、既存の1993年再発売版としてそのまま認識できたとのことです。

『Déjà Vu』はすでに最後までクリア可能

現在のMacVentureエンジンでは、『Déjà Vu』を最初から最後までクリアできることが確認されています。

『Déjà Vu II』についてもエンディング直前までテストされ、途中で見つかった進行不能になる不具合はすべて修正されています。ただし、最終部分のプレイテストだけはGSoCの期間内に完了できなかったとのことです。

『Shadowgate』と『Uninvited』も起動して序盤をプレイできることは確認されていますが、こちらはまだ最初から最後まで通したテストが実施されていません。

また、『Déjà Vu II』では20種類のサウンドのうち5種類がまだ再生できないなど、いくつかの課題も残っています。残る5種類は通常の音声データではなく、オリジナル版が68000用のコードを直接実行して音を鳴らす特殊な仕組みになっているため、対応するには68Kエミュレーションが必要になるとのことです。

MacVentureも正式リリース目前へ

『Chamber of the Sci-Mutant Priestess』はすでに公開テスト段階に入っていますが、MacVentureについては現在、デフォルトで有効化するための変更と、Macintosh版を「Testing」に昇格させるための変更がレビュー中です。

このふたつが承認されれば、MacVentureも正式リリースへ向けた最後の段階に入ります。開発者は最終報告の中で、12週間前にはこのふたつのエンジンを触ったことすらなかったものの、現在はどちらもリリースへ向かっていると振り返っています。

単に昔のゲームを起動できるだけではなく、「最後まできちんと遊べる」「オリジナルと同じように動く」ところまで追い込んでいくのもScummVMの面白いところです。今回の成果によって、これまでScummVMでは完成途上だった作品群を、より安心して遊べるようになる日も近そうです。

via.ScummVM GSoC 2026 最終報告

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