1993年に発売されたAtari Jaguarで、NINTENDO64の『Cruis’n USA』を思わせる3Dレースゲームが動く――そんな興味深い開発映像が公開されています。
Atari Jaguar向け3Dレースゲーム「JagRacer」を開発しているBudfolk氏は2026年8月18日頃、YouTubeで「N64 Cruis’n USA on Atari Jaguar: Using Both RISC Processors for 3D (Arizona Track)」と題した最新映像を公開しました。映像では、『Cruis’n USA』のArizonaコースを題材に、Jaguar上で3Dレースゲームを動かす試みを見ることができます。
もっとも、これはAtari Jaguar版『Cruis’n USA』が正式に移植されるという発表ではありません。
●JagRacer公式サイト
https://atari-jaguar.com/
Budfolk氏は動画の説明で、ここ数週間にわたってNINTENDO64版『Cruis’n USA』を自身のAtari Jaguar向けレースエンジンへ持ち込む作業を進めていたと説明しています。つまり、既存のJagRacerエンジンを使って別タイプの3Dレースゲームをどこまで表現できるのか試している、技術デモに近いものです。
『Need for Speed』風から『Cruis’n USA』へ
このプロジェクトが面白いのは、短期間のうちにさまざまな3Dレースゲームを題材にエンジンの可能性を試しているところです。
JagRacerはもともとAtari Jaguar向けに開発されている独自の3Dレースゲームで、テクスチャー付きの道路や丘、街、海岸、トンネルなどをリアルタイムで描画することを目指したプロジェクトです。公式サイトによると、平面の道路を拡大縮小して疑似的に奥行きを表現する方式ではなく、カーブや高低差を持った道路を3D空間として処理しています。
7月にはさらに、初代『The Need for Speed』を思わせる長い山岳道路などを使った実験も公開されていました。そこから今回、よりハイスピードでアーケード色の強い『Cruis’n USA』へ題材を変更しています。
一見するとどちらも3Dレースゲームですが、求められる処理はかなり異なります。
『Cruis’n USA』では道路を高速で進みながら、対向車や周囲のオブジェクト、カーブ、高低差などを次々と表示していく必要があります。今回使用されているArizonaコースも、広い道路だけではなく、起伏や周辺の景色を含めて描画するため、JagRacerエンジンの柔軟性を試す題材になっているようです。
1993年のJaguarでテクスチャー付き3D道路を描画
JagRacerそのものも、かなり興味深いプロジェクトです。
公式サイトによると、エンジンはアセンブリ言語を中心に約8000行以上のコードで構成され、Atari Jaguarに搭載された複数のプロセッサーを役割分担させています。
基本的なJagRacerでは、Motorola 68000がゲーム進行や入力、道路データの処理などを担当。Tom側のGPUとBlitterがテクスチャー付き3D描画を処理し、Object Processorが背景や車、HUDなどを最終的な画面として組み立てます。またJerry DSPは音楽やエンジン音、効果音などをリアルタイムで生成します。
今回の動画タイトルではさらに「Using Both RISC Processors for 3D」とうたわれており、Jaguar内部のRISCプロセッサーをより積極的に3D処理へ活用する方向で開発が進められていることがうかがえます。
Atari Jaguarは複数のプロセッサーを搭載した独特な構造を採用していましたが、それぞれを効率よく協調させることが難しいハードとしても知られています。
JagRacerでは、68000だけに多くの処理を任せるのではなく、Jaguarが持つ専用チップへ仕事を分散させることで、テクスチャー付き道路や長い描画距離を実現しようとしているわけです。
JagRacer自体は実機でも動作
「本当にJaguarで動くの?」と思った人もいるかもしれません。
JagRacerについては、すでに実際のAtari Jaguarでの動作が確認されています。
2026年7月にはプレアルファ版のROMも公開されており、公式サイトではBigPEmu向けだけではなくGame Driveなどを利用した実機環境でも試せるビルドが配布されています。公式には、オリジナルのJaguarハードウェア上で約20fpsを目標に、テクスチャー付き3Dシーンを動かすことを掲げています。
AtariAgeでも実際にJaguar実機で試したユーザーから動作報告が寄せられています。初期ビルドということもあり、サウンドや当たり判定などに不具合はあるものの、映像とほぼ同じ状態で動作したという報告も確認できます。
ただし、公式サイトに記載されている約20fpsという数字はJagRacer本体の目標値です。今回公開された『Cruis’n USA』を題材にした最新テストが、常に同じフレームレートで動作しているという意味ではありません。
Jaguarで『Cruis’n USA』そのものが発売されるわけではない
ここで改めて注意したいのが、今回の映像は『Cruis’n USA』のAtari Jaguar版発売を意味するものではないという点です。
現時点では完成した移植版として発表されているわけではなく、JagRacerの3Dエンジンを使って『Cruis’n USA』タイプの高速な3Dレースをどこまで再現できるのか検証している段階です。
そもそもJagRacer自体も現在はプレアルファ段階で、公式サイトではパフォーマンスやグラフィック、ゲーム内容などが今後変更される可能性があると説明されています。2026年7月7日版のデモが一般公開されていますが、完成版にはまだ時間がかかりそうです。
それでも興味深いのは、発売から30年以上経ったAtari Jaguarで、当時の市販ゲームではあまり見られなかったタイプのテクスチャー付き3Dレースゲームが、現在も新たに開発され続けているというところです。
「Jaguarの性能を当時もっと引き出せていたら、どんな3Dレースゲームが登場していたのか?」
今回の『Cruis’n USA』を題材にした映像は、そんな“もしも”を少しだけ見せてくれる技術デモと言えるのかもしれません。
via.GenerationAmiga















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