任天堂の北米公式ゲーム誌『Nintendo Power』で編集長を務めたゲイル・ティルデン(Gail Tilden)氏が、英国のゲーム雑誌『Retro Gamer』291号のインタビューで、1995年に発売された『バーチャルボーイ』を誌面で取り上げる難しさについて振り返っています。
このインタビューは、2026年10月22日付で配信された『Retro Gamer』291号に掲載されたもので、海外ゲームメディアの『Time Extension』が10月24日にその内容を紹介しています。
●原典:『Retro Gamer』291号(2026年10月22日付)
https://idahodigital.overdrive.com/library/magazines/media/13776291
●紹介記事:Time Extension(2026年10月24日付)
https://www.timeextension.com/news/2026/10/there-was-nothing-worse-than-thinking-about-the-virtual-boy-nintendo-powers-gail-tilden-wasnt-a-fan-of-the-red-screened-flop
赤一色の映像や3D表示に戸惑いも
『バーチャルボーイ』といえば、任天堂が1995年7月21日に発売した、赤と黒の映像による立体視が特徴のゲーム機です。当時としては画期的な仕組みを採用していましたが、商業的には成功せず、短期間で市場から姿を消すことになりました。
今回のインタビューでティルデン氏は、任天堂製品を取り上げる際に苦労した経験について質問され、『バーチャルボーイ』を扱うことがとりわけ大変だったと振り返っています。
同氏によると、3Dで映像が見られるという新しい仕組みには、当初は期待を抱いていたそうです。しかし、実際に製品を体験してみると、その目新しさが必ずしもゲームの楽しさにつながっているわけではなかったといいます。
とくに印象的だったのが、赤一色の独特な画面です。ティルデン氏は、その映像から眼科で視力検査を受けているような感覚を連想したと説明。また、プレイによって頭痛を感じる人がいたことや、3D表示そのものの難しさについても言及しています。
一方で、現在のVRヘッドセットで実現できることを考えると、立体映像という発想自体には魅力があったとも述べています。つまり、新しい技術に対する期待はあったものの、当時の『バーチャルボーイ』には、それを十分に生かしきれていない部分があったと感じていたようです。
任天堂の公式誌だからこその難しさ
今回の証言でもうひとつ興味深いのが、任天堂の公式誌である『Nintendo Power』ならではの事情です。
ティルデン氏は、誌面作りで苦労した別の例として『テトリス』にも触れています。当時、同作を大きく取り上げるよう任天堂の荒川實氏から働きかけがあり、表紙や16ページにわたる差し込み企画を用意する必要があったといいます。
『テトリス』ほどの作品であっても、それをどのように誌面で魅力的に紹介するかは、編集者にとって簡単なことではなかったようです。
そして、『バーチャルボーイ』の場合はさらに難しい問題がありました。赤一色の映像や3D表示という特徴を持つゲーム機を、どのように読者に紹介すればいいのか。そもそも、ほかのゲームよりも大きく扱うだけの魅力があるのかという問題です。
ティルデン氏は、任天堂が発行する雑誌であっても編集者としての信念は持っていたかったと振り返っており、『バーチャルボーイ』を必要以上に目立たせることには抵抗があったといいます。
公式誌という立場上、任天堂の新製品を紹介する必要がある一方で、読者に対してゲームの面白さを伝えるという役割もあります。今回の発言からは、その両立に苦労していた当時の編集現場の様子がうかがえます。
今あらためて振り返る『バーチャルボーイ』
発売から30年以上が経過した現在でも、『バーチャルボーイ』は任天堂の歴史の中で異色の存在として語られることが多いゲーム機です。
当サイトでも、当時の雑誌や資料、実機、ゲームソフトなどを集めて、その歴史を振り返った『バーチャルボーイとはなんだったのか? 当時の資料と実機、ソフトで徹底的に振り返る』という記事を公開しています。こちらでは、実機の仕組みや発売当時の評価に加え、赤青メガネを使って立体視を疑似体験できる映像なども紹介しています。
また、『バーチャルボーイ』の実機レビューでは、筆者が当時購入した経緯なども交えながら、その独特なゲーム体験を取り上げています。
これまでも『バーチャルボーイ』が商業的に成功しなかった理由については様々な形で語られてきましたが、今回のように任天堂の公式誌を制作していた人物が、編集現場での苦労を振り返るというのは興味深い話です。
単に売れなかったゲーム機というだけではなく、それを読者にどう伝えるべきかという点でも、当時の関係者を悩ませる存在だったのかもしれません。


















プラレール 銀河鉄道999
Divoom Ditoo Pro











