2026年10月21日、DevWithZachary氏は、ソニーの携帯ゲーム機PS VitaでLinuxを動かすことができるHomebrew『LinuxOnVita』の最新版となるv1.4.0を公開しました。
『LinuxOnVita』は、PS Vita上でLinux 6.12を起動し、様々なソフトウェアを実行できるようにするプロジェクトです。通常のPS Vitaとは異なるOSを動かすという、なかなかユニークな取り組みが進められています。
今回公開されたv1.4.0では、これまで起動時に必要だったソニー純正メモリーカードが不要になったほか、CPUの4コアすべてを利用できるようになりました。さらに、タッチ操作に対応したグラフィカルなメニューも追加されるなど、大幅なアップデートが行われています。
●『LinuxOnVita』GitHub公式ページ
https://github.com/devwithzachary/LinuxOnVita
●『LinuxOnVita v1.4.0』ダウンロード・更新履歴
https://github.com/devwithzachary/LinuxOnVita
●『LinuxOnVita』公式サイト
https://linuxonvita.com/

純正メモリーカードが不要に! SD2VitaからもLinuxを起動可能
今回のアップデートで、特に注目したいのがストレージ周りの改善です。これまでの『LinuxOnVita』では、Linuxを起動する際にソニー純正のPS Vita専用メモリーカードが必要でした。そのため、microSDカードを利用できるアダプター『SD2Vita』を導入していても、Linuxの起動用として別途純正メモリーカードを用意する必要がありました。
しかし、v1.4.0ではこの制約が解消されています。具体的には、Linuxの起動に必要なカーネルなどのデータを、あらかじめPS Vitaのメモリー(RAM)上に読み込んでおく仕組みが採用されました。これによって、従来のように純正メモリーカードから起動用ファイルを読み込む必要がなくなっています。
新たに対応した起動元は、SD2Vitaを割り当てた「ux0:」と、本体内蔵ストレージの「ur0:」です。開発者によると、従来のメモリーカード認証などの処理も省略され、起動時間も2~3秒ほど短縮されたとのことです。
特にSD2Vitaをメインストレージとして利用しているユーザーにとっては、余計なメモリーカードを用意する必要がなくなったという点で、大きな改善といえそうです。
ただし、これはあくまでもLinuxの起動に純正メモリーカードが不要になったという意味です。『LinuxOnVita』を利用するには、あらかじめPS VitaにHomebrewを実行できる環境が導入されている必要があります。
CPUの4コアすべてが利用可能に! 操作画面も使いやすく進化
もうひとつの大きな変更点が、CPUの4コア動作への対応です。PS Vitaには、ARM Cortex-A9をベースにした4コアCPUが搭載されています。しかし、従来の『LinuxOnVita』では、一部のコアが正常に起動できず、Linux上ですべてのコアを利用することができませんでした。
v1.4.0では、CPUコアの初期化処理などが修正され、4コアすべてを利用するSMP(対称型マルチプロセッシング)に対応しています。
これによって、Linuxが複数のCPUコアに処理を割り振れるようになり、複数のプログラムを動かす場面などでの改善が期待できます。ただし、実際にどの程度パフォーマンスが向上したのかについては、今後の検証が必要です。
また、操作画面も大きく変更されています。これまでの文字を中心とした起動メニューに代わり、新たにグラフィカルなユーザーインターフェイス(GUI)が導入されました。画面に表示されたストレージをタッチして選択したり、大きなボタンからLinuxを起動したりすることができます。
もちろん、PS Vitaの方向キーや物理ボタンで操作することも可能です。起動時のログを画面上で確認する機能も用意されており、従来よりも扱いやすい環境になっています。
PS VitaでLinuxを動かすと何ができる?
そもそも、ゲーム機でLinuxを動かすと何ができるのでしょうか?『LinuxOnVita』では、軽量なLinuxディストリビューション『Alpine Linux』の環境を利用し、対応するソフトウェアを追加することができます。
たとえば、Pythonなどを利用したプログラミングや、コマンドラインツールの実行、ネットワーク関連の操作などが可能です。また、軽量なデスクトップ環境『IceWM』も用意されており、PS Vitaの画面上でウィンドウを操作することもできます。
ゲーム関連では、『DOOM』を動かすためのプログラムも収録されています。
さらに、今回のv1.4.0では『WireGuard』などのVPN関連機能も追加されました。Linux上で仮想的なネットワーク接続を利用するための仕組みが強化されており、ネットワーク関連の実験にも活用できそうです。
一方、現時点ではハードウェアの対応状況に制約が残されています。
たとえば、PS VitaのGPUを利用した3D描画の高速化には対応しておらず、音声出力についてもLinux側のドライバーが未対応です。そのため、一般的なパソコンと同じように、あらゆるLinuxアプリケーションが快適に動作するわけではありません。
また、v1.4.0ではストレージの保護機能も強化されています。SD2Vitaや本体内蔵ストレージは、標準では読み取り専用として扱われるようになりました。これにより、予期しない電源断などによってデータが破損するリスクを抑える仕組みになっています。
導入できるPS Vitaは? 利用にはHomebrew環境が必要
『LinuxOnVita』のGitHubでは、PS Vita 1000、PS Vita 2000、PlayStation TVが対応対象として挙げられています。
ただし、通常の未改造本体にそのままインストールできるわけではありません。
公式の導入条件では、ファームウェア3.60または3.65で『HENkaku/Ensō』を利用できる環境が必要とされています。また、『HENkaku』の設定で「Enable Unsafe Homebrew」を有効にしておく必要があります。
導入方法は、GitHubで公開されている「LinuxOnVita.vpk」を『VitaShell』などからインストールし、起動メニューで利用するストレージを選択するというものです。
SD2Vitaを利用している場合は「ux0:」、本体内蔵ストレージを利用する場合は「ur0:」が選択肢として用意されています。
なお、開発者が主にテストしているのは、ファームウェア3.65と『Ensō』を導入したPS Vita 1000です。PS Vita 2000なども対応対象に含まれていますが、すべての環境で正常に動作することが保証されているわけではありません。
特に注意したいのが、ストレージの割り当てなどを変更するプラグインとの競合です。開発者は『YAMT』や『StorageMgr』などを利用している環境では、LinuxからPS Vitaの通常OSへ戻った際に起動ループが発生する場合があると警告しています。
そのため、実際に導入する際は事前に必要なデータをバックアップし、公式の注意事項を確認しておくことをおすすめします。
PS Vitaといえば、Homebrewを導入することで様々なエミュレーターや非公式移植ソフトが動かせることでも知られています。当サイトでも以前、実際にPS Vitaを改造して、いろいろなソフトウェアを動かす検証を行いました。
今回の『LinuxOnVita』は、そうした活用方法からさらに一歩踏み込み、ゲーム機そのものを小さなLinuxマシンとして利用しようというものです。
まだ制約はあるものの、発売から長い年月が経過したPS Vitaの可能性をさらに広げてくれる、興味深いプロジェクトといえそうです。
※本記事は開発者が公開した情報を基に作成しており、v1.4.0の実機動作を検証したものではありません。


















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