『The Bard’s Tale』開発者に独占インタビュー!43年越しのRPG『Shadow Snare』復活秘話、C64版は2027年夏発売へ

『The Bard’s Tale』開発者に独占インタビュー!43年越しに復活するRPG『Shadow Snare』の開発秘話と、2027年夏発売を目指すC64版の最新情報

『The Bard’s Tale』シリーズの生みの親として知られるゲームデザイナー、マイケル・クランフォード氏。現在、同氏が開発を進めているのが、1983年に予告されながらも発売されることがなかった幻のRPG『Shadow Snare』です。

本サイトでは、以前よりCommodore 64(以下、C64)向けに開発されていることを紹介してきましたが、先日、クランフォード氏本人からメールが届き、PC版も開発中であることが明らかになりました。

そこで今回、クランフォード氏にメールでのインタビューを依頼したところ、快く応じていただくことができました。

1983年に構想したゲームを、なぜ43年も経った今になって復活させようと思ったのか。また、現代の技術を使いながら、あえてC64向けに開発する理由は何なのか。さらに、これまで明かされていなかった2027年夏という発売目標や、PC版の技術的な仕組みについても詳しくお話を伺いました。

今回は、クランフォード氏から提供していただいた開発中のPC版スクリーンショットとともに、そのインタビューをお届けします。

●Shadow Snare公式サイト
https://shadowsnare.com/

●Shadow Snare PC版紹介ページ
https://shadowsnare.com/pc/

●Shadow Snare C64版デモ紹介ページ
https://shadowsnare.com/c64-demo/

▲今回提供していただいたPC版のスクリーンショット。こちらはゲームを一時停止したときの画面で、セーブやロードなどのメニューが並んでいます。
▲今回インタビューに応じていただいた、『The Bard’s Tale』の生みの親、マイケル・クランフォード氏

43年越しの復活!きっかけは2025年のレトロゲームイベント

――『Shadow Snare』は1983年に発表された作品ですが、40年以上経ってから再び開発しようと思ったきっかけを教えてください。

クランフォード氏:
きっかけになったのは、2025年の「Portland Retro Gaming Expo」です。

以前からHans Reutter氏に『The Bard’s Tale』の回顧講演を依頼されていたのですが、2025年になってようやく参加することができました。会場に到着して驚いたのは、3万人を超えるファンが集まっていたことです。レトロゲームがこれほど人気を集めているとは知りませんでした。

会場では、現在もレトロゲームを開発している方々と交流する機会がありました。そして、私が知らなかったことを教えてもらったのです。それは、Commodoreが復活し、オリジナルのC64を現代向けにした「Commodore 64 Ultimate」を発売しようとしていることでした。

そのとき、こう思ったのです。

「彼らが戻ってくるのなら、私も戻ろう」

レトロゲームには、私が想像していた以上に大きなファン層があり、それを支える市場も存在しているのだと感じました。帰宅後、さっそくCommodore 64 Ultimateを注文し、慣れ親しんだツールを使って開発環境を整えました。

私はこの数十年間、C#や.NETを中心とするソフトウェアアーキテクトとして仕事をしてきました。そのため、6502向けの開発でも同じようなツールが利用できると知ったことは、とてもうれしかったですね。おかげでスムーズに開発を始めることができました。

――1983年に構想していた『Shadow Snare』のアイデアは、現在の作品にどれくらい残っているのでしょうか?

クランフォード氏:
『Maze Master』を完成させた後、いくつものアイデアを考えていました。しかし、それらの多くは『The Bard’s Tale』には採用されませんでした。『The Bard’s Tale』では、『Wizardry』や『Dungeons & Dragons』を参考に、比較的オーソドックスなRPGを作りました。

ですが、私が本来作りたかったのは、もっと魔法を中心に据えたゲームだったのです。複数のキャラクタークラスでパーティーを組むのではなく、ひとりの複雑なキャラクターが、さまざまな方向に成長していくようなシステムを考えていました。

そうしたアイデアは、さまざまな理由から『The Bard’s Tale』では採用を見送りました。そして今回、『Maze Master』の後継作を作ることになり、当初の構想に立ち返ろうと決めたのです。

『Shadow Snare』でプレイヤーが操作するのは、ひとりのキャラクター、つまり自分自身です。

もちろん、旅の途中では仲間が加わります。しかし、彼らはプレイヤーが自由に操作するキャラクターではありません。それぞれ独自の目的や意思を持ったNPCで、私は彼らを「コンパニオン」と呼んでいます。

仲間は途中で離脱することもありますし、レベルが上がった状態で再び登場することもあります。彼らはプレイヤーの目的達成を助けてくれますが、プレイヤーもまた、仲間たちが生き残れるように手助けする必要があります。

こうした仕組みは、私が親しんできたテーブルトークRPGに近いものだと感じています。昔のテーブルトークRPGでは、プレイヤーはパーティー全員ではなく、自分のキャラクターをひとりだけ操作してダンジョンに挑んでいました。

ひとりのキャラクターに焦点を当てることで、より深いリアリティを生み出せると考えています。1984年当時にも、この方向性を実現したかったのですが、安全な選択肢とはいえませんでした。だからこそ、今度の『Shadow Snare』では、その道を進もうと思っています。

▲PC版の酒場「The Boar’s Nest」。冒険に同行する仲間を選択している場面です。本作では仲間がそれぞれ独自の目的や意思を持っています。

64KBの制約を超えて!当時は実現できなかったRPGの世界

――『The Bard’s Tale』を開発していた1980年代と比較して、ハードウェアの制約によって実現できなかったことはありますか?

クランフォード氏:
64KBのRAMしか搭載しておらず、ディスクの読み込みも遅いコンピューターで開発する場合、さまざまな妥協が必要になります。たとえば、当時は物語を十分に豊かなものにすることができませんでした。ストレージやRAMの容量が足りなかったからです。

もっと没入感のあるグラフィックも実現したかったのですが、ゲームをフロッピーディスク2枚に収めなければならなかったため、複雑なアニメーションを作ることもできませんでした。64KBという限られた容量に何バイト詰め込めるかを計算しながら、ある機能を実装するために、別の機能を諦めなければならなかったのです。

しかし、現在はカートリッジの高速な読み込みや、大容量のストレージを利用できます。カートリッジのデータを仮想的なRAMのように扱い、必要に応じてプログラムやデータを入れ替えることもできます。すべてを一度にメモリーに置いておく必要がないのです。

そのため、『Shadow Snare』は実際のC64で動作するゲームでありながら、『The Bard’s Tale』よりもはるかに大きな作品だと感じられるものになります。

世界にはより多くの要素が盛り込まれ、グラフィックやサウンドもC64向けに新たに制作しています。ちなみに、オリジナルの『The Bard’s Tale』はApple II向けに開発され、C64には移植された作品でした。

また、新しいCommodore 64 Ultimateを使用する人向けには、追加の機能強化も用意する予定です。1980年代には実現できなかった、より深い物語、大規模なゲームエンジン、そして没入感のあるグラフィック。それらをオリジナルのC64で動かすことができるのです。

PC版はGodotを採用!ゲームの中身はC64版と共通

――C64版に加えて、PC版も開発しようと思った理由を教えてください。

クランフォード氏:
近年、『The Bard’s Tale』のリマスター版が発売されました。オリジナルのハードウェアを持っていない人や、PCで便利に遊びたい人たちにも関心を持ってもらえたことが印象的でした。そこで『Shadow Snare』でも、最初から同じようなバージョンを用意すれば、より多くの人に興味を持ってもらえるのではないかと考えたのです。

もっとも、今回は「リマスター」ではなく「プレマスター(premastered)」と呼んだほうがいいかもしれませんね。

PC版は普段の開発環境であるC#を使って制作しているため、ある意味ではC64版よりも作りやすい部分もあります。私はさまざまなプラットフォームをサポートすることが好きです。そうすることで、より多くの人にゲームをプレイしてもらえるからです。

私は物語を語る人間です。だからこそ、できるだけ多くの人に、この物語を届けたいと思っています。ただし、最初に発売するのはC64版です。PC版はその後に登場する予定となっています。

――C64版とPC版では、同じゲームデータやルールが使用されているとのことですが、具体的にはどのような仕組みなのでしょうか?

クランフォード氏:
当然ながら、両者のプログラムは別々のものです。PC版はC#で、C64版はアセンブリ言語で開発しています。しかし、ゲームのロジックは同じです。戦闘時の計算、レベルアップ、罠の処理などは、どちらのバージョンでも同じ計算方法を使っています。

私がゲームデータを設計するために使用しているツールでは、両方のプラットフォーム向けにデータを書き出すことができます。そのため、同じレベル構成、同じゲームロジック、同じ謎解き、同じ物語の説明文が使用されるのです。

違いはグラフィックやサウンドなどの素材と、インターフェースです。PC版では高解像度の画像や3Dテクスチャー、フルサイズの楽曲を使用しています。PC向けのC#エンジンでは、Godotを使った3D表現を採用しています。C64版の表示方法を再現しながらも、実際の3Dを使用しているのです。

また、PC版では対象の選択やターゲット指定などを柔軟に行えるほか、ツールチップなどの機能も充実しています。ですが、あくまでも同じゲームです。PC版だけに異なるルールやゲームデータを追加するつもりはありません。

PCゲームに慣れた人が自然にプレイできるようにしたいだけなのです。見た目は現代的になりますが、あくまでもレトロゲームらしい作品であり、大作のAAAゲームを目指しているわけではありません。

▲PC版のダンジョン探索画面。石造りの壁や通路などが3Dグラフィックで表現されており、画面下部には仲間のステータスが表示されています。

――PC版で特に残したいと考えている、昔ながらのRPGの魅力は何でしょうか?

クランフォード氏:
ターン制による一人称視点のゲームプレイ、そしてグラフィックだけに頼らず、物語を重視した体験です。PC版であれば、より豪華なシネマティック演出を導入することもできます。実質的にRAMやストレージの容量を気にする必要がないからです。

しかし、C64版には当然ながら制約があります。私は、C64版のプレイヤーが、PC版に比べてゲームの内容が少ないと感じるようなものにはしたくありません。現実的な高解像度グラフィックやサウンドを採用しながらも、基本的には同じゲームをプレイしていると感じてもらいたいのです。

そのため、プレイテスターには、PC版でもC64版と本質的に同じ体験ができているかどうかを確認してもらっています。

▲PC版の戦闘シーン。オークが大きく描かれる一方、画面右側には状況を説明するテキストが表示されるなど、昔ながらのRPGらしい構成も残されています。

43年間で変化したゲーム観。物語と仲間に込めた思い

――以前のメールでは、人生経験を重ねたことで物語や仲間の描き方が変わったとおっしゃっていました。1980年代から現在にかけて、RPGの物語に対する考え方はどのように変化したのでしょうか?

クランフォード氏:
長い年月の間に私は大学に戻り、現在は複数の大学で倫理学や哲学を非常勤で教えています。私は人間が倫理的にどのように形成されていくのかということに強い関心を持っています。たとえば、アリストテレスやアウグスティヌスの著作に見られるような考え方です。

そのため、アリストテレスの友情に対する考え方などが、『Shadow Snare』に登場する仲間たちの役割にも影響しています。トールキンの物語にも、同様の教育的、哲学的な背景がありました。彼が私のRPG制作における最大の影響源のひとりであることは、よく知られていると思います。

こうした考え方は、この種の物語を描くうえで、とても豊かな土台になるのです。『Shadow Snare』の魔法システムである「Eight Ways」を見れば、単に敵にダメージを与えるための仕組みではなく、旅そのものについて語っていることが分かると思います。

力を手に入れること自体が目的なのではありません。自分の運命へと向かうための力なのです。それぞれの段階を進むことは、徳を身につけて成長することでもあります。ゲームに登場する謎解きや試練も、キャラクターが何者かになっていく過程の一部なのです。

『指輪物語』も、そうした視点から読み解くことができます。ガンダルフがどのような存在であり、物語を通じてどう変化していったのかを考えてみてください。こうした物語は、現在ではそれほど多く見られないように思います。

ですが、『Shadow Snare』にも、そうしたテーマを物語の中にさりげなく織り込んでいます。私自身が歩んできた人生も、間違いなく作品に反映されているのでしょう。1983年から現在まで、私自身も実に興味深い旅を続けてきましたからね。

▲PC版に登場する成長システム関連の施設。能力や魔法に関する成長要素に加え、振り直しに相当するメニューも確認できます。
▲ダンジョン内のイベントシーン。壁に突然現れた魔法の口が仲間のBromに言及し、プレイヤーに返答を求めています。テキストによるやり取りも本作の特徴のひとつです。

C64版は2027年夏発売が目標!PC版はSteamでの配信を想定

――2026年の「Portland Retro Gaming Expo」では、どのようなデモを披露したのでしょうか? また、来場者の反応はいかがでしたか?

クランフォード氏:
まず、最も驚いたのは人々の温かさでした。皆さんはとても親切で、寛大でした。過去に私が作ったゲームに対して感謝や励ましの言葉をいただき、これからの作品にも期待を寄せてくれました。

会場では、C64版とPC版の両方の『Shadow Snare』を披露しました。C64版はすでに数カ月間プレイテストを行っていましたが、PC版はまだ本格的なテストを行っていない段階でした。実は、PC版についてはこの機会まで秘密にしていたので、ほとんどの人にとって初めてのお披露目となりました。

どちらのバージョンについても、しっかりとした好意的なフィードバックをいただきました。C64版は素晴らしい見た目になっていますし、PC版も印象的な仕上がりになっていると思います。

PC版では、現実的なスタイルを採用することで、少し荒々しさのある雰囲気を目指しました。今のところ好評で、PC版についてもプレイテストが始まっています。

――現在のデモでは、どのような部分を中心にテストしていますか? また、一般向けに体験版を公開する予定はありますか?

クランフォード氏:
現段階では、プレイテストを限定的なものにしておく予定です。現在のデモは、製品版の実際の物語を収録したものではありません。ゲームロジックの最後の部分を完成させるために、幅広いテストが行えるよう、7つのレベルを用意しています。

ゲームエンジンについては、両方のプラットフォームで99パーセント完成しています。今後6カ月間は、プログラミングよりもクリエイティブな作業が中心になるでしょう。一般向けのデモについては、将来のパブリッシングパートナーが発売前の公開を希望した場合に限り、リリースするつもりです。

――発売時期についても教えてください。C64版とPC版はいつ頃登場する予定でしょうか? また、PC版の対応OSについても教えてください。

クランフォード氏:
最初に発売するのはC64版で、2027年夏を目標にしています。まずは箱入りのパッケージ版として発売し、おそらくその後にデジタル版をリリースすることになると思います。PC版については、高解像度の素材を制作するために、もう少し時間が必要です。

現時点では発売日を設定していません。私の中では暫定的な計画がありますが、具体的な日付についてはまだ触れないでおきたいと思います。ただし、基本的には同じゲームなので、C64版の発売からそれほど長く待たせることはないでしょう。

PC版については、現在WindowsとLinux向けのビルドを用意してテストしています。また、ほぼ間違いなくSteamで発売することになると思います。

――最後に、日本のレトロゲームファン、特に『The Bard’s Tale』のようなクラシックRPGを楽しんできた読者に向けて、メッセージをお願いします。

クランフォード氏:
まず、皆さんに感謝していることをお伝えしたいです。私は日本のゲーム開発が大好きです。特に、日本のゲーム開発がRPGというジャンルにもたらしてきた新たな発想や革新を、『Shadow Snare』にも取り入れていければと願っています。

現在も、プレイテスターの募集には若干の余裕があります。興味のある方は、ぜひ公式サイトから参加を申し込んで、プロジェクトをフォローしてください。

●Shadow Snare公式サイト
https://shadowsnare.com/

1983年に名前だけが予告され、長い年月を経てようやく開発が動き始めた『Shadow Snare』。今回のインタビューで印象的だったのは、単に昔作れなかったゲームを今の技術で完成させようとしているのではなく、40年以上にわたって積み重ねてきた経験や考え方までも、作品に反映させようとしている点です。

特に、ひとりの主人公と独自の意思を持つ仲間たちの関係性や、単なる能力の強化ではなく、人間としての成長を重視したシステムなどには、クランフォード氏が長年温め続けてきたRPGへの思いが込められているように感じました。

C64版は2027年夏の発売を目標に開発が進められており、その後にはPC版の登場も控えています。『The Bard’s Tale』の生みの親が、40年以上の時を経て完成を目指す新たなRPG。今後どのような作品に仕上がるのか、引き続き注目していきたいところです。

※インタビューは英語で実施し、回答を日本語に翻訳・編集しています。

※掲載しているPC版のスクリーンショットは開発中のものです。公式サイトによると、一部の画像には生成AIによる仮素材が使用されており、予算などの条件が整えば完成版までに人間の制作者による素材へ差し替えることも検討されています。

取材協力:Michael Cranford氏

ABOUT US
アバター画像
retrogamer