2019年9月より発売が開始された、NINTENDO64向けのマルチカートリッジ『EverDrive-64 X7』をようやく入手することができました。ちなみにこの『EverDrive』とは、ひとつのカートリッジ内に複数のROMデータを入れることができ、メニューからゲームを選ぶことでカセット自体を抜き差しすることなく遊べるようにするためのものです。
なぜこれまで新しいモデルをスルーしてきたのかというと、実はこの『EverDrive-64 X7』が発売されるちょうど1年ほど前に旧モデルの『EverDrive-64 v3』を入手していたからです。
●EverDrive-64 X7(価格は$159+送料)
https://everdrive.me/cartridges/ed64x7.html
また、その当時サイトに記載されていたスペック表を見てもできることはほぼ同じで、単純にブランドをそれまでの「v」というバージョン表記から「X」シリーズにリブランディングしただけだと思い込んでいました。


しかし、ふたつの理由で『EverDrive-64 v3』では役不足であると考えたため、購入を決めています。そのひとつのきっかけとなったのは、NINTENDO64のBIOSファイルにあたるPIFファイルを吸い出したいと考えたからでした。
PIFファイル自体はEverDriveとツールを利用することで簡単に吸い出すことができるのですが……なぜか『EverDrive-64 v3』ではファイルの出力をすることができずにエラーが出てしまいます。しかし、『EverDrive-64 X7』では問題なく動作しファイルも出力することができました。
●NINTENDO64の本体からPIFファイルを取得するためのツール
https://github.com/hcs64/pif_rom_dumper

また、もうひとつの理由は、ここ最近Analogueからリリースされているハードは、最新のEverDriveのみをサポートする場合があるからです。昨年末にPCエンジン互換機の『Analogue Duo』が発売されましたが、こちらも今のフラグシップモデルである『Turbo EverDrive PRO』は動くことが確認されていますが、そのひとつ前のモデルは今のところ動かすことができません。
ご存じのように、NINTENDO64関連のハードとしては、今後Analogueから『Analogue 3D』のリリースが予定されています。そちらに備えて、『EverDrive』も最新のものにしておいたほうがいいだろうということで入手しています。

ということで、前置きが長くなりましたがこちらの記事では『EverDrive-64 X7』のレビューをお届けしていきます。
目次
- ハードケースのゴージャスなパッケージ
- 前モデルとは共通点もあれば異なるところも?
- EverDrive-64 X7を使用する前の下準備
- ゲームの起動だけじゃなくチートコードや情報も見られる「ファイルメニュー」
- メインメニューで壁紙やRTCの時間合わせもできる
- 壁紙もお好みで変更可能
- エミュレーターも利用可能! ファミコンはFPGAに進化
- 使い勝手に大きな違いはないが中身は着実に進化
ハードケースのゴージャスなパッケージ
EverDriveといえば、黒い箱のイメージが強かったのですが、今回購入した『EverDrive-64 X7』はなんとゴージャスなハードケースに入れられています。中身は本体とマニュアルが付属しており、マニュアルは写真付きで細かくできることが書かれているというかなり親切設計になっていました。



少し驚いたのは、このパッケージの背面側です。なんと『EverDrive-64 X7』のスペックに加えて動作環境についても記載されていたところです。「NEC VR4300」はNINTENDO64に搭載されているCPUのことをさしているため、こちらはおそらく互換機で動かす場合に必要なスペックを表していると思われます。

今回は公式ストアでもkrikzz.comのほうではなくEverdrive.meで購入しましたが、『EverDrive-64 X7』と一緒に交換用のシェルも注文してみました。色は透明スモークでしたが、思いのほかものとのカラーリングの方が良かったため、とりあえず交換せずに寝かせてあります。

前モデルとは共通点もあれば異なるところも?
前モデルの比較として、サイトに掲載されていた特徴をご紹介しておきます。
●EverDrive-64 X7
・PALとNTSC の両方のシステムをサポート
・領域の自動検出を備えた UltraCIC III
・カートリッジ接点には硬質金メッキを採用
・RTCのサポート
・microSDカードとSDHCカードをサポート
・最大23Mバイト/秒の速い読み込み速度
・内蔵エミュレータを介して .nes ROM フォーマットをサポート
・Gamepak セーブのサポート (SRAM、SRAM128K バイト、EEPROM16k、EEPROM4k、FlashRam)
・GameSharkのチートコードに対応
・IPS/APS パッチに対応
・開発用のUSBポートをサポート
●EverDrive-64 v3
・高い互換性。N64ゲームライブラリとほぼ100パーセントの互換性
・UltraCIC II ロックアウト チップを内蔵
・PAL と NTSC の両方のシステムをサポート
・CIC-6105 を使用し保護されたゲームをプレイ
・カスタムのマルチリージョンシェル。カートリッジはどのコンソールにもフィット
・ROMデータ用64Mバイト(512mbit)SDRAM(最大ROMサイズ64Mバイト)
・256KbyteバッテリーRAM(RAM保存)
・RTCのサポート
・ゲームパックのセーブ時にリセットは不要
・SDおよびSDHCカードをサポート
・FAT16/FAT32のサポート。FAT32 のパーティション サイズは無制限
・SDからSDRAMへの転送速度は最大23Mバイト/秒
・エミュレーション機能
・ゲームパック保存サポート (SRAM、SRAM128Kbyte、EEPROM16k、EEPROM4k、FlashRam)
・GameSharkのチートコードに対応
・IPS/APS パッチに対応
・追加のソフトウェアは必要ありません
・USBポート800k – 1Mバイト/秒。開発者にとって便利な USB ポート
上記のうち、黒い太字は共通している部分。黄色いアンダーバーを引いたとこころは異なる部分となっています。まず大きく異なっているのは、『EverDrive-64 v3』では通常のSDカードだったのが、『EverDrive-64 X7』とmicroSDカードに変更されている点です。カードスロットの位置も、上部から左側面に変更されています。


また、『EverDrive-64 v3』ではPALとNTSCを切り替えるためのスイッチがSDカードスロットの内部に付けられていましたが、『EverDrive-64 X7』ではUltraCIC IIがUltraCIC IIIに進化したことで、自動で検出して切り替えてくれます。

共通点として引き継がれているところに、すべてのNINTENDO64に対応しているという点があげられます。じつはNINTENDO64では、内部のカセットの仕組みでリージョンを判別しているわけでなく、カセットの背面側の溝の違いのみで刺さらないようにしているからです。


EverDrive-64 X7を使用する前の下準備
この『EverDrive-64 X7』はいきなり使えるわけではなく、ほかのEverDrive同様に公式サイトから最新のファームウェアを入手して、microSDカードのルートに配置しておく必要があります。ちなみにmicroSDカードはexFatでは認識されないため、Fat32でフォーマットしておくといいでしょう。
この記事を書いている2024年2月1日時点での最新バージョンはv3.07で、こちらは2022年7月17日に公開されたものです。つまり、しばらくアップデートは行われていません。
●EverDrive-64 X7のファームウェア
https://krikzz.com/pub/support/everdrive-64/x-series/OS/
入手したファイルを解凍して、その中にある「ED64」と書かれたフォルダをmicroSDカードのルート上にコピーしておきます。ゲームのROMデータは、わかりやすく「ROM」などの名前をフォルダに付けて管理しておくといいでしょう。
初回起動時にアナウンスが表示されますが、それ以降は直接『EverDrive-64 X7』のファイルマネージャーが表示されます。


ゲームの起動だけじゃなくチートコードや情報も見られる「ファイルメニュー」
ゲームのROMデータを選択すると、ファイルメニューが起動します。そのままゲームをプレイするときは「Start Game」を選べばOKです。「Cheats」ではチートコードの入力と適用ができます。

「Rom Info」ではゲームのROMデータの詳細を確認することができます。セーブの種類はRTC(リアルタイムクロック)のしよう、リージョンなど、必要な情報が見られます。「Rom Config」ではセーブタイプやRTC、リージョンの変更が可能。「Hex View」では、ファイルをHexで確認することができます。


『不思議のダンジョン 風来のシレン2 鬼襲来!シレン城!』は、デフォルトで「Save Type」が「SRAM」に設定されていますが、このままではエラーが出てセーブできません。こちらは「Rom Config」で「SRAM96K」または「SRAM128K」にすることで保存できるようになりました(※どちらが正しいかは不明)。

GameSharkのチートコードが利用可能
このファイルメニューの「Cheat」では、GameSharkのチートコードを入力して適用させることができます。ためしにGameHacking.orgに掲載されているものの中から『スーパーマリオ64』を検索して、帽子を脱いだコードを適用してみたところ。たしかしに、チートコードが有効になっていることを確認することができました。
●GameHacking.org
https://gamehacking.org/


メインメニューで壁紙やRTCの時間合わせもできる
ファイルメニューなどの画面が出ているときに、コントローラーのZボタンを押すことでメインメニューを憑依させることができます。こちらは、主にEverDrive全般に関する設定を行うことが可能です。

「Options」を選ぶとさらにメニューが開き、こちらでは各種オプションのON/OFFの切り替えやRTCの時間合わせが行えます。
■Optionsのメニュー内容
・Options->Background:背景のイメージのON/OFF
・Options->Cheats:チートコード使用のOM/OFF
・Options->IPS/APS:パッチファイル使用のON/OFF
・Options->CRC Check:CRCチェックの使用のON/OFF
・Options->Hide Sys Dir:システムディレクリー表示のON/OFF

このOptionsメニューで重要なのが「RTC Setup」です。こちらは、カートリッジ内の時計を設定できるものとなっているので、最初に時間を合わせておくといいでしょう。

このメインメニューの他の項目は以下の通り。
・Recently Played:これまでのプレイ履歴
・Random Game:ランダムでゲームを起動
・Cheats:最後にプレイしたゲームのチートコードを編集
・CPak Manager;コントローラーパックのセーブデータをファイルとしてコピー。データの削除も可能
・Device Info:デバイスに関する情報の表示
・Diagnostios:EverDriveが正常に動いているか診断するための機能
・About:制作者の情報





壁紙もお好みで変更可能
『EverDrive-64 X7』のシステムフォルダである「ED64」の中に、「bgr」というフォルダがあります。こちらを開くとふたつのjpgファイルが入っていますが、こちらが画面上に表示されている壁紙の画像ファアイルです。

画像ファイルを選択するとメニューが表示されるので、「Set background」を選ぶことで壁紙を変更することができます。


この壁紙は自分で作ることもでき、320×240ピクセルのjpgファイルで、最大ファイルサイズを150KBで保存し、「bgr」に入れておきましょう。
エミュレーターも利用可能! ファミコンはFPGAに進化
『EverDrive-64 v3』でもエミュレーターは動かすことができましたが、自分で設定しなければなりませんでした。しかし、『EverDrive-64 X7』ではあらかじめファミコンとゲームボーイ、そしてゲームボーイカラーに対応したものが導入されています。
このうちファミコンに関しては、最新のOS-V3.07で古いエミュレーターからFPGAベースのものにリプレイスされています。ちなみにこのファミコンのFPGAコアですが、デフォルトでは横長のアスペクト比になっています。プレイ中LボタンとRボタンを同時に押すことで、アスペクト比を変更することも可能です。


ゲームボーイとゲームボーイカラーのエミュレーターも試してみましたが、一部音切れが発生する場面もあったものの、概ね動作は良好と印象でした。わざわざNINTENDO64でゲームボーイを遊びたくなる場面はあまりないかもしれませんが、おまけ機能としてはまずまずですね。



使い勝手に大きな違いはないが中身は着実に進化
ということでざっくりとご紹介してきましたが、前モデルから大きく進化した部分はそれほど多いわけでは無いものの、着実に進化している部分も感じさせられる作りにもなっていました。リリースからそろそろ4年がたちますが、まだまだ現役で頑張ってくれそうです。
