HYPERKINより、ゲームボーイとゲームボーイカラー、ゲームボーイアドバンスに対応したレトロゲーム互換機『RetroN sq』が発売されました。海外ではひと足早くリリースされており、レビューも各所で見ることができますが・・・・・・概ね不評の模様。果たしてその要因になっているのはなんだったのでしょうか?
今回はあえてフラットな状態で本機を触ってみて、感じたポイントについてレビューしていきたいと思います。
パッケージの中身と本体をチェック
パッケージには、本体とコントローラーのほか、HDMIケーブルと電源供給用のUSBケーブルとそのアダプター、マニュアルやシールが付属しています。
本体上部にはカセットスロットがあり、ゲームボーイ、ゲームボーイカラー、ゲームボーイアドバンスのカセットがそのまま差し込めるようになっています。本体側面前には、電源ボタンとリセットボタン、コントローラーを差し込むUSB端子が設置。本体側面後ろには、電源用のUSB端子とHDMI出力、アスペクト比を4:3または16:9に切り替えるスイッチがあります。
本体自体は意外と軽く、重量を量ってみたところ271gしかありませんでした。
『RetroN Jr.』発表から1年で変わったところ
この『RetroN sq』の元となるマシンの『RetroN Jr.』が発表されたのは、2020年1月。当時はSNSでも大きな話題を呼び、「こんなマシンを待っていたんだ」といった声も多く見かけることができました。つまり、潜在的なニーズがあったとも言えます。
このときに発表されていたスペックは、エミュレーションで720pの映像をHDMI出力することができ、USB Type-Cで電源供給できるというもの。この辺りはほとんど変わっていませんが、『RetroN Jr.』にはあったコンポジット出力はカットされたようです。また、コントローラーも有線になるのか無線になるのかは決定されていませんでした。
こうしてみると、今回発売された『RetroN sq』は、このときの発表から大きく変更されたわけではなく、ほぼそのままのコンセプトでリリースされたことがわかります。
『RetroN sq』の3つの不満点は?
まず、今回発売された『RetroN sq』の3つの不満点をピックアップし、それぞれについて見ていきたいと思います。
- 読み込みが遅い
- ゲームボーイアドバンスの対応がベータ扱い
- 絵が眠い
■①読み込みが遅い
最初の「読み込みが遅い」という点から見ていきましょう。本機はハードウェアによる互換機ではなく、ソフトウェアのエミュレーターを使ったものになっています。そのため、本体にカートリッジを差した後で直にやりとりがおこなわれるわけではなく、いったん本機の内部メモリーにROMデータを吸い出して、エミュレーターで動かしているようです。
この最初の読み取りがやや時間が掛かってしまうことがあります。ゲームボーイとゲームボーイカラーは許容範囲ですが、ベーター版のゲームボーイアドバンスの場合、まず読み取りの前にカートリッジの認識に時間が掛かってしまうということも。
『レトロフリーク』も、カセットを挿したときに強制的にROMの吸い出しが始まります。それを保存するかどうかはユーザーの意思に委ねられるものの、保存しないを選んだ場合でもカセットと直接やりとりをおこなうわけではなく、一時的に吸い出したROMデータをエミュレーターで動かしているようです。そのため、カセット内にスピーチチップを搭載した『燃えろ!!プロ野球』などでは、「プレイボール」などの音声がなりません。
『RetroN sq』の場合は、カセットの認識精度が甘いのか、時間が掛かっているように感じてしまいます。読み込みも『レトロフリーク』のような軽快さはなく、単純にゲームを遊びたいという気分をそぐものとなっています。
■②ゲームボーイアドバンスの対応がベータ扱い
読み込みの遅さとも連動しますが、ゲームボーイアドバンスの対応がベータ扱いであるため、動作も保証されていません。いくつかのソフトをチェックしましたが、『ファイナルファンタジー タクティクス アドバンス』のように、カセットの読み込みが終わった後で動かないタイトルもありました。
また、一見上手く読み込めたように見えても、『MOTHER 1+2』の『マザー2 ギークの逆襲』のデモ画面を見ている途中で画面が真っ暗になり音だけが鳴りつつけるということもありました。
『RetroN sq』はファームウェアも公開されており、こちらのアップデートにより今後改善されていく可能性もあります。
●RetroN sq ファームウェア アップデートの解説ページ
https://worldgameexpress.myshopify.com/pages/retron-sq
ファームウェアのアップデートは、サイトからファイルをダウンロードした後で本体に刺さっているSDカードにファイルを入れて行います。このSDカードにファームウェアのファイルを移動するときに、別途「USB Image Tool」というツールをダウンロードし、それを利用してファイルの移動を行わなければならないという、やや手間が掛かってしまいます。
■③絵が眠い
互換性についてはファームウェアの更新で改善されそうですが、それよりも何よりも目に付いたのが絵の眠さ。まるで、240pの映像を出来の悪いアップスキャンコンバーターで無理矢理720pに引き延ばしたかのような感じに見えてしまいます。
せっかくエミュレーターを利用しているんだから、1080pとかで出力すればいいだろと思いがちですが、コストダウンのためか出力される絵に関しては今ひとつとなってしまっています。ゲームボーイアドバンスに完全に対応仕切れいていないところも、もしかしてコストダウンでハードに制約ができているのが理由かもしれません。
裏技ではないですが、本機のUSB端子にキーボードを接続して、F1キーを押すことで内蔵されているマルチエミュレーター『RetroArch』のメニューを呼び出すことができます。絵の眠さは改善できませんが、フレームレートやアスペクト比などいくつかの項目は変更が可能です。しかし、残念ながらこれらの変更はテンポラリーで保存されないため、毎回同様の設定を行う必要があります。
ためしに、以前ご紹介した『mClassic』を本体に接続して使用してみたところ、出力側の映像が720pであるためか、思ったほどの効果は得ることができませんでした。
まとめ:廉価機として考えればそれほど悪くはないかも?
ある意味、ユーザーが理想としているものは、Analogueの『Pocket』のように、ハードウェアをFPGAで再現した高価な互換機や、あるいは実機のゲームボーイアドバンスを改造した『GBAConsolizer』のようなものかもしれません。これらはゲームを遊ぶときのストレスもなく、グラフィックも今風にハイレゾで楽しむことができます。
しかし、HYPERKINはそうした高級思考のメーカーではなく、大衆が購入しやすい安価な互換機を提供することをビジネスにしています。今回はその理想としているイメージと、実機とのギャップがやや大きく感じてしまったのが不満の理由となっているのでしょう。
ゲームボーイ関連を実行する環境を多く持っている人にとっては不要かもしれませんが、ある程度お手軽にHDMI出力してゲームボーイ関連ソフトが遊べるのはそこそこのメリットでもあるため、それほど悪いハードというわけではありません。