Nintendo Switchなど多くのユーザーがいるゲーム機では、コントローラーに触っていないにもかかわらずキャラクターが勝手に動いてしまう、いわゆるドリフトと呼ばれる問題が発生する場合があります。これは、ジョイスティック部分が摩耗してしまったことから起こる現象です。
こうしたゲーム機では、、電気抵抗を利用してX軸とY軸の位置を決定する「ポテンションメーター構造」がジョイスティック部分に採用されています。それが摩耗してしまい、ドリフトが発生するというわけですね。
ちなみに、Steam Deckのジョイスティックにも「ポテンションメーター構造」が採用されており、同じ問題が発生する可能性があります。そこで海外のユーザーの間で話題になっていたのが、ドリフトが発生しないジョイスティックに交換するという改造です。
実際にアマゾンでパーツを入手して交換してみたので、今回はそのレポートをお届けします。
アマゾンでGuliKitの交換パーツを入手
今回入手したのは、GuliKitから発売されている「電磁ジョイスティックモジュール」です。こちらのジョイスティックでは、可動部品がない「ホール効果センサー」が採用されています。そのため構造的に摩耗しにくく、ドリフトも発生しません。
日本のアマゾンでもいくつか同じ商品が売られていますが、値段は結構バラバラでした。海外では29ドルほどで売られているため、それに近い金額のものを選ぶといいでしょう。今回は3999円で売られていたものを入手しています。
●GeeekPi GuliKit (No Drifting) Steamデッキ用電磁ジョイスティックモジュール、Steamデッキ用ジョイスティック交換サムスティック部品修理キット
3999円

現状対応しているのはタイプAのみ
実際にこの交換パーツを入手する前に、チェックしておかなければいけないポイントがあります。それが、Steam DeckのコントローラーIDです。Steam Deckのジョイスティックは、タイプAとタイプBの2種類が存在します。GuliKitのジョイスティックもそれぞれのタイプに合わせて交換する必要があるのです。
タイプBのSteam DeckにタイプAのジョイスティックを取り付けた場合、静電容量式タッチセンサーが機能しなくなります。この静電容量式タッチセンサーは、ジョイスティックに触れただけでボタンを押した状態になる設定で使用するものですが、あまり利用頻度は高くなさそうとはいえ、無いよりはあった方がいい機能といえるでしょう。
ちなみに1月現在、GuliKitから発売されているものがタイプAのみで、タイプBに対応したものは後日発売される予定となっています。つまり、現状入手可能なものは、タイプAに対応したもののみということになりそうです。
Steam Deck側でコントローラーIDを調べるときは、設定からシステムを選び、その中にあるSteamdeck コントローラ IDの部分を見ます。

「MEDA」から始まる場合はタイプA、「MHDA」から始まる場合はタイプBです。今回改造するSteam Deckは日本でも入手が可能になった昨年末に入手したものですが、コントローラーIDを調べてみたところ、タイプAであることがわかりました。
●「MEDA」から始まる場合…タイプA
●「MHDA」から始まる場合…タイプB
せっかく対応しているならということで、今回の改造に踏み切ってみることにしました。
事前準備~ケースを開ける
実際に作業を行う前に、いくつか事前準備をしておきます。本体を開けるためのプラスドライバーや分解用のツールキットを用意しておくといいでしょう。ドライバーはサイズが合わなかったり、ネジがうまく回せないときのために数本用意しておくといいかもしれません。
また、ネジを外したあとの殻割りがかなり大変なので、ケースをこじ開けるツール類は必須です。途中でハンダの作業も入るので、ハンダごてなども用意しておきましょう。すべての準備が整ったら、本体をシャットダウンして電源を切り、ネジを外していきます。また、あらかじめmicroSDカードも抜いておきます。

本体背面側には8ヵ所ネジが取り付けられています。中央の4本は短め、4角は長めのネジが使われています。

ネジを外したら、分解用ツールを使ってケースをこじ開けます。これが、事前にチェックしていた情報とは異なり、かなり苦戦しました。なんだかんだあった末、ようやくケースをこじ開けることができました。
ネジを外すときもそうですが、なかなか外れないときやケースが開けられないときは、焦らずじっくりと作業を進めていくということが大事ですね。

オリジナルのジョイスティックを取り外す
オリジナルのジョイスティックは、左右それぞれ3本のネジで固定されています。まずはリボンケーブルを取り外してから、ネジを外してジョイスティックも取り外していきましょう。片方が終わったら、もう片方も同様の作業を行います。


ここからハンダによる作業が入ります。まず、元のジョイスティックに付けられているハンダ付けされたケーブルを外していきます。無事外し終わったら、GuliKitの方にハンダで取り付けていきます。左右ハンダ付けが終わったら、Steam Deck本体に取り付けましょう。


ちなみにリボンケーブルを戻すときは、白いラインが横に揃うまで差し込むことを意識するといいでしょう。


ジョイスティックのキャリブレーション
インストール自体はこれで終わりです。しかし、最後にキャリブレーションを行う必要があります。
まず、本体の電源を入れます。起動が終わったら、GuliKitのジョイスティックにある小さなボタンを、左右それぞれ押します。このボタンはキャリブレーションを行うためのものなので、押した後はジョイスティックに触らないようにします。

次にデスクトップモードで再起動して、コンソールを立ち上げましょう。
ここでコマンドを入力するのですが、以前は「thumbstick_cal_v1_1」をひとつ入力するだけでしたが、3.3以降のアップデートでそのコマンドが利用できなくなりました。そこで、いくつかステップが追加で必要になります。結構入力する文字列が多いので、可能ならキーボードを取り付けて作業を行うことをオススメします。
①コンソールでディレクトリーを作成するために、下記の文字列を入力します。
mkdir -p ~/.local/bin
②次に、パーミッションが変更出来る場所にコピーします。
cp /usr/bin/thumbstick_cal ~/.local/bin/thumbstick_cal
③thumbstick_calのパーミッションを変更して実行可能にします
chmod +x ~/.local/bin/thumbstick_cal
④最後にキャリブレーションのコマンドを実行します
~/.local/bin/thumbstick_cal
キャリブレーションのコマンドを実行したら、何やら文字列が表示されます。ステップ1は、Aボタンもしくはキーボードのエンターを押せばOKです。

ステップ2では、左右のジョイスティックを、それぞれ順番に360度ぐりぐり回してから、Aボタンまたはエンターキーを押します。
これでキャリブレーションは終了! ……といいたかったところなのですが、なぜか左側だけがエラーに!? 何度やっても同じ結果だったため、ふたたび中身をチェックしてみることに。

よくよく見てみると、左側だけリボンケールを取付け忘れていたことが発覚。こちらをしっかりと取り付けたあと、ふたたびキャリブレーションをしたところ、問題なく設定が完了しました。
この時点でホタンのネジはすべて締めて元に戻しておき、ゲームモードで再起動します。

ゲームモードでも調整&動作チェック
ゲームモードの設定からコントローラーを選び、キャリブレーション&詳細設定を選びます。ジョイスティックでデッドゾーンの設定をします。デフォルトでは8800ぐらいだったと思いますが、今回は5500ぐらいにしてみました。

次に、静電容量式タッチセンサーがしっかりと機能しているか確かめてみることに。今回は『ボーダーランズ3』を起動して、左右のジョイスティックのタッチに、右トリガーを割り当ててみました。
これでジョイスティックに触れただけで銃が撃てれば問題なしということになります。というわけで結果は特に問題はありませんでした。

続いて、ジョイスティックが普通に使えるかチェックしてみることに。こちらは、『タイタンホール2』を10分程プレイしてみました。特に操作性で違和感を覚えることもなく、快適にゲームを遊ぶことができました。


こうした改造は、保証が受けられなくなるなどいくつかリスクをはらんでいるため、必ずしも万人おすすめできるわけではありません。しかし、そうしたことを踏まえて改造してみたいという人は、参考にしてみてください。