EmuDeckの強力な対抗馬となるか? Steam Deckでエミュレーター環境を簡単に構築できるRetroDECKを試す

EmuDeckの強力な対抗馬となるか? Steam Deckでエミュレーター環境を簡単に構築できるRetroDECKを試す

話題のゲーミングUMPC『Steam Deck(スチームデック)』でエミュレーター環境を作るときに、真っ先に試したのが『EmuDeck』でした。こちらはたしかに様々なエミュレーターを一括で入れてくれて便利なのですが……いかんせ、ROMの数だけ「非STEAM」のリストが膨大になってしまいます。

EmuDeckの強力な対抗馬となるか? Steam Deckでエミュレーター環境を簡単に構築できるRetroDECKを試す
▲『EmuDeck』では、「非STEAM」に表示されるリストがどうしても汚く見えてしまう。1本ずつ調整していくのもかなり大変。

それだけならまだしも、ゲームタイトルやアートワークが間違ったものが設定されてしまったり、あるいはアートワークがないさみしいリストが何でしまうなど、データがまとめられているといよりはとっちらかっている印象の方が強くなってしまいます。

そこで試してみたのが、『RetroDECK』です。

●RetroDECK公式サイト
https://retrodeck.net/

EmuDeckの強力な対抗馬となるか? Steam Deckでエミュレーター環境を簡単に構築できるRetroDECKを試す

多数のエミュレーターをセットアップできるという意味では、『RetroDECK』と『EmuDeck』は似ているように思われるかもしれませんが、実際はその中身や仕組みはまったく異なっています。

『EmuDeck』はエミュレーター用アプリというよりも、どちらかというとバラバラになっている各種エミュレーターをまとめてセットアップできるインストーラーのような存在です。それに加えて、ゲームのROMをアプリのように登録できる『Steam ROM Manager』を組み合わせることで利用する仕組みになっています。

とくに『Steam ROM Manager』がややくせ者で、こちらが「非STEAM」のリストをROMの数だけ膨大に膨らませてとっちらかす要因となってしまっています。

また、『Batocera』と呼ばれるものもありますが、こちらはSDカードなどから個別に起動するか現在のOSを置き換える必要があります。とくに『Steam Deck』で利用するときはSteamOSの機能にアクセスできなくなるという致命的な問題があります。

一方の『RetroDECK』では、アプリはひとつでその中に各エミュレーターが同梱されています。ゲームのROMも「非STEAM」リストに追加されることはありません。セットアップさえしてしまえば、指定した場所のROMをリストに表示してくれてゲームを遊ぶことができます。

また、いくつかの機能も用意されており、今後はクラウド上にゲームのセーブができたりオンライン対戦にも対応する予定となっています。

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RetroDECKのインストールは簡単

これまでいくつか「非STEAM」アプリのインストールを行ってきた人なら、ほとんど迷うことなくセットアップすることができます。

まずは『Steam Deck』をデスクトップモードで起動してストアアプリの『Discover』で「RetroDECK」を検索してインストールしましょう。

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インストールが終わったら、ウィンドウズメニューのようなところから「Games」→「RetroDECK」とたどっていき、右クリックで「Add to Steam」を選びます。

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Steamアプリを起動して「RetroDECK」を選び、お好みでアートワークを設定しましょう。

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『RetroDECK』自体のセットアップはこれで終わりです。

BIOSとROMを配置

『RetroDECK』のセットアップが終わったら、エミュレーターを動かすために必要なBIOSとゲームのROMをmicroSDカードにコピーします。biosを設定するパスは以下の通り。

/run/media/(SDカードの名前)/retrodeck/bios

PS1、PS2、メガCD、セガサターンのBIOSは、該当フォルダーに下記の名前で入れておきます。

●PlayStation
scph5500.bin

●PlayStation 2
scph10000.bin

●メガCD
bios_CD_J.bin

●セガサターン
sega_101.bin

Nintendo Switchのエミュレーターである『Yuzu』を利用するときは、下記のフォルダにふたつのkeyファイル(prod.keysとtitle.keys)を入れておきます。registeredは特に入れておかなくても問題ありません。

/run/media/(SDカードの名前)/retrodeck/bios/switch/keys

■Nintendo Switch(Yuzu)のBIOS関連のフォルダ構成
~/retrodeck/bios/switch
├── keys
│ ├── prod.keys
│ └── title.keys
└── registered
├── 02259fd41066eddbc64e0fdd217d9d2f.nca
├── 02582a2cd46cc226ce72c8a52504cd97.nca
├── 02b1dd519a6df4de1b11871851d328a1.nca
├── 0319d27ebdc4f4556b0ca948e2ccc081.nca
├── 0450e376470f98b8a8a065787cfa410a.nca
├── other 217 files…
├── 06e8137a42e5dc2bbb938d49e3bc8759.nca
├── fce10ab27f4646b2ef9c8e1b13aba21e.nca
└── fd0d23003ea5602c24ac4e41101c16fd.nca

さらに詳しい情報は下記を参考にしてください。

●BIOSとファームウェアについて
https://github.com/XargonWan/RetroDECK/wiki/BIOS-and-Firmware

ゲームのROMは、下記のパスの中にあるゲームごとのフォルダに入れておきます。ゲームによっては圧縮ファイルも読み込めるので、対応している拡張子もコピーする前にチェックして置いた方がいいでしょう。

/run/media/(SDカードの名前)/retrodeck/roms/

●ROMのパスと対応している拡張子
https://github.com/XargonWan/RetroDECK/wiki/Emulators:-Folders-&-File-extensions

また、複数のディスクメディアを切り替えて遊ぶゲームなど、特殊な配置をしなければいけないゲームも存在します。そちらについては、下記のページを参考にしてみてください。

●一部特殊なROM配置などについて
https://github.com/XargonWan/RetroDECK/wiki/How-to%3A-Manage-your-games

BIOSとROMが配置できたら、この状態でゲーム自体はプレイ可能になります。遊ぶときはゲームモードから『RetroDECK』を選んでゲームを選択すればOKです。

EmulationStation DEの表示をカスタマイズする

ここから先は完全なるオプションの設定ですが、時間があるときにでもやっておくとより快適に『RetroDECK』でのゲームプレイが楽しめるようになります。

『RetroDECK』はエミュレーターとROMを結びつけて起動できるマルチラウンチャーの『EmulationStation DE』を利用しています。『EmulationStation DE』は中華エミュ機などでもすっかり見慣れたラウンチャーですが、『RetroDECK』でもカスタマイズして見た目を整えていくことができます。

『RetroDECK』を起動して、『Steam Deck』保体右上にある「三」ボタンを押すとMAIN MENUが表示され、主に見た目に関する様々な設定ができるようになります。

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表示するテーマを変更する

テーマを変更するときは、「UI SETTINGS」→「THEME SET」を選びましょう。

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▲「ALEKFULL-NX-LIGHT」
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▲「ART-BOOK-NEXT」
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▲「MODERN-DE」
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▲「RBSIMPLE-DE」
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▲「RETROFIX-REVISITED」

ゲームごとのアートワークが設定出来る「SCRAPER」

『RetroDECK』のMAIN MENUで一番トップに表示されるのが「SCRAPER」です。こちらは、リストを選んだときに表示するゲームのアートワークを設定することができます。タイトルに合わせてゲームの画像やロゴマークが表示されるようになるだけではなく、しばらく選んだママにしていると動画も自動で流れます。

さらに、設定した時間まで放置していると(デフォルトでは5分)、スクリーンセーバーとしてROMのゲーム映像が自動で流れます。

「SCRAPER」ではさらにいくつかの項目が並んでいますが、ここで重要になるのが「SCRAPE FROM」と「SCRAPE THESE SYSTEMS」です。

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データベースの選択

「SCRAPER」では、ROMのファイル名などを元に『THEGAMESDB』と『SCREENSCRAPER』ふたつのデータベースから検索してデータを取得しています。つまり、このふたつのデータベースに登録されていないとうまく画像の設定画出来ません。また、独自のファイル名にしているときもデータベースに引っかからないので、設定されません。

この「SCRAPE FROM」は、どちらのデータベースを利用するか選択する項目になります。

そのため、アートワークをある程度設定したいときは、データベースにある名前に変更しておいたほうがいいでしょう。『SCREENSCRAPER』は情報が豊富ですが、無料で作成出来るアカウントにログインしないと検索しにくいので注意しましょう。

●THEGAMESDB
https://thegamesdb.net/

●SCREENSCRAPER
https://www.screenscraper.fr/

アートワークを設定する機種を選択する

「SCRAPE THESE SYSTEMS」は、ROMを配置したゲームの中から、どの機種について実行するか選ぶことができます。最初は全選択すればいいのですがかなり時間が掛かります。そのため、追加変更する場合は機種単位でチェックを入れることをオススメします。

「SCRAPE THESE SYSTEMS」で機種にチェックを入れた後、MAIN MENUに戻り一番下にある「START」を選ぶと設定が開始されます。

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MAIN MENUから「SCRAPE THESE GAMES」を選び、イメージがないものなど設定する項目をさらに絞り込むことも可能です。

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また、「OTHER SETTINGS」でリージョンと言語が選べるので、それぞれ「JAPAN」と「日本語」を選んでおくといいでしょう。

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まだまだ発展登場だが今後にも期待したい

というわけで、ざっくりと『RetroDECK』の紹介を行ってきました。公式に「完全なリリースではなく、アクティブな開発」と書かれているように、まだまだ完全では無い部分もいくつかあります。たとえば、『Steam Deck』ではかなりいいパフォーマンスでゲームが楽しめるWii Uエミュレーターの『CEMU』には、現時点で対応していません。

とはいえ、現時点でのパフォーマンスも十分すぎるレベルには達しており、今後さらなる機能の追加により不動のものになっていくことも考えられます。なにはともあれ、『Steam Deck』でエミュレーターを楽しみたいときの選択肢のひとつとして候補に挙げておいてもいいのではないでしょうか?

それでは、よき『Steam Deck』ライフを!

ABOUT US
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高島おしゃむ
ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。