PS Vitaの古いブラウザーがTLS 1.3に対応! HTTPS接続を改善する非公式ツール「tls_fixer 0.1」公開

PS Vitaの古いブラウザーがTLS 1.3に対応! HTTPS接続を改善する非公式ツール「tls_fixer 0.1」公開

2011年に発売されたソニーの携帯ゲーム機「PlayStation Vita(PS Vita)」で、新しい暗号化通信方式のTLS 1.2/1.3を利用できるようにする非公式ツール「tls_fixer 0.1」が、2026年10月17日に公開されました。開発したのは、devnoname120氏(Paul)です。

このツールは、PS Vitaに搭載されているWebブラウザーや一部のアプリの通信機能を改善するものです。古い暗号化通信方式では接続できなかったWebサイトやオンラインサービスについて、接続できるようになる可能性があります。

●tls_fixer 0.1(GitHub Releases)
https://github.com/devnoname120/vita_tls_fixer/releases/tag/v0.1

●vita_tls_fixer(GitHub)
https://github.com/devnoname120/vita_tls_fixer

●ファームウェア互換性情報
https://github.com/devnoname120/vita_tls_fixer/blob/main/docs/tls13-firmware-support.md

なぜPS Vitaでは現在のWebサイトが開けないことがあるのか?

PS VitaにはWebブラウザーが搭載されており、インターネット上のWebサイトを閲覧することができます。しかし、発売から長い年月が経過した現在では、アクセスしようとしてもエラーが発生し、ページを開けないことがあります。

その原因のひとつが、インターネットで使われている暗号化通信方式の変化です。

現在、多くのWebサイトでは「HTTPS」と呼ばれる仕組みを使って通信内容を暗号化しています。この暗号化通信を安全に行うための技術が「TLS(Transport Layer Security)」です。

TLSにはいくつかのバージョンがあり、現在ではTLS 1.2やTLS 1.3が広く使われています。一方、古いゲーム機などでは、搭載されている通信機能が新しい方式に対応していないことがあります。

たとえば、接続先のWebサイトがTLS 1.2以上での通信を要求していても、ゲーム機側がその方式に対応していなければ、安全な通信を開始することができません。その結果、Webサイト自体は正常に公開されていても、古い機器からはアクセスできなくなってしまうのです。

TLS 1.3に対応する新しい通信機能を追加!

今回公開された「tls_fixer 0.1」は、こうした問題を改善するために開発されたツールです。

暗号化通信の処理には「Mbed TLS 4.2.0」などの技術が採用されており、PS Vitaのブラウザーと、ソニーの「sceHttp」と呼ばれる通信機能を利用する対応アプリで、TLS 1.2/1.3を使用できるようにします。

特徴的なのは、PS Vitaのブラウザーそのものを新しくするのではなく、暗号化通信を担当する部分を置き換える仕組みになっていることです。URLの処理やリダイレクト、Cookieなどの基本的な機能は従来の仕組みを利用しながら、TLSによる通信処理を新しいものに変更します。

これにより、従来は暗号化通信の段階で接続に失敗していたWebサイトなどでも、正常に通信できる可能性があります。

また、暗号化通信では、接続先が信頼できる相手かどうかを確認するために「証明書」と呼ばれる仕組みが使われています。古い機器では、この確認に必要な証明書の情報が更新されていないことも、接続エラーの原因になります。

「tls_fixer 0.1」では、ソニーの証明書と、Mozillaなどが提供する証明書の情報を組み合わせて利用する機能も搭載。導入時に新しい証明書の取得を試み、取得できなかった場合にはツールに同梱されている証明書を使用する仕組みになっています。

ブラウザー向けやシステム向けなど、必要な機能を選んで導入可能

「tls_fixer 0.1」は、VitaShellから「tls_fixer.vpk」をインストールして利用します。起動後は、導入する機能に応じて4種類のモードを選択することができます。

  • Full: ブラウザー向け、システムHTTP向け、証明書をまとめて導入
  • Browser plugin only: ブラウザー向けの通信機能のみ導入
  • System plugin only: 対応アプリ向けのシステムHTTP通信機能のみ導入
  • Certificates only: 証明書のみ導入

初めて導入する場合は、すべての機能をまとめて導入する「Full」が推奨されています。インストールが正常に完了すると本体が自動的に再起動し、その後も機能が有効な状態になります。

なお、証明書のみを導入した場合は、TLSの通信処理を置き換えるプラグインは有効になりません。

開発者は実機でTLS 1.3接続やPlayStation Storeへのサインインを確認

開発者によると、ファームウェア3.60を搭載した市販のPS Vita実機で動作検証が行われており、ブラウザーからのTLS 1.3接続や、証明書の検証を伴うTLS 1.2/1.3通信が確認されています。

さらに、PlayStation Storeへの通常のサインインにも成功したと報告されています。ただし、サインインには本体に紐付けられたアカウントと、PlayStationの機器設定パスワードが必要です。また、これはPlayStation Networkのすべての機能が利用できるようになるという意味ではありません。

互換性については、ファームウェア3.60から3.74までの各バージョンを対象とした情報も公開されています。ただし、こちらは主にプログラムやファームウェアのデータを用いた静的な検証であり、すべてのバージョンで実機動作が確認されているわけではありません。

このほか、通信状態を確認できる別アプリ「Vita TLS Check」も公開されています。こちらはTLSの各バージョンで接続できるかどうかや、証明書の検証結果などを確認するためのもので、「tls_fixer」を導入する前後で通信状況を比較することも可能です。

すべてのWebサイトに対応するわけではないので注意!

今回の「tls_fixer 0.1」は、PS Vitaの通信機能を現代のインターネット環境に近づける興味深いツールですが、導入すればすべてのWebサイトが閲覧できるようになるわけではありません。

現在のWebサイトでは、暗号化通信だけでなく、HTMLやCSS、JavaScriptなどの技術も進化しています。そのため、HTTPSでの接続に成功しても、PS Vitaの古いブラウザーではページが正常に表示されなかったり、一部の機能が動作しなかったりする可能性があります。

また、独自の通信処理を利用するアプリなどは対応範囲外となる場合があります。新しい通信処理ではTLS 1.0/1.1もサポート対象外です。

さらに、本ツールを導入するには、taiHENが利用できる改造済みPS Vitaが必要になります。ソニー公式のシステムアップデートではなく、システム側の通信処理に変更を加える非公式ツールであるため、互換性の問題や予期しないトラブルが発生する可能性もあります。導入する場合は、GitHubに掲載されている説明や注意事項を確認したうえで、自己責任で行う必要があります。

PS Vitaの発売から約15年。ブラウザー自体の性能や機能には限界があるものの、古い通信方式が原因で利用できなくなっていた接続先へ、再びアクセスできる可能性が生まれたことは注目したいポイントです。今後、実機での動作検証が進むことで、どのようなWebサイトやアプリが利用できるようになるのかも明らかになっていきそうです。

ABOUT US
アバター画像
retrogamer