PS2エミュレーター『PCSX2 2.8.0』がリリース!描画処理を大幅改善、WindowsではDirect3D 12が標準に

PS2エミュレーター『PCSX2 2.8.0』がリリース!描画処理を大幅改善、WindowsではDirect3D 12が標準に

PlayStation 2エミュレーター「PCSX2」の開発チームは2026年8月28日、最新バージョンとなる『PCSX2 2.8.0』をリリースしました。

●PCSX2公式ダウンロードページ
https://pcsx2.net/downloads/

前回のメジャーアップデート「PCSX2 2.6.0」から約6カ月ぶりとなる今回のリリースでは、新機能の追加だけではなく、PS2の複雑な描画処理を再現するためのグラフィックス関連コードに大幅な改良が加えられています。

『PCSX2』は、Windows、Linux、macOS向けに開発されている無料・オープンソースのPlayStation 2エミュレーターです。ゲームを動かすにはPlayStation 2本体から吸い出したBIOSなどが別途必要になります。

『Need for Speed』などで描画処理を大幅に削減

PCSX2 2.8.0で特に力が入れられているのが、パフォーマンスとグラフィックス周辺の改善です。そのひとつとして、「Draw Buffering」と呼ばれる新たなオプションが追加されました。

PlayStation 2のゲームの中には、ひとつひとつの三角形に対してテクスチャーや反射、ブレンディングなどの描画処理を切り替えながら実行するタイトルがあります。こうしたゲームではPC側で大量のDraw Callや処理の切り替えが発生し、エミュレーションの負荷が高くなる場合がありました。

今回追加されたDraw Bufferingでは、こうした描画をまとめて処理することでDraw CallやBarrierの発生回数を削減しています。

公式が公開しているGS Dumpを使った検証例では、『Need for Speed: Underground 2』のDraw Callが5,624回から2,828回に減少。

ほかにも、

  • 『Stuntman』:4,572回→1,904回
  • 『Need for Speed: Most Wanted Black Edition』:4,189回→1,764回
  • 『Armored Core: Nine Breaker』:3,921回→1,521回
  • 『Need for Speed: Carbon』:4,956回→2,976回

といった削減結果が報告されています。

これらは実際のゲームのフレームレートを直接比較した数値ではなく、GS Dump上でのDraw Callなどを比較したものですが、描画負荷が高かったタイトルでは大きな効果が期待できそうです。

また、Draw Bufferingそのものにも追加の最適化が施されており、不要な環境コピーの削減やポインター処理の変更によって、特に性能の低いCPUでGS側のCPU負荷を抑える改良も行われています。

WindowsではDirect3D 12が標準レンダラーに

Windows環境での大きな変更として、NVIDIAおよびAMD製GPUではDirect3D 12が標準レンダラーとして使用されるようになりました。

PCSX2開発チームによると、Direct3D 12はここ数回のリリースでパフォーマンスと互換性が大きく改善され、現在ではVulkanと同等の水準になったとのこと。

これに伴いDirect3D 11は「Legacy」に分類されています。ただしDirect3D 11のサポート自体が終了するわけではなく、ほかのレンダラーが利用できない場合や問題が発生する環境向けとして、今後もアップデートは続けられる予定です。

さらにRasterizer Ordered Views(ROV)への対応や、Direct3D 12のEnhanced Barriers APIへの対応なども行われています。

ROVは、PS2ゲームで多用されている半透明処理などをより正確な順序で描画するための仕組みで、ブレンディング精度を上げたときのパフォーマンス低下を抑えることにも利用されています。

『ブレス オブ ファイアV』や『FF X-2』などの表示問題も修正

PCSX2 2.8.0では個別タイトルで発生していたグラフィックスの問題も多数修正されています。たとえば『ブレス オブ ファイアV ドラゴンクォーター』では、パレットの扱いに関する修正が行われ、会話やメニューの文字に黒い穴のようなノイズが発生していた問題が改善されています。

『ファイナルファンタジーX-2』では、テクスチャーキャッシュの無効化処理を修正したことで、ロードメニューの文字表示が壊れる問題を修正。同じ変更によって『Battle Engine Aquila』で発生していた地形の表示問題も改善されています。

このほかZ-fightingを改善する深度処理の変更も行われており、『Need for Speed: Underground 2』『大神』『Tony Hawk’s Pro Skater 3』などが公式の改善例として紹介されています。

Windows版にはFFmpegを同梱

使い勝手の面でもいくつか大きな変更が行われました。Windows版では今回からFFmpegがPCSX2本体に同梱されています。PCSX2にはゲームプレイを録画するビデオキャプチャー機能がありますが、これまでは利用前にFFmpegを別途用意する必要がありました。2.8.0ではこの作業が不要になります。

ハードウェアエンコーダーとしてAMD AMF/VCE、Intel QSV、NVIDIA NVENC、Media Foundation、Vulkan Videoなどを用意。ソフトウェア側でもH.264やH.265、AV1など複数のコーデックが利用できます。

また、オンスクリーンディスプレイもカスタマイズ可能になり、フォント、表示位置、スケール、マージンなどを変更できる専用設定が追加されています。フレームタイムグラフの表示内容も細かくなりました。

メイン画面のステータスバーも変更され、音量や速度制限を直接操作できるほか、使用中のGPU、レンダラー、内部解像度倍率なども確認できるようになっています。

macOSでもEyeToyに対応

周辺機器関係では、macOS版でEyeToyカメラへの対応が追加されました。これによってWindows、Linux、macOSの3つの対応OSすべてで、EyeToyを利用できる環境が整ったことになります。

さらにTrain MasconやMaster Controllerへの追加対応、Olympus Camera、Olympus Turbo MO miniEX IVといったUSB機器への対応も追加されています。

フルスクリーンUIからゲームのカバー画像をダウンロードできる機能や、RetroAchievements関連画面の改善など、操作性に関する変更も多数盛り込まれています。

動作要件も更新

一方で注意しておきたいのが、PCSX2 2.8.0に合わせて推奨ハードウェア要件が更新されたことです。

公式が示している「Suggested Minimum」では、CPUがIntel Core i5-4570KまたはAMD Ryzen 5 1500X、GPUがNVIDIA GeForce GTX 750 Ti、AMD Radeon RX 460、Intel Arc A380となっています。

より負荷の高い設定向けの「Suggested Heavy」では、CPUにIntel Core i5-12400またはAMD Ryzen 5 5600、GPUにはGeForce RTX 4060 8GB、Radeon RX 6600 XT、Intel Arc B580が挙げられています。

これはPCSX2そのものが一律に重くなったという意味ではなく、コアやグラフィックス処理の改良に合わせて、現在の機能や設定を想定したハードウェア要件を見直したものです。

PCSX2 2.8.0は単なる機能追加版というより、PS2特有の複雑な描画処理の再現方法そのものに多数の手が入った大型アップデートといえそうです。

特にこれまで負荷の高かったタイトルや表示問題が残っていたゲームを遊んでいる人は、今回のアップデートでどこまで改善されたのか試してみる価値がありそうです。

via.Reddit

ABOUT US
アバター画像
retrogamer