初代PlayStation向けに発売されたナムコのレースゲーム『RAGE RACER』を、現代のPC上でネイティブ実行するプロジェクト「Rage Racer PC」の最新版「0.6-alpha」が公開されました。
●Rage Racer PC 0.6-alpha — GitHub Releases
https://github.com/khasinski/rage-racer-pc/releases/tag/0.6-alpha
●Rage Racer PC — GitHub
https://github.com/khasinski/rage-racer-pc
開発を手掛けているのはChris Hasiński氏。GitHub Releasesでは2026年8月28日に0.6-alphaが公開されており、Windows x86-64、Linux x86-64、macOS arm64向けのZIPファイルが配布されています。
本サイトでは8月13日に、PAL/欧州版『RAGE RACER』の全1202関数が一致し、製品版とバイト単位で同じ実行ファイルを再構築できるようになったデコンパイルプロジェクトについて紹介しました。
ただし、その時点ではあくまでもデコンパイル上の大きなマイルストーンであり、「WindowsやLinux上で直接遊べるネイティブPC版が完成したわけではない」とお伝えしていました。そこから約2週間。今回は、その先にあった実際のPC向けネイティブ移植が形になったことになります。
PS1の描画をそのまま再現するだけではない「Modern renderer」
今回の0.6-alphaで特に目を引くのが、新たに搭載された「Native modern renderer」です。このModern rendererでは、実深度バッファを使った描画をはじめ、ネイティブメッシュ、空の意味情報を利用した処理、ゾーン単位のライティング、マテリアル属性、反射表現、動的な車両シャドウなどが実装されています。
さらに、レース中に表示されるバックミラーもネイティブ化。READMEによるとModern rendererでは、バックミラー用に独立したカメラを用意し、コースや車両を別のカラー/深度ターゲットへ描画する仕組みになっています。
一方で、PS1互換の描画を行う従来の「Classic renderer」も残されており、プレイ中にF10キーを押すことでModernとClassicを切り替えることができます。
標準設定は16:9&内部解像度4倍、FXAAも有効
配布されている0.6-alphaでは、Modern rendererが標準設定になっています。初期設定は16:9表示、内部解像度4倍、VSync、リニアフィルタリング、FXAA、vibrant gradingという構成です。なお、ここでいう「内部解像度4倍」は4K出力を意味するものではありません。
Modern rendererでは内部解像度の倍率を変更できるほか、4:3/16:9表示、FXAAのオン/オフなども設定可能。16:9表示時には、HUDをワイド画面側へ移動させるための専用設定も用意されています。
約30年前のPS1向けタイトルを単にPC上で動かすだけではなく、現在のディスプレイ環境に合わせて映像面まで拡張しているところが、今回の移植の大きな特徴といえそうです。
ステアリングホイール入力やアナログ調整にも対応
レースゲームらしい機能として、ステアリングホイールへの対応も進められています。0.6-alphaではSDL経由の生ステアリングホイール入力を実装。ステアリング、アクセル、ブレーキの軸に加えて、ペダルの反転や各種ボタンなどを設定できます。
また、アナログ入力のレスポンス調整にも対応しており、デッドゾーンやサチュレーション、リニアリティなどを設定可能です。ホイール入力にはゲーム側のNeGcon用アナログ入力経路が利用されています。
PNG画像を使ったテクスチャ差し替えも可能に
さらに0.6-alphaでは、MOD関連の仕組みも用意されています。mod.tomlを利用することでPNG形式のテクスチャ差し替えやマテリアルのオーバーライドが可能になっており、オリジナルのゲーム内容をベースにしながら、見た目を変更していくための仕組みがすでに組み込まれています。
日本語関連では、日本発売版で使われていた車名や、プロローグコンテンツを選択するための設定も用意されています。ただし、この機能だけをもって日本版そのものへの完全対応を意味するわけではない点には注意が必要です。
ゲームデータは付属せず、初回起動時に自分でディスクイメージを指定
「Rage Racer PC」自体に『RAGE RACER』のゲームデータは含まれていません。初回起動時に、ユーザー自身が正規に入手したCUE、Track 01 BIN、またはCHD形式のディスクイメージを選択する仕組みになっています。
選択したディスクからModern rendererに必要なモデルやテクスチャ、空などのデータが自動的に変換されるため、Pythonを導入したり、外部のExtractorを使って事前にアセットを展開したりする必要はありません。
また、CD音源まで含めて利用する場合は、すべてのトラック情報を保持したmixed-mode CUEまたはCHDの使用が推奨されています。
Track 01 BINだけでもゲーム本体やFMV、Modern renderer用アセットは利用できますが、別トラックとして収録されているCDオーディオの情報までは含めることができません。
「デコンパイル完了」から、早くも実際に遊べるPC移植へ
8月13日に本サイトで紹介した時点では、PAL/欧州版『RAGE RACER』のゲーム本体705関数とSony PsyQライブラリ497関数、合計1202関数が一致し、コード部分が100パーセント一致するところまで到達していました。
しかし、PlayStation固有の描画や入力、サウンドなどをPC向けに置き換える作業は、まだこれからという段階でした。
それが約2週間後にはWindows、Linux、macOS向けのネイティブ移植として配布され、さらにModern renderer、16:9表示、内部解像度変更、FXAA、ホイール入力、テクスチャMODといったオリジナル版には存在しない機能まで実装されています。
もちろんバージョン表記はまだ「0.6-alpha」であり、完成版ではありません。また、ナムコ/バンダイナムコによる公式移植でもありません。
それでも、前回まで「ネイティブPC移植やMOD開発の足場」として紹介していたデコンパイル成果が、これほど短期間で実際に動作するPC版へ発展したという点では、かなり興味深い進展といえそうです。
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