ゲームキューブUS版『SoulCalibur II(ソウルキャリバーII)』を、x86-64環境向けに静的再コンパイルして動作させる非公式プロジェクト「Ring Out」の初となる一般公開版「v1.2.1」が、2026年8月24日にGitHubで公開されました。
●Ring Out GitHub
https://github.com/jackpoison-prog/RingOut
●Ring Out v1.2.1
https://github.com/jackpoison-prog/RingOut/releases/tag/v1.2.1
開発を行っているのはJack Poison氏(GitHub:jackpoison-prog)。これまでv1.0からv1.2までのタグは存在していたものの、いずれも内部向けで一般配布用パッケージは用意されておらず、今回のv1.2.1が初のパブリックリリースとなります。
Dolphinで普通にエミュレートするのとは異なるアプローチ
「Ring Out」の大きな特徴は、ゲームキューブエミュレーター「Dolphin」でゲームをそのまま実行するのではなく、『ソウルキャリバーII』のゲーム実行部分をあらかじめ別の形へ変換しているところです。
ゲームキューブではPowerPC系CPUが採用されていますが、「Ring Out」ではゲームディスク内にあるPowerPC向け実行ファイルをAhead-of-Time(AOT)方式でC言語へ変換。それをさらにx86-64向けのネイティブコードとしてコンパイルし、PC上で実行します。
一方ですべてをPC向けに置き換えているわけではありません。映像や音声、コントローラー入力、ゲームキューブのハードウェア機能などについては、Dolphinをベースにしたランタイムが担当する仕組みです。つまり、ゲームの実行部分には静的再コンパイルを利用し、その周囲をDolphin由来の環境が支える構成になっています。
開発者によると、現在は実行されるゲームコードについてインタープリターへのフォールバックを行わず、ネイティブコードとして実行できる状態になっているとのことです。ただし、これはプロジェクト側による動作報告となります。
対象はリンクが登場するゲームキューブUS版のみ
注意したいのは、現時点で対象になっているタイトルがゲームキューブUS版『SoulCalibur II』の特定ディスクに限定されていることです。
対応するディスクIDは「GRSEAF」。ゲームキューブ版では『ゼルダの伝説』シリーズのリンクがゲストキャラクターとして登場しますが、「Ring Out」が対象としているのもこのUS版です。PS2版やXbox版、ゲームキューブ日本版などに対応しているわけではありません。
また、「Ring Out」そのものにゲームデータやオリジナルのゲームコードは含まれていません。利用するにはユーザー自身が所有するゲームキューブ版のディスクイメージを用意する必要があります。
READMEで対応形式として挙げられているのは「.iso」「.gcm」「.nkit.iso」「.rvz」の4種類。デスクトップLinux版では初回起動時にディスクイメージを指定すると、必要なデータの展開とゲームモジュールの再コンパイルが行われます。
Vulkanや16:9、HDテクスチャなど多数の機能を搭載
PC上で動作させるための機能も多数盛り込まれています。開発者が現在実装済みとして挙げているのは、Vulkanによる描画をはじめ、内部解像度の変更、アンチエイリアス、異方性フィルタリング、16:9表示、HDテクスチャパック、コントローラーのリマッピング、セーブステート、フリーカメラ、FMV再生、チート機能などです。
さらにネットプレイではロールバック方式にも対応。開発者はテストした6470フレームにおいて、ふたつのクライアント間でゲーム状態がバイト単位で一致したと報告しています。
LinuxとSteam Deck向けパッケージを公開。Windows版はなし
v1.2.1では、デスクトップLinux用の「RingOut-1.2.1-linux-x86_64.zip」と、Steam Deck/SteamOS用の「RingOut-1.2.1-steamdeck-x86_64.zip」が公開されています。Steam Deck向けパッケージには事前にビルドされたランタイムが含まれているため、Steam Deck本体上でツールチェーンを使ってコンパイルする必要はありません。
ただし、ゲームディスクから生成されるゲームモジュールはSteam Deck用パッケージには含まれていません。こちらはデスクトップ環境側で自分のディスクイメージから構築したうえで、「game」フォルダと生成された再コンパイル済みモジュールをSteam Deck側へコピーする必要があります。
Steam Deck上でのパフォーマンスについては、開発者が対戦中に45~49fpsで動作すると報告しています。
一方、WindowsについてはREADME上で「Retired」とされており、現在Windows向けパッケージやCIは用意されていません。現時点で公式にサポートされているターゲットはLinuxとSteam Deckとなります。
ClaudeによるAI支援も明記
もうひとつ「Ring Out」で特徴的なのが、開発に生成AIが大きく利用されていることです。READMEのクレジットでは、Jack Poison氏がAnthropicのAI「Claude」の支援を受けながらプロジェクトを組み上げたことが明記されています。
さらにAIが、設定用オーバーレイやコントローラーリマッピング、チート画面、フリーカメラ、FMV置き換え処理、再コンパイラーのコード生成修正、パッケージングなど、コードの大部分を記述・デバッグしたと説明されています。一方で、方向性の決定やテストについては人間が行ったとしています。
今回公開されたv1.2.1では、内部版v1.2からディスパッチループ内の処理を最適化し、命令数を0.45パーセント削減。また、以前のパッケージで一部チート設定が有効になった状態で残っていた問題を修正し、すべて無効の状態で配布されるよう変更されています。
なお、「Ring Out」はあくまでも非公式のファンプロジェクトであり、バンダイナムコエンターテインメントや任天堂による公式移植ではありません。















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