シムシティ4【オールドPCゲームレビュー】

シムシティ4【オールドPCゲームレビュー】

※本文はリリース当時の記事に一部校正を加えたものです。

元祖箱庭型シミュレーションゲームの第4弾として、2003年に発売された『シムシティ4』。今作では町並みを含むグラフィックを大幅にグレードアップし、3D化を実現。一部ネットワークに対応したモードもあるなど、システム的にも目新しい強化がなされている。

シムシティ4【オールドPCゲームレビュー】
▲市長として最初にやることは、電力と水道施設の建設、住宅、商業、工業地区の区分け、道路の整備だ。しばらくたつと人々が徐々に移り住んでくる。

『シムシティ』といえば、PCのみならずコンシューマ機などでも発売されてきた人気作だが、そもそもこの作品自体を知らない人のためにちょっとだけ説明しておくことにしよう。このゲームを生み出したのは、ゲームデザイナーのウィル・ライト氏。最近も人生シミュレーションゲーム『シムピープル』を大ヒットさせるなど、大注目の人物である。

彼がその昔、いまやカルト的作品になってしまったゲーム『バンゲリング・ベイ』を開発していたときに、ゲームの世界で破壊された建物などが自動的に建て直されていくのを見ていてアイデアを思いついたのがそもそもの始まり。その後、ゲーム自体は何年もの間日の目を見ることはなかったのだが、同氏はこのゲームを世に送り出すために会社を新しく設立。ゲームは1989年に発売され、瞬く間に大ヒットとなったのである。

『シムシティ』の世界には、RCIと呼ばれる3つの要素があり、それぞれ住宅、商業、工業の需要を表している。プレーヤーは市長となり、住宅地区、商業地区、工業地区というような区分けを設定し、道路や電力などのインフラを整備しながら自分の都市を育てていくのだ。作り上げた都市がよりよい環境ならばどんどんRCIの需要が上がり人が増えていく。

逆にどんなにたくさんの建築スペースを取っていても、需要が低ければ建物が建たずに空き地のままになってしまう。都市は生き物という言葉がよく使われるが、それはまさにこのゲームにも当てはめることができる。それまで繁栄していた街が、時間がたつにつれて徐々に荒廃していったりということがあるのだ。

この都市の微妙な変化に気を配りながら、カンフル剤として建物や施設などを作り、バランスを取っていくというのがこのゲームのおもしろいところで、まさに箱庭的世界にちょっかいを出して盛り上げていくという感じである。

ちなみに、このゲームには市民を増やすなどの目標はあってもエンディングは存在しない。ゲームに止めどきというものがないので、ついつい遊び続けてしまうといったかなり中毒性の高いゲームといえるだろう。『シムシティ』は、その後『シムシティ2000』、『シムシティ3000』と続編が発売され、今回レビューしている『シムシティ4』が4作目となるといわけだ。ゲームのタイトルに『シムシティ4000』と付けずに、シンプルなものにしたのも、小憎らしい裏切りというか、ウィル・ライトらしさが出ているといった感じである。

シムシティ4【オールドPCゲームレビュー】
▲画面端に隣接する道路は、隣の都市へと接続することができる。接続先の都市をすでに開発している場合は、取引も可能になり予算が増える可能性がある。

ちょっと前置きが長くなってしまったが、本作で新しくフィーチャーされた点は、3Dのグラフィック以外にもいくつかある。そのひとつがゲームモードが3つに増えたところだ。

従来までの『シムシティ』と同様、市長となり都市を開発していく「市長モード」。自分の作った都市に『シムピープル』でおなじみのシム人を住まわせることができる「マイ・シム」モード。そして最後が神となって地形を自由自在に変形させたり、災害を起こして自分の作り上げた都市を破壊できる「神」のモードが用意されている。「マイ・シムモード」のシム人は、ゲーム内で簡易的に設定できるほか、『シムピープル』シリーズからデータをインポートすることも可能だ。

シムシティ4【オールドPCゲームレビュー】
▲無駄な経費は極力抑えていかないと、すぐに経済を圧迫してしまう。

今回のシリーズで、特に斬新なのが「神」のモードだろう。いち市長からついに神になるとは、こんな展開は誰も予想しなかったんじゃないだろうか。しかも、作った都市を自ら壊せるとは。そういえば、『シムシティ』と同時期に発売されたゲームに『ポピュラス』という作品があったが、あちらは神となり住民にちょっかいを出していくといったタイプの箱庭型シミュレーションだった。

シムシティ4【オールドPCゲームレビュー】
▲「神」のモードでロボットを呼び出し、自分の作り上げた都市をあっという間に破壊することも可能だ。

ゲームの趣旨は異なるが、おししい部分だけをいただいたようで、ちょっとお得な気分がする。神のモードでは土地を盛り上げて山にしたり、盛り下げて池を作るなんてことは朝飯前なのだが、このゲームの地形には初期の段階で多少の高低差が設定されている。当然ながら、斜めになったような部分には家はたたず、施設の設置もできないところもできてくる。それがまた、その地区独特の雰囲気というか個性を生み出していくのである。

ゲームを起動すると、まず最初に表示されるのが地域ビューだ。従来までのシリーズでは、都市は基本的にひとつずつ作り上げていくという感じだったが、今回はこの地域ビューの中に区分けされたマップがいくつかあり、その隣接した都市同士で提携しながら経済を活性化するなんてことも可能である。ある程度の規模に都市を育てたらセーブし、その隣のマップを地域ビューから選んで新たな街を発展させていくなんて遊び方もできるのだ。

地域ビューの中にある“市長のチュートリアル”、“整地のチュートリアル”と書かれている地域は、それぞれ市長モードでの基本操作と、神のモードでの土地の設定の仕方を学べるモードだ。チュートリアル終了後はそのまま続けて遊べるため、まずはそれぞれの都市の開発から始めてもいいかもしれない。

理想と現実とでもいうのか、市長になり理想の街が作れるというと、なんでも自由に設置し美しい町並みが作れそうな気がするが、やってみるとこれがなかなか大変な作業だということが身にしみてわかる。都市の経費は人口が増えるにつけ増大していくため、たとえ500人の街だろうが5000人の街だろうが、やり方が悪いと赤字経営になってしまうのだ。

市長にはお目付役ともいうべきアドバイザーが何人もいて、事あるごとにいいたいことを言ってくるのだが、それをそのまま真に受けて教育施設などを作ると、一気に都市の総支出額が跳ね上がり、経済は破綻。挙げ句の果てに市長の座をお払い箱になってしまうことになりかねない。

シムシティ4【オールドPCゲームレビュー】
▲予算が貧困を極めてくると、こういった甘い誘いがいろいろでてくる。

そこに、軍事基地を作れば毎月お金が支払われるというような甘い誘いに乗り、市民への悪影響も考えずに設置するといった感じで、ついつい質よりも身を取ってしまいがちである。いつかは、自分の理想としている美しい街並みを作るぞと、心に近いながらしばらくは眠れない日々が続きそうだ。

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高島おしゃむ
ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。