※本文はリリース当時の記事に一部校正を加えたものです。
『ヒドゥン&デンジャラス』を開発したIllusion Softworksの意欲作『マフィア』の日本語版が2003年にズーから発売された。このゲームは、ひとことでいうならばストーリー仕立ての3Dアクションアドベンチャーで、プレーヤーは主人公のトミー・アンジェロとなり、マフィアの世界を体験していくといった内容だ。
マフィアといえば、フランシス・フォード・コッポラが監督した映画の『ゴッド・ファーザー』を真っ先に思い浮かべるが、このゲームはそれよりも少し時代が前の1930年代のアメリカが舞台になっている。
タクシー・ドライバーしていたトミーは、ひょんなことからマフィア同士のいざこざに巻き込まれる。それがきっかけで彼はマフィアと知り合いになり、ファミリーのボス、ドン・サリエリの元で働くこととなる・・・・・・といったのが大まかなストーリーだ。
マフィアというと、機関銃などを撃ちまくり、敵対するマフィアと激しい銃撃戦を繰り返すようなシーンを連想するだろう。たしかに、このゲームでもそういった要素は盛り込まれているのだが、この作品の本質的なおもしろさは、“ロストヘブン”と呼ばれる架空の都市をまるごとそのまま再現しているところにある。
ゲーム中に登場する都市はすべて等身大で作られており、広さにするとだいたい12平方マイルに相当する。道や橋、トンネルなどはもちろんのこと、通りには数々のオールドカーが走り、通行人が行き交う。うっかり人をはねてしまうと、交通違反で捕まってしまうといった細かさだ。とにかく、この街をうろうろしているだけでも、そのデティールの細かさに驚かされることだろう。
主人公の所属しているファミリーもこの中にあり、ほかのグループとの抗争や資金の調達など、街中を四方八方に動き回り、仕事を解決していくのが目的となる。たとえばなにかの仕事で移動をするときは主に車を使うのだが、目的地へ向かうまでの道順はまったくの自由。自分の知っている効率のよい道順で進んでもいいし、むりやり歩道を突っ切ってもいいのである。
このゲームに登場するオールドカーの数は、なんと60台。すべての車を最初から運転することはできないが、シナリオが進んでいくにつれてどんどんいい車が手にはいるようになる。このオールドカー、昔ながらの車をうまく再現しているというか、レースゲーム並みの物理計算が施されており、たとえばコーナーを曲がるときの挙動や、坂道を上るときにスピードが出にくいようになっているのだ。
しかも、エンジンやシャーシー、タイヤなどのデータも持っており、壁に激突したり、他の車と接触を起こすとボディがへこんでしまう。当然ながら、ものすごいスピードで激突事故を起こした場合には、そのダメージは搭乗者にも及び、一気にゲームオーバーとなってしまうこともあるだろう。
時間内に同乗者をある場所に連れて行かなければならないときなどは、ある程度スピードを出す必要もあるが、無用なスピードの出し過ぎは、時に警察のご厄介になることがある。とくに、速度を出す必要がない場合は、F5キーを押して強制的に速度制限をかけて走るといいだろう。
ゲームは、メインのシナリオをクリアしていくモード以外に、初心者のためのチュートリアルモードと、ロストヘブンの市内を車で自由に走ることができるフリーライドモードが用意されている。
フリーライドモードでは、自分の好みに合わせて交通量や歩行者の数を制限できるほか、タクシーとしてお金を稼いだり、ギャングを退治したり、車を破壊したりと、好きなことができるようになっている。
シナリオを一通りクリアしたあとにこのモードを遊ぶことで、より深くゲームの世界を味わえるようになっているのだ。ちなみに、フリーライドにはもうひとつ“フリーライドEX”というモードが用意されているのだが、こちらはすべてのミッションをクリアした後にしか選べないようになっている。このモードで任務を果たすと特別な車が入手できるようになるので、ぜひそちらにもチャレンジしてもらいたい。
マフィアといって欠かせないのが、武器の数々だ。野球のバットからナイフといった小道具的なものから、コルト1911にトムプソン1928マシンガンなど、本格的な武器まで多数登場する。これらの武器は仲間から手に入れたり、倒した敵が落としたものを拾ったりすることで手に入れることが可能だ。
武器にはいろんな使い方があり、たとえばバットは見張りを気絶させるのに有効だったり、火炎瓶は車を一気に破壊するのに役立ったりする。何かの映画の一場面のように、マシンガンで車を撃ちまくると、カラスが割れタイヤはパンクし、最後には炎上して爆発を起こすのだ。武器の取り扱いには注意が必要で、不用意に拳銃を手にしたまま道を歩いていると、警察に捕まってしまうので気を付けよう。
リアルな世界観を壊さないために、このゲームでは「ヒドゥン&デンジャラス」の3Dグラフィックエンジンを改良したものを採用している。人物の写実的な描写はもちろんのこと、建物や車、武器や小物に至るまでよく作りこまれている。EAX Technologyに対応したサウンドカードを使えば、迫力のある3Dサウンドを楽しむことも可能だ。車のクラクションや銃声など、音で位置がわかり、なかなか面白い体験ができるハズだ。
よくあるアドベンチャーゲームでは、いいところまで進んでおきながら、あと一歩のところでゲームオーバーになってしまい、また長いシナリオを始めからこなさなければならないといったことになりがちだ。しかし、本作ではひとつひとつのシナリオがかなり短く区切られている。ミッションの区切りでは自動的にセーブもされるため、ゲームの流れを崩すことなく遊び続けることができるのだ。1日に何時間もゲームをしている時間がないライトユーザーでも気軽に遊ぶことができるのはうれしいところだ。