1987年12月18日にファミコン用RPGとして登場した初代『ファイナルファンタジー』。その後、シリーズとして現在まで作品が受け継がれているだけではなく、多数の派生タイトルも生み出してきました。そうした中で、とりわけリメイクや移植作品が際立って多いのが、初代『ファイナルファンタジー』なのです。
それぞれの機種ごとにどのような違いがあるのか気になったため、まずはオリジナルのファミコン版をプレイ。その後、2作の合作でリリースされたファミコン版の『ファイナルファンタジーI・II』で一部データの検証を行った後に、初のリメイクタイトルとして2000年12月9日に発売されたワンダースワンカラー版(以下、WSC版)をプレイしてみました。
ファミコン版の登場から実に13年もの歳月を経て作られたリメイク作品でしたが、はたしてどのような進化を遂げていたのでしょうか? ゲームをひと通りクリアまでプレイしたので、今回はそのレポートをお届けします。
初代『ファイナルファンタジー』検証タイトル
ここで今回検証中の対象となっているタイトルを、発売日順に記載しておきます。すでにクリア済みのタイトルは「★」マークを、まだプレイ前のタイトルには「☆」マークをつけてあります。なお、MSX2とバーチャルコンソールやゲームアーカイブス、スマホ版は今回リサーチの対象外となっています。
ちなみに本来ならすべてプレイ後に統括としてまとめればいいのですが、単純に時間が掛かってしまいます。また、その間の記憶も曖昧になってしまいがちなため、こうしたタイトルごとのまとめとして、その時点での情報もまとめておきます。そのため、今後もいくつか情報がダブっていく可能もあるためご了承ください。
機種 | 発売日 | クリア |
---|---|---|
ファミコン | 1987年12月18日 | ★ |
ファミコン(ファイナルファンタジーI・II) | 1994年2月27日 | ― |
ワンダースワンカラー | 2000年12月9日 | ★ |
iアプリ(FOMA P900i) | 2004年2月29日 | ☆ |
ゲームボーイアドバンス(ファイナルファンタジーI・II) | 2004年7月29日 | ☆ |
PSP | 2007年4月19日 | ☆ |
ニンテンドー3DS(※DLのみ。2023年3月28日で終売) | 2015年1月21日 | ☆ |
PC、スマホ、Nintendo Switch、PS4(ピクセルリマスター) | 2021年7月29日~ | ☆ |
遊びやすく進化した部分とオリジナルの不便さを合わせ持つタイトルに
前段がすっかりと長くなりましたが、早速本題に入っていきましょう!
先ほども少し触れましたが、このWSC版はファミコン版から実に13年の月日が経って、初めてリメイクされたタイトルです。その間、1と2の合作である『ファイナルファンタジーI・II』がファミコンでリリースされていますが、一部を除き基本的にはオリジナルの作品がそのまま遊べるものとなっていました。
ちなみに、このファミコン版とWSC版の間にナンバリングタイトルとしては、9作目となる『ファイナルファンタジーIX』まで発売済みとなっており、シリーズとしてだけでもゲームやそのジャンルを形成する環境も含めて大きく進化を遂げてきました。
このオープニングはいったいなんだ?
なんといってものっけから驚いたのがそのオープニングです。なにやらおどろおどろしい音楽が流れ、不気味な台詞が表示されていきます。いったいこれはなんなんだ? と思ってよく見てみたら、ファミコン版で最初に流れるストーリー紹介の部分でした。どちらが好みかは人によってわかれるところだとは思いますが、いきなりガツンとやられた感じですね!?
プレイヤーが最初にやらなければいけないことが、4人の勇者たちの職業と名前決めです。ここでもゲーム内ではまったく説明がなかったファミコン版とは異なり、WSC版では丁寧に解説まで表示してくれます。
こうした随所にユーザーが迷わなくするための配慮が行われているのも、リメイク版の特徴のひとつです。たとえば、最初に泊まることになる「コーネリアの町」の宿屋には、ファミコン版には存在しなかったゲームの説明をしてくれるチュートリアル的なキャラクターが配置されており、装備品の扱い方なども教えてくれます。
オートバトルで戦闘が格段にやりやすくなった「エクストラモード」を搭載
その当時は当たり前だったものの、今の感覚ではかなりプレイしにくく感じる部分が昔のゲームには多々あります。そのひとつが、ファミコン版の戦闘モードでした。たとえば下記のような敵が出現した場合、手前のギガースウォームに攻撃のターゲットを合わせていたときにその敵が先に倒されてしまうと、攻撃がスカってしまいます。
しかし、WSC版では「オートターゲット」が利用できるようになっているため、先に狙いを定めた敵がいなくなってしまったとしても、別の敵に自動でターゲットを切り替えてくれます。これはあくまでも物理攻撃だけで魔法攻撃などは従来通りなのですが、まぁ、魔法に関してはレベル3以降はほぼ全体攻撃なのであまり意識することもないかもしれません。
実はこうした設定は、ユーザーが自ら選ぶことが出来るようにもなっています。メニュー画面の「コンフィグ」のモード切替を「エクストラモード」にしておきます。ここで「オートターゲット」をONにしておくことで利用できるというわけですね。ほかにもBボタン―など便利な機能も使えるようになっているので、今風のスタイルで遊びたい人にはオススメです。
ゲーム序盤のレベル上げは緩くなったものの……!?
戦闘関連でいうともうひとつ、ファミコン版ではゲーム序盤のレベル上げがかなり苦痛にかんじるぐらい時間がかかりました。しかし、WSC版に関してはかなり緩和された印象です。それに加えて、オートターゲットも利用できるため、ポチポチボタンを押しているだけである程度戦闘を繰り返すことができるようになっていました。
……が、楽だなと思ったのは割と序盤だけで、中盤あたりではやはりある程度レベリングしなければいけない時間が取られてしまいます。
特に1番手強く感じたのは、やはりラスボスでした。ファミコン版では最初のアタックでサクッと倒すことができたのですが、LV30のパーティで挑んだ初戦は見事に撃沈してしまいます。そこでネットを検索してみたところ、LV45や50は必要だという意見を見かけたため、結局LV45まで上げることに。
しかしこれは少し上げすぎてしまったようで、わずか4ターンほどで戦闘が終わり無事ゲームをクリアすることができました。
ちなみにパーティはナイト、スーパーモンク、白魔導師、黒魔導師といった王道メンバーだったのですが、1番ダメージが出せるスーパーモンクをアタッカー役にして「ヘイスト」で攻撃回数を増やし、「バオル」などのサポートも行っています。
あえてオリジナルらしさを出すためか今回も引き継がれた回数制の魔法としょぼい回復アイテム
基本的な部分では遊びやすさが最大限に考慮されたと思われるリメイク版ではあるのですが、なぜかオリジナルのまま引き継がれた不満に感じる部分もいくつか見受けられました。そのひとつが、魔法の回数制です。
オリジナルのファミコン版ではMP制ではなく、魔法はレベルごとに使える回数が決められていました(回数自体はキャラクターのLVを上げることである程度増えていく)。そのため、やたらめったら魔法を連発するというわけにもいかない仕様となっています。それが、このWSC版でもそっくりそのまま受け継がれています。
魔法の回数制はある程度やりくりはできるものの、やはり前回同様の仕様が引き継がれ不満に感じた部分が回復アイテムでした。このWSC版ではファミコン版同様に道具屋で「ポーション」と呼ばれる回復アイテムを購入することができます。
しかし、この「ポーション」で回復できるHPは30にも満たないため、ボス直前などで減ってしまった体力を回復しようとすると、大量に消費してしまいます。上位版の「ハイポーション」なども存在せず、持てる個数も99と制限があり、ここが1番辛く感じた部分かもしれません。
ショップのアイテム購入は迷わずわかりやすいものに変更
そうした中で唯一良かったポイントが、店で「ポーション」を購入するときに、ファミコン版のようにひつずつポチポチしていく必要がなく、まとめ買いできるところでした。
このショップ関連はほかにもかなり改善されており、非常にわかりやすくなっています。たとdば装備品はだれが身に付けることができるのか、キャラクターが手を上げて教えてくれるだけではなく、現在のステータスと比較できるようにもなっています。
魔法屋では、それに加えて、各魔法にどんな効果があるのか教えてくれ、さらに現在覚えている個数も表示できます。この魔法に関しては、このWSC版から「わすれる」というコマンドも利用できるようになりました。
本作では4つある魔法から3つまでを選択して覚えるという特殊なシステムが採用されていますが、たとえば特定のボス戦で必要な魔法があったにもかかわらず、すでに別の魔法で埋まってしまっている場合でも、新たに覚え直すことができるようになっています。
著作権絡みか名前や見た目が変更になったモンスターも
ファミコン版の初代『ファイナルファンタジー』と、『ファイナルファンタジーI・II』、そしてこのWSC版の『ファイナルファンタジー』とで、同じ扱いのモンスターであるにもかかわらず見た目や名前が変わってきたモンスターがいます。
ファミコン版の「氷の洞窟」などに登場したモンスターの「ビホルダー」と、その上位版である「デスビホルダー」。名前と見た目から、おそらくテーブルトークRPGの『ダンジョンズ&ドラゴンズ 』に登場するモンスターから流用したと思われますが、著作権絡みのクレームが入ったためか、それ以降にリリースされた作品では名前や名称が変更されていきました。
まず、オリジナルから6年後に発売された『ファイナルファンタジーI・II』では、名前はそのままですが、グラフィックが別のものに変更されています。
さらにWSC版では『ファイナルファンタジーI・II』のグラフィックを引き継ぎつつ、名前が「イビルアイ」と「デスアイ」に変更されています。おそらく「ビホルダー」という名称は使えなくなっていたと思われ、その後に発売された本などでも初代ファミコン版のモンスターについて記載されているにもかかわらず、この名前は登場せず「イビルアイ」として書かれています。
ファミコン版にはなかった演出やカットシーンも多数追加
グラフィックやUIなどが、そこそこ今風に変更されているのもWSC版の特徴ですが、それ以外にも多数の演出やカットシーンなども追加されています。
たとえば最初に訪れる「コーネリアの町」には、入り口付近にファミコン版では見かけなかったキャラクターが立っています。そこで話しかけるといきなりお城に連れて行かれ、新たに付け加えられた演出が見られるといった感じです。
ファミコン版では特になんの演出もなかったところでも、随所にカットシーンが盛り込まれるため、かなり感情移入しやすいものになっているのはたしかです。ここで紹介したもの以外にも、ざっと以下のようなところで演出が見られるので、ぜひご自身の目で確かめてみてください。
・オープニング
・コーネリア城
・北の橋を作るシーン
・運河が開通するシーン
・飛空船が現れるシーン
・海底神殿に行くシーン
……etc
基本的には町にいる人々やオブジェクト関連に関しては、ほぼオリジナルを引き続いているといった印象です。しかし、ファミコン版のもうひとつの特徴であった癖のある台詞回しは残念ながら修正されてしまっているようです。
ということで、ここまでワンダースワンカラー版の初代『ファイナルファンタジー』について、どのように変化を遂げているのかざっくりながらご紹介してきました。今後もこの「FF1徹底検証」シリーズは続く予定になっているので、ご期待ください。