ファミコンとPS2のゲームはどこまで大友克洋の『AKIRA』を追体験できるのか? 当時なぜかスルーしていたゲームを入手して遊んでみた

ファミコンとPS2のゲームはどこまで大友克洋の『AKIRA』を追体験できるのか? 当時なぜかスルーしていたゲームを入手して遊んでみた

原作漫画の大ファンで、リアルタイムで映画も視聴していましたが、なぜかまったく触れてこなかったのが『AKIRA』のゲームでした。そこで今回、ファミコン版の『AKIRA』とPlayStation 2版の『アキラ サイコボール』を入手。はたしてこれらのゲームは、どれほど作品を追体験できるのか確かめてみることにしました。

その前に、前提として『AKIRA』について簡単にご紹介しておきます。元となった漫画は、大友克洋氏が1982年から週刊ヤングマガジンで連載していた作品です。緻密な絵柄とSFチックな世界観、先の読めない展開などで多くのファンを獲得。その人気は時代を超えて現代まで続いており、なんと2020年9月には第1巻が100刷に到達するという、前代未聞の記録を打ち立てています。

ファミコンとPS2のゲームはどこまで大友克洋の『AKIRA』を追体験できるのか? 当時なぜかスルーしていたゲームを入手して遊んでみた
▲『AKIRA』第1巻より。アキラだと思われてそうな、主人公の金田。

世界的に注目を集めるようになったのは、1988年7月16日に公開された映画版の『AKIRA』でしょう。その当時、原作漫画は散発的に連載は続いていたものの、まだ作品自体は完結していませんでした。その状況で、ひとあしお先に結末が見られるということでも話題になった作品です。そうえいば、『北斗の拳』のアニメ映画もそんな感じでしたね~。

公開当時、池袋の映画館で本作を観たのですが……あまりにも原作と異なるキャラ設定などから、30分程で出たくなってしまった記憶がありました。今回改めて原作漫画と映画を見直してみたのですが、不満に感じたポイントは終盤近くだったりしたので、これまた記憶は当てにならないなと改めて思わされた次第です(笑)。

この映画版も、多くのオマージュを生んだバイクが横滑りしいくシーンや、名台詞などが多数あり、今では大好きな作品となっています。

ゲーム版『AKIRA』の歴史はファミコン版から始まった

『AKIRA』のゲームが初めて登場したのは、ファミコン版です。発売は1988年12月24日で、『ロックマン2 Dr.ワイリーの謎』、『小公子セディ』、『エアー・ウルフ』、『プロ野球?殺人事件!』といった作品と同級生です。この当時、ゲームはファミコンよりもPCエンジンを中心に遊んでいたこともあり、このファミコン版もスルーしたのかもしれません。

その後、日本では未発売ですが、AMIGA版が1994年6月8日にリリースされています。映像を見る限り、映画版を再現したようなものになっており、バイクアクションが楽しめるような作品になっていたようですね。

▲AMIGA版『AKIRA』。

その後、2002年2月21日に、映像ソフトの発売に合わせてピンボールゲームの『アキラ サイコボール』がリリースされています。

残念ながら発売が見送られたタイトルもあり、メガドライブ版やゲームボー、ゲームギアなども企画されていたのだとか。メガドライブ版についてはYouTubeで映像を見ることができますが、場面転換も多くアクション性の高い作品になる予定だったみたいですね。

▲未発売のメガドラ版『AKIRA』。

ファミコン版はちょっといじわるなアドベンチャーゲームだった!?

ということで、さっそくゲームをプレイしてみることに。ちなみに当初POLYMEGAで遊ぼうと考えていたのですが、何をやってもカートリッジが認識されなかったため、仕方がなくAVSを引っ張り出してきてプレイすることに。

オープニングではアキラ君が爆発しちゃったシーンからタイトルが現れるといった演出になっており、金田がバイクを乗っているシーンも再現されていました。

このファミコン版『AKIRA』は、ゲームとしてはオーソドックスなコマンド選択式のアドベンチャーゲームとなっています。基本的には一本道のストーリーになってはいるものの、フラグがややわかりにくく、ひと通り試していなければ先に進めないといった部分も出てきます。

ファミコンとPS2のゲームはどこまで大友克洋の『AKIRA』を追体験できるのか? 当時なぜかスルーしていたゲームを入手して遊んでみた
ファミコンとPS2のゲームはどこまで大友克洋の『AKIRA』を追体験できるのか? 当時なぜかスルーしていたゲームを入手して遊んでみた
▲選択肢を間違えてゲームオーバーになった金田少年。
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▲刑務所贈りになったついでにゲームオーバーになった金田少年。

ゲーム途中、謎のシューティングゲームなども盛り込まれているなど変わった要素もあるものの、全体的にはそれほどボリュームは多くない印象でした。

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▲初見殺しのシューティングゲームも登場。

ゲーム内で描かれているストーリーは基本的には映画版に沿った内容となっています。そのため、元の映画版を見たことがある人ならば、ニヤっとするような場面があったり、「あれ? あのセリフは出てこないの?」といったものもあったりと、結構楽しめる作りになっていました。

終盤エンディングが複数分岐しているのですが、その中には原作に近いものもあり、こちらも漫画から本作に入ったファンは嬉しいポイントといえそうです。ゲームとしては、現代の視点で遊ぶとかなり微妙なところもありますが、ファンアイテムとしてなら悪くはないといった感じでしょうか。

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ファミコンならではの気の抜けたようなグラフィックとそこそこ頑張ってるシーン

このゲームで面白いところは、ファミコンならではのグラフィックです。シーンによってはかなり気の抜けたような絵に見えるところもあれば、そこそこ頑張っているシーンも出てきます。どうせならどっちかに寄せた方がいいのでは? と思ってしまいましたが、ま、これも味があって良い感じですね!?

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ファミコンとPS2のゲームはどこまで大友克洋の『AKIRA』を追体験できるのか? 当時なぜかスルーしていたゲームを入手して遊んでみた
▲こちらはかなり秀逸なグラフィック。
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▲そのままネタとして使えそうなシーンも。

ただのピンボールゲームかと思ったら想像以上に楽しめたPS2版『アキラ サイコボール』

それほど情報が無かったため、実際に遊んで見るまでどんな感じなのかよく分からなかったのがPlayStation 2で発売された『アキラ サイコボール』でした。これが、想像以上にかなり良くできたゲームだったんです! まず驚いたのがオープニングの映像。映画の名シーンをつなぎ合わせたようなものになっており、観たいシーンが詰め込まれている感じです。

また、ゲームの合間にも、少しずつ映像が流れるような作りになっており、意外にも作品の追体験ができるようになっていたところも驚いたポイントです。

そして何よりも素晴らしかったのが、ピンボール台における『AKIRA』の世界観の再現度でした。メインとなるのは「STORY PLAY」と呼ばれるゲームモードで、こちらがまさに作品の世界観を追体験していくような作りになっているのです。

「STORY PLAY」大きく分けて4つのステージが登場し、それぞれ異なる台が遊べるようになっています。最初に挑戦することになるのは、「NEO TOKYO」です。こちらはいわゆる対戦台と言われているもので、プレイヤーが操るのは左側の台です。コンピューターが操る右側のプレイヤーと争っていくのですが、なかなかスピード感のあるゲームが楽しめるようになっていました。

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▲最初に登場するステージの「NEO TOKYO」。プレイヤーは右の金田側で、ジョーカーとの対決をイメージした台になっています。
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▲映画の短いクリップも流れます。
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▲先に進むにはキーをゲットする必要があります。
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▲特定の条件で、サブフィールドに行くこともできます。

その後、「LABORATORY」、「A-ROOM」、「OLYMPIC STADIUM」と進んでいくのですが、こちらも原作のシーンが随所に盛り込まれています。中でもユニークだったのが、AKIRAが閉じ込められている「OLYMPIC STADIUM」です。

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▲ステージをクリアすると、次のステージにチャレンジすることが可能。
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▲「OLYMPIC STADIUMでは、SOLによる攻撃も行われます。
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▲「アキラドーム」に移動して、ダメージを与えていきましょう。

プレイ中、SOLによる攻撃が台に行われ邪魔をしてきます。条件をクリアすると、AKIRAのいる「アキラドーム」へと進んでいきます。ここでドームにダメージを与えると……といった感じで、ピンボールといった単純なゲームでありながら、同時に物語も楽しめるといったかなりお得な作りになっていました。

ということで、今回はファミコン版の『AKIRA』とPS2版の『アキラ サイコボール』をプレイしましたが、どちらもファンならぜひとも遊んでおいてほしいタイトルだったといえます。特にオススメは『アキラ サイコボール』で、こちらは初心者向けに難易度を変更することもできます。

まだどちらも遊んだことがないという人は、ぜひ1度チャレンジしてみてください!

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高島おしゃむ
ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。