Robert Peip(FPGAzumSpass)氏が、1年ほどまえから開発を進めていたMiSTer FPGA用のNINTENDO64コア。当初NINTENDO64をFPGAで再現するのは不可能と言われていますが、2023年1月6日からコアの探索を開始して、年末の12月9日にすべての公式ゲームが少なくとも起動して遊ぶことができる状態になるという実績を達成しています。
ということで、遅ればせながらRobert Peip氏のPatreonに登録して最新のコアを入手し、その出来映えをチェックしてみました。余談ですが、Robert氏のPatreonは有料で購読する必要がありますが(金額のコースは最低でもOK)、単純にN64コアを作りあげていくまでの道のりが分かる読み物としても楽しめるので、オススメです!
●Robert Peip氏のPatreon
https://www.patreon.com/fpgazumspass/posts
今回は細かい設定などは省きますが、簡単にセットアップに必要な情報を記載しておくと、上記のPatreon(要:有料購読)からコアを入手すると、ふたつのファイルが入っています。そのうちのひとつはコアのファイルですが、もうひとつの「MiSter」のファイルはシステム側に上書きするものです。念のため、オリジナルのファイルをバックアップしてからコピーしておくといいでしょう。
コアを動作させるには、それに加えてふたつのファイルが必要です。ひとつは「PIF ROM」とも呼ばれるBIOSファイルです。こちらは実機のゲーム機から吸い出す必要がありますが、下記のツールと『EverDrive-64 X7』などが必要になります(※旧バージョンではうまく動作せず)。詳細は、「pif_rom_dumper」のGitHubをチェックしてみてください。
●pif_rom_dumper(PIF ROM吸い出し用ツール)
https://github.com/hcs64/pif_rom_dumper
●EverDrive-64 X7
https://krikzz.com/our-products/cartridges/ed64x7.html
また、/games/N64ディレクトリーにNINTENDO64のデータベースファイルを配置しておく必要があります。こちらは、4096バイトのMD5ハッシュ値が書かれたファイルで、そちらを参照して起動するゲームの情報を入手するために使われているようです。データベースにないゲームは起動することができませんが、データベースのファイル自体はテキストファイルであるため自分で追加することも可能です。
●NINTENDO64のデータベースファイルのダウンロードリンク(テキストファイルを保存)
https://vampier.net/N64/Builds/DataBase_20231220160435.txt
そのほかセットアップに関する細かい情報については、下記のサイトでも詳しく読むことができます。
●MiSTer FPGA N64 Core by FPGAZumSpass
https://vampier.net/N64/
快適な速度に加えて画面の美しさにも感動
少し前まで、POLYMEGAの『EM05 – ウルトラモジュールセット』でNINTENDO64のパフォーマンスをチェックしていたということもあり、とりあえず『ゴールデンアイ 007』を起動してみたところ、そのパフォーマンスの素晴らしさに感動を覚えました。
この『ゴールデンアイ 007』では、POLYMEGAではオープニングで血が流れ落ちるシーンで若干グラフィックの乱れが表示されていましたが、MiSTer FPGAのN64コアではそうした不具合はありませんでした。
全体的なグラフィックについても、POLYMEGAではややアンチエイリアシングが強いような、少し眠い絵に見えますが、MiSTer FPGAのN64コアはなかかシャープで見やすい印象です。また、改めて比較してみると、POLYMEGAのほうは若干表示される画面が狭くなっているようにも見えますね。
限定的だが64GBパックの機能も利用可能
POLYMEGAではまだ対応していなかった、『64GBパック』。こちらは、コントローラーに接続して使うための周辺機器で、ゲームボーイのカセットをさしこんでデータを利用することができるといったユニークな試みができるアイテムとして導入されていたものでした。
これらの周辺機器以外にも、ゲームのデータを保存するための『コントローラパック』や『振動パック』などもありますが、このMiSTer FPGAのN64コアでは、これらも対応しています。例えば『振動パック』自体が実際にコントローラーに付いてない状態であっても、コントローラー自体に振動機能が搭載されている場合はそれが機能するといった感じです。
『コントローラパック』についてはあまり意識する必要はありませんが、中でもかなり特殊な使い方がされるのが『64GBパック』だと思えばいいでしょう。
ちなみにMiSTer FPGAのN64コアで対応しているゲームボーイのカセットは、今のところ『ポケットモンスター』の赤と緑、青、ピカチューといった初期バージョンのみに限られています。その理由は、ゲームボーイのカセットごとにマッパーが異なっているためです。現状、コア自体のリソースが限られているため、これらすべてに対応するのは難しいようですが、すくなくとも『ポケモン クリスタル』などには対応したいとのこと。
この『64GBパック』とゲームボーイの『ポケモン』を使って遊べるタイトルが、『ポケモンスタジアム』シリーズです。MiSTer FPGAのN64コアでは、64のソフトとは別に『64GBパック』を仮想的にセットするためにゲームボーイのソフトも読み込めるようになっています。
とりあえず初期のポケモンは所有していなかったため、『ポケットモンスター ピカチュウ』を入手してチェックしてみたところ……なんと、『ポケモンスタジアム 金銀』の中で、ゲームボーイのソフトが遊べることを確認することができました。
マウス+キーボードでFPSやRTSもプレイ可能
通常のゲームのパフォーマンスの凄さはすぐにわかったのですが、それよりも驚愕だったのは、なんとマウスやキーボードを利用してゲームが遊べるということでした。NINTENDO64でマウスやキーボードを使うといった試みは過去にも行われていましたが、現状はメジャーではありません。また、POLYMEGAなどでも今のところは対応されていません。
●N64 Keyboard and Mouse Adapter(過去にはこんなものも)
https://meanwhileblog.wordpress.com/2020/05/20/incomplete-projects-n64-keyboard-and-mouse-adapter/
そもそもなんでマウスやキーボードが必要なのか? というと、FPS(ファーストパーソンシューティング)やRTS(リアルタイムストラテージ)といったジャンルのゲームは、元々はPC向けに作られている場合が多いからです。そのため、そちらの操作に慣れている人は、キーボードのWASDキーとマウスを使った方が、『ゴールデンアイ 007』や『パーフェクトダーク』などのゲームも、思い通りに動かすことができるというわけですね。
また、日本では未発売のタイトルとしてRTSの『StarCraft 64』がありますが、こちらのマウスで操作することができました。使用したのはマウスとコントローラーで、コントローラー側はCキーとZ+Rキーでのみ使っています。さすがにPCよりは操作感は劣るものの、少なくともコントローラーだけで操作するよりは快適に遊ぶことができました。
コントローラーはいろいろと調査の必要あり
MiSTer FPGAのN64コア自体は、まだまだ課題がいくつか残っており、現時点で完璧というわけではありません。それでも、ほぼ実用に耐えうるレベルには仕上げられているといった印象です。
また、実験的なコアとして、より高いフレームレートで実行可能なものもリリースされており、今後の展開にも期待が持てます。
ということで、コア自体の出来映えはなかなかなのですが……次に興味が映っていくのがこれらを操作するためのコントローラーです。市場にはNINTENDO64スタイルのコントローラーがいくつか販売されており、中にはBluetoothで接続することで、オリジナルのゲーム機のみならず、Nintendo Switchや互換機などでも使えるものも用意されています。
どのコントローラーがいいのかわかりにくいのですが、それらの情報をまとめた動画が公開されていたので、参考にしてみるといいかもしれません。
ちなみに筆者が使用しているのは、『Xbox ワイヤレス コントローラー – Starfield リミテッド エディション』です。右側のアナログスティックにCキーを割り当てているため、タイトルによっては若干操作がしづらく感じますが、ギリギリ許容範囲といったところ。
ほとんどのタイトルで遊べていたのですが……なぜか『ゴールデンアイ 007』や『パーフェクトダーク』といったFPS系のタイトルでは、アナログスティックを動かすと前のめりになってしまい、うまく操作できないことがわかりました。
てっきりコントローラーのアナログスティックの値が大きすぎるのが原因かと思っていたのですが、実はMiSTer FPGAでのキーのアサインが間違っていることが影響していることがわかりました。コアでコントローラーのキーを割り当てていくときに、最初に上下右左といったキーをアサインするのですが、ここでアナログスティックで入力を行っていたのです。
このときにアナログスティック自体は設定する必要はなく、実際は十字キーで入力を行わなければいけません。それに気が付いた後で、ゲームを起動してチェックしてみると、まったく問題なく操作できることがわかりました。
その間、Nintendo Switch用の公式コントローラーである『NINTENDO 64 コントローラー』も注文してしまいました。この記事を作っている段階ではまだ届いていませんが、別途どんな感じだったのかレポートしたいと思います。
ちなみに『NINTENDO 64 コントローラー』自体は、「Nintendo Switch Online」へ加入中が購入条件というかなり変わったアイテムですが、今回はメルカリで入手しています(笑)。
●NINTENDO 64 コントローラー
5478円 ※「Nintendo Switch Online」へ加入中が購入条件
https://store-jp.nintendo.com/list/hardware-accessory/controller/HAC_A_LR3GF.html
フォーラムでオススメされていたコントローラーが『ホリ ファイティングコマンダー OCTA』でした。こちらは使ったことはありませんが、たしかに右側の△、○、R1、F2あたりをCキーに割り当てるとかなり使いやすそうに見えます。
もうひとつ、MiSTer FPGAでオリジナルのコントローラーを使うためのソリューションとして、SNACというものが用意されています。こちらも手作りアイテム販売サイトのEtsyなどを見てみると、いくつか出品されており、そちらを入手してみるのも手かもしれません。
●MiSTer FPGA SNAC adapter – Nintendo N64
2967円+送料1780円
https://www.etsy.com/jp/listing/1640818934/mister-fpga-snac-adapter-nintendo-n64?click_key=f500f3c9272c521cf4fed0addc2f618191d21dfb%3A1640818934&click_sum=29f61a6f&ref=hp_rf-1&sts=1
というわけで、長々とレポートしてきましたが、NINTENDO64コアの出来映えはかなり満足のいくレベルになっていることがわかりました。こちらでゲームを楽しむために、先ほどご紹介したコントローラーなど環境面でも整えていきたいところです。