今回レビューするのは、EverDriveから発売されているスーパーファミコン用マルチカートリッジ『FXPAK PRO』です。以前は『SD2SNES』や『SUPER EVERDRIVE』というような名称で呼ばれていましたが、現在はこちらが最新版になります。
EverDriveを簡単に紹介しておくと、ゲームのROMデータをカセットのなかに複数入れておくことができ、それをメニューから選んで起動できるようにするという感じの特殊なカセットです。ゲームのROMデータ自体は別途用意する必要がありますが、オリジナルのN in 1カセットが作れるようなイメージといえばわかりやすいでしょうか。
起動して真っ先に驚いたのは、他のEverDrive製品とは大きく異なり、グラフィカルなメニューが表示されることでした。ゲームのROMを入れるMicroSDカードは、最大200GBまでテスト済。残念ながらexFATはサポートされていないため、FAT32でフォーマットする必要があります。
ROMの高速ロードと高速なメニューナビゲーションを実現。ディレクトリー内のファイルは、自動で並べ変えられます。長いファイル名を表示するために、高解像度メニューを採用。リアルタイムクロックにも対応しています。
最大128MBitのROMサイズをサポートしていますが、実際は96MBitまでしか使われていません。一部を除いて、特殊チップのゲームやサテラビューのソフトにも対応しています。
公式サイトから最新OSを入手
というわけで、まずは最新のOSとファームウェアを入手するために公式サイトにアクセスしてダウンロードしましょう。ファイルを入手したら解凍して、SDカードのルート上に「sd2snes」フォルダーをコピーします。それ以外のゲームのROMは、自分が管理しやすいようにフォルダわけして入れておくといいでしょう。
特殊チップ&サテラビューの起動にはBIOSファイルが必要
スーパーファミコンのゲームのなかには、ゲーム内の機能を拡張するために特殊なチップを搭載したものが含まれています。たとえば3Dグラフィックが印象的だった『スターフォックス』には、「SuperFX」という3Dグラフィックのためのチップが搭載されているといった感じです。
そのため、こうした特殊チップを搭載したゲームが。互換機やエミューレータなどでは上手く動かないことも少なくありません。
問題は、これらのBIOSファイルをどうやって入手あるいは吸い出すことができるのか? ということですが……これについては、全くのミッシングリンク状態になっており、どこを探しても違法ファイルをダウンロードする以外の方法を見つけることができませんでした。
というわけで、『FXPAK PRO』でサポートしている特殊チップのゲームは、以下の通りです。
・DSP-1 / 1B
・DSP-2
・DSP-3
・DSP-4
・ST-010
・Cx4
・S-RTC
・SuperFX
・SA-1
・MSU-1(オーディオをCD並のサウンドにできるもの。ほぼ海外タイトル向け)
・OBC-1(『Metal Combat: Falcon’s Revenge』でのみ使用されているスプライト操作用のチップ)
非対応はSPC7110、『森田将棋』シリーズで使われているST011とST018で、S-DD1に関しては特に記載はないものの、問題なく遊ぶことができました。DSP関連とST010のゲームを起動するには、それぞれに対応したBIOSを「sd2snes」フォルダーに入れておく必要があります。
ちなみにST-010は、『エキゾースト・ヒートII』でしか使われていないため、そちらのゲームを遊ぶとき以外はなくても問題ありません。DSP関連は、主に以下のゲームで利用されています。どうやらこうした仕様になっているのは、著作権的な問題があるのが理由のようです。
●必要なBIOSファイル
dsp1.bin
dsp1b.bin
dsp2.bin
dsp3.bin
dsp4.bin
st0010.bin
ゲーム名 | 特殊チップの種類 | メーカー |
装甲騎兵ボトムズ ザ・バトリングロード | DSP-1 | タカラ |
バイク大好き!走り屋魂 | DSP-1 | 日本コンピュータシステム |
ファイナル・ストレッチ | DSP-1 | ロジーク |
マイケル・アンドレッティ インディーカーチャレンジ | DSP-1 | ビーピーエス |
パイロットウイングス | DSP-1 | 任天堂 |
首都高バトル’94 土屋圭市 ドリフトキング | DSP-1 | ビーピーエス |
首都高バトル2 | DSP-1 | ビーピーエス |
スズカエイトアワーズ | DSP-1 | ナムコ |
スーパーエアダイバー | DSP-1 | アスミック・エース |
スーパー3Dベースボール | DSP-1 | ジャレコ |
スーパーF1サーカス外伝 | DSP-1 | ニチブツ |
バトルレーサーズ | DSP-1 | バンプレスト |
スーパーマリオカート | DSP-1/1B | 任天堂 |
エースをねらえ! | DSP-1A | 日本テレネット |
ダンジョンマスター | DSP-2 | JVC |
SDガンダムGX | DSP-3 | バンダイ |
プラネットチャンプ TG3000 | DSP-4 | ケムコ |
同様に、サテラビュー関連のゲームを遊ぶ場合も、BS-X BIOSを「bsxbios.bin」という名前に変えて「sd2snes」フォルダーに入れておく必要があります。
スーパーゲームボーイ2にもβながら対応
2020年7月16日に、スーパーゲームボーイ2のβ版も公開されました。こちらはGitHubから「sgb04」というファイルを落として「sd2snes」に上書きするほか、sgb2_boot.binとsgb2_snes.binというファイルも「sd2snes」フォルダーに入れておく必要があります。
実際にゲームを遊んでみましたが、スーパーゲームボーイ2らしさが出ておりなかなかいい感じでした。
メニュー
『FXPAK PRO』を起動するとグラフィカルな画面が立ち上がりますが、そこからXボタンを押すことでメインメニューのウインドウが表示されます。「Recent game」は自分がプレイしたゲーム履歴を表示。そこからゲームを起動することも可能です。
「System Infomation」では、『FXPAK PRO』の状態をチェックすることができます。
上記のふたつよりも、メインとなるのは「Configuration」の項目です。こちらでは、かなり細かい設定が行えます。
・Set Clock・・・・・・・・・・・RTCの時間を設定します
・BS-X Settings・・・・・・・サテラビューの時間設定ができます
・Brower Settings・・・・・ソートやスクリーンセーバーの設定ができます
・Chip Option・・・・・・・・・特殊チップのCX4とSuperFXのスピードアップやMSU-1のボリュームブースの設定が行えます
・In-game Settings・・・・インゲームメニューに関する設定のほか、チートのオン・オフ、自動リージョンパッチ、1Chipスーファミに関する輝度修正などが行えます
・SuperCIC Settings・・・マルチリージョンカートリッジとして機能させることができる、SuperCICの設定が可能です。これにより、CIC保護されたS-DD1、SA1などの特殊チップを搭載したゲームがリージョンに関係なくプレイ可能になります
セットアップにひと手間かかるものの相対的な完成度は高め
一通りいじってみて感じたことは、ほかのEverDriveのカセットと比較するとひと手間セットアップに時間がとられるものの、マルチカートリッジとしての完成度はそこそこ高めといった印象でした。実機はもちろんのこと、AnalogueのSuper Ntとの相性もいいようなので、それらと組み合わせることで最高のユーザーエクスペリエンスが得られるのではないでしょうか。
●project sd2snes – …SD cards? In my SNES?
https://sd2snes.de/blog/