NINTENDO64向けに開発されたゲームエンジン「Engine64」が公開され、実際にその機能を試すことができるデモROMが配布されています。
約3年をかけて開発されたというこのエンジンでは、単に3Dモデルを表示するだけではなく、物体同士がぶつかる剛体物理をはじめ、波打つ水面や浮力、さらには布のシミュレーションまで実装。デモROMはエミュレーターだけではなく、フラッシュカートを利用してN64実機でも動かすことができます。
●NINTENDO 64 GAME ENGINE
https://zoncabe.itch.io/engine64
N64上で水が波打ち、物が浮く
「Engine64」で特に目を引くのが、物理演算を利用したさまざまな表現です。
ゲーム内の物理エンジンでは、箱や球体、カプセル、三角形メッシュなどを使った剛体物理に対応しており、オブジェクト同士をぶつけたり押したりすることができます。公開されているデモでは、キャラクター自身も周囲のオブジェクトに干渉する仕組みになっています。
さらに水面は、単なる半透明の板として描画しているわけではありません。複数の波を組み合わせることで水面そのものが変形する手続き的な表現が採用されており、その高さ情報は物理演算側とも共有されています。
そのため、水の中に落ちた物体には浮力が働き、重量や密度などに応じて水面に浮かせることが可能。キャラクターも水に入ることができ、N64上で「波打つ水面に物が浮く」という、なかなかインパクトのある光景を見ることができます。

布や髪の毛も物理演算で動く
物理表現は水だけではありません。
Engine64には布のシミュレーションも組み込まれており、Verlet法をベースにした仕組みが採用されています。GitHubでは、IO Interactiveの「Hitman」シリーズでも利用されたThomas Jakobsen氏による手法を参考にしていることが説明されています。
キャラクターについても、歩行速度や加速、旋回などを設定できる移動システムに加えて、ジャンプや空中制御、ローリングなどに対応。アニメーションにはブレンドツリーが用意され、髪などの揺れる部分にはスプリングボーンによる動きも加えられています。
1990年代のゲーム機向けとは思えないような要素が次々と実装されているところも、Engine64のおもしろい部分といえそうです。
立体的なサウンドや2Dゲームにも対応
グラフィックや物理だけではなく、サウンドにも力が入れられています。
位置に応じて音量や左右の定位を変化させるポジショナルサウンドに対応しており、カメラの位置や向いている方向を基準に音を振り分けることができます。また、キャラクターのアニメーションに合わせて足音を鳴らすといった仕組みも実装されています。
Engine64は3Dゲーム専用というわけでもなく、スプライトやテキスト、レイヤーを扱う2Dシステムも搭載。2Dゲームの制作に利用できるほか、3Dゲーム上にメニューやUIを重ねて表示する用途にも利用できます。

デモROMは無料で試すことが可能
Engine64は、オープンソースのN64開発環境「libdragon」と、N64向け3Dライブラリ「Tiny3D」をベースに開発されています。開発者によれば、約3年前から制作が続けられており、当初はCで書かれていましたが、現在はC++へ移行しているとのことです。
itch.ioでは現在、Engine64を体験できる5.4MBのデモROMが「Name Your Own Price」方式で公開されています。価格はユーザーが決められるため、無料でもダウンロード可能です。ROMは対応エミュレーターで動かせるほか、フラッシュカートを使用すればN64実機でも試すことができます。
また、Engine64のソースコードもGitHubで公開されており、物理エンジンや水面、浮力、キャラクター、サウンドなどをどのように実装しているのか確認することができます。
N64のHomebrew開発を支える新たな選択肢に
注意したいのは、今回公開されたEngine64そのものが「N64向けの新作ゲーム」というわけではないことです。あくまでもN64でゲームを制作するためのゲームエンジンであり、配布されているROMもその機能を紹介する技術デモという位置付けになります。
また、itch.io上でのステータスも記事執筆時点では「In development」となっているため、現在も開発途中です。市販ゲームのような完成度や幅広い互換性が保証されているものではありません。
とはいえ、N64実機で水面が波打ち、そこに落とした物体が浮かび、さらに布まで物理演算で動く様子は、それだけでもなかなか見応えがあります。
近年活発になっているN64のHomebrew開発において、こうした複雑な処理をゼロから作らず利用できるゲームエンジンが登場したことで、今後Engine64を使ったどのような作品が生まれてくるのかにも注目です。















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