幻のN64未発売作『雷の如く ~超高速囲碁~』が約30年後に発見・保存。近完成版を公開

幻のN64未発売作『雷の如く ~超高速囲碁~』が約30年後に発見・保存。近完成版を公開

1990年代にSETAがNINTENDO64向けに開発しながら、発売されることのなかった囲碁ゲーム『雷の如く ~超高速囲碁~』のプロトタイプカートリッジが発見され、その中身が保存されたことが明らかになりました。

本作は現在、保存資料などでは『Kaminari no Gotoku: Choukousoku Igo』というローマ字表記で記録されているタイトルです。海外ゲーム誌では「Like Thunder Go」と紹介されたこともあり、1997年ごろの発売を予定して開発されていました。

今回保存されたのは、64scenerで「Near Final」と分類されている近完成版のビルドです。Team Carrotによってカートリッジのデータがダンプされ、2026年9月22日に保存が完了。Internet Archiveでもデータが公開されています。

●64scener「Kaminari no Gotoku: Choukousoku Igo」Prototype Details
https://www.64scener.com/index.php?page=n64-prototype-details&protoid=187

約3万ドルでeBayに登場した幻のN64カートリッジ

『雷の如く ~超高速囲碁~』のプロトタイプカートリッジが公の場に姿を現したのは、2026年8月のことでした。eBayに約3万ドルという価格で出品され、その後9000ドルまで価格が引き下げられています。

ただし、当初の出品にはゲームが実際に動作していることを示す画像などがなく、カートリッジの中に本当に本作のデータが残されているのかどうかは確認できない状態でした。それでも最終的には購入についての合意が成立し、実物を入手して内容を調査することになります。

なお、9000ドルという金額はあくまでも値下げ後の出品価格です。最終的にいくらで取引されたのかについては明らかにされておらず、「9000ドルで購入された」というわけではありません。

そして2026年9月22日、Team Carrotによってカートリッジの内容が無事に保存されました。約30年前に発売されることなく姿を消したNINTENDO64タイトルの実データが、ついに後世へ残されることになったわけです。

CPU戦やトーナメント、囲碁のチュートリアルも収録

64scenerによると、今回保存されたビルドは「Near Final」、つまり製品版にかなり近い段階のものとされています。ゲームはすべて日本語で、複数のCPUを相手にした対局やトーナメント、さらに囲碁のルールなどを学べるチュートリアルも収録されています。

発見されたカートリッジには、NINTENDO64初期に使われていたタイプのプロトタイプ用基板が採用されています。この点も、本作がNINTENDO64の比較的早い時期から開発されていたタイトルだったことと一致しています。

単なる技術デモなどではなく、複数のゲームモードや学習要素まで用意されていることからも、発売に向けてかなり開発が進んでいた作品だったことがうかがえます。ただし、どの部分が未完成なのかなど、製品版との差異については現時点では明らかになっていません。

『雷の如く ~超高速囲碁~』はどんなゲームだったのか?

本作は、SETAがNINTENDO64向けに開発していた囲碁ゲームです。現在の保存資料では『Kaminari no Gotoku: Choukousoku Igo』と表記されており、当時のSETA公式サイトを調査したNESWORLDでは「Kaminari no Gotoki ~Chō-kōsoku Igo~」という表記も確認されています。

NESWORLDが発掘した当時のSETAによる紹介では、従来のコンピューター囲碁には「コンピューターの思考時間が長い」というイメージがあったことに触れ、NINTENDO64の性能を利用することで高速かつ遊びやすい囲碁ソフトを目指していたことが紹介されています。

CPUの強さは5段階、ハンディキャップは10段階から選択可能だったとされており、さらに「登竜門」と呼ばれるトーナメント形式のサバイバルモードも用意。10人のキャラクターが登場し、対局の状況によって相手の表情が変化する演出なども盛り込まれていたようです。

囲碁エンジンには米国Toyogoの技術を採用

ゲームの中核となる囲碁エンジンには、米国マサチューセッツ州にあったToyogoの技術が関係していました。同社はコンピューター囲碁を研究していたBruce Wilcox氏らによって設立され、囲碁ソフト『The Many Faces of Go』を開発したDavid Fotland氏も関わっています。

NESWORLDの調査によれば、SETAはFotland氏/Toyogoが手掛けた囲碁エンジンをライセンスし、それを利用してNINTENDO64用のゲーム部分を構築していたとされています。

当時の資料では32MbitのNINTENDO64カートリッジを使用し、セーブにはコントローラーパックを利用する予定だったことも確認されています。価格については9800円と記載されていましたが、発売時期についてSETAのWebサイトでは未定となっていた一方、一部の海外ゲーム誌では1997年1月発売予定として掲載されていました。

1997年にはSETAのサイトから姿を消していた

『雷の如く ~超高速囲碁~』は最終的に発売されることなく、1997年後半にはSETAのWebサイトからも姿を消しています。

発売中止に至った具体的な理由は現在も判明していません。SETAはNINTENDO64向けに多数のタイトルを開発しており、本作以外にもレースゲーム『Rev Limit』や『現代大戦略 Ultimate War』など、最終的に発売されなかった作品が存在します。

その後も本作は海外の雑誌記事や発売予定リストなどに名前を残していましたが、実際に動作するゲームデータが確認されることはなく、長年にわたって「存在は知られているものの遊ぶことのできない未発売作品」のひとつとなっていました。

約30年間失われていたN64ソフトがゲーム保存活動によって復活

未発売ゲームの場合、雑誌のスクリーンショットや発売予定表だけが残り、実際のゲームデータが失われてしまうケースも珍しくありません。とくにプロトタイプカートリッジのような開発用メディアは、廃棄されたり個人コレクションに入ったりすれば、その中身を確認できる機会自体が失われる可能性があります。

今回の『雷の如く ~超高速囲碁~』も、ゲームの存在そのものは以前から知られていました。しかし2026年になって実際のプロトタイプカートリッジが発見され、さらにその中身がダンプされたことで、約30年前に開発されたゲームの実データが保存されることになりました。

『MOTHER 3』のNINTENDO64版のような著名な未発売作品とは性格が異なりますが、これまで失われた状態だったNINTENDO64用タイトルが、ほぼ完成に近い状態で発見され、そのデータまで公開されたという点では非常に興味深い出来事です。

ゲームの歴史は、発売された作品だけで作られているわけではありません。こうした未発売作品のプロトタイプが発見・保存されることで、当時メーカーがどのようなゲームを企画し、どこまで開発していたのかを後世から確認できる貴重な資料にもなります。

ABOUT US
アバター画像
retrogamer