MiSTer FPGA用Amigaコア「BigMig」大型更新。16ビット音声、Ethernet、68040モードを追加

MiSTer FPGA用Amigaコア「BigMig」大型更新。16ビット音声、Ethernet、68040モードを追加

MiSTer FPGA向けAmigaコア「BigMig for MiSTer」の大型アップデート「20260831」が、2026年8月31日UTC、日本時間では9月1日に公開されました。

●BigMig for MiSTer/BigMig-Emu68A9
https://github.com/raparici/BigMig-Emu68A9

今回のアップデートでは、新たに16ビットステレオ音声に対応する独自サウンドカード「bigmigAHI」を追加。さらにZZ9000互換のEthernet機能、68040 personality、ベクトル拡張「OMMX」が実装されたほか、OSDの構成も大幅に整理されています。前回の「20260812」と比較して、かなり大きな機能追加となっています。

BigMigで興味深いのは、単純に「高速なAmigaをFPGAで再現する」という構成ではないところです。FPGA側ではMinimig由来のAmigaチップセットを動かしながら、68k CPUの処理はDE10-Nanoに搭載されたARMプロセッサ側へ移しています。今回のアップデートでは、そこにサウンドカードやネットワーク機能まで加わり、開発者が「Big Box Amiga」と呼ぶ独自のハイブリッドAmiga環境へとさらに進化しています。

FPGAでチップセット、ARMで68k CPUを動かす「BigMig」

BigMigは、通常のMiSTer用Minimigとは別に開発されているAmigaコアです。Agnus、Denise、Paula、Gary、CIAといったAmigaのカスタムチップはMinimig由来のロジックをFPGA上で利用しますが、68k CPUについてはFPGA内部のソフトCPUを使用しません。

代わりに、DE10-NanoのHPSに搭載されている2番目のARMコアを専用に使用し、ARMv7向けJIT「Emu68-A9」で68kコードを実行します。つまり、FPGAがAmigaのチップセットを担当し、ARMがCPUを担当するというハイブリッド構成です。

通常のMinimigを置き換えるものではなく、RBFや設定、セーブデータなども分離された別コアとして設計されています。

ARM側で処理する16ビットステレオ音源「bigmigAHI」

20260831で追加された大きな機能のひとつが、独自サウンドカード「bigmigAHI」です。bigmigAHIはFPGA内部にサウンドカードそのものを構築するのではなく、ARM側で処理を行う仕組みになっており、8ストリームの16ビットステレオ音声をARM側でミックスしてMiSTerのオーディオ出力へ渡します。

Amiga側では付属するAHIサブドライバー「bigmigAHI.audio」から利用可能です。従来のPaula音源もそのまま残されているため、Paulaを置き換えるものではありません。

これに伴い、以前実装されていたToccataサウンドカードはゲートウェアから削除され、bigmigAHIへ置き換えられています。

ZZ9000互換Ethernetを追加

もうひとつの大きな追加機能がネットワーク対応です。BigMigではすでにZZ9000互換のRTGグラフィック機能が用意されていましたが、20260831ではZZ9000のネットワーク側にも対応しました。

配布物には「ZZ9000Net.device」とネットワークインターフェース用のサンプル設定が含まれており、開発者はDHCPによるIPアドレス取得や外部からのping受信について説明しています。ただし、TCP/IPスタックそのものがBigMigに含まれているわけではありません。ネットワークを利用するには、Amiga側で別途TCP/IPスタックを用意する必要があります。

またZZ9000のRTG機能を利用する場合にはPicasso96が必要ですが、Picasso96本体はBigMigの配布物には含まれていません。リリースページでは、別途Picasso96 2.0を導入するよう案内されています。

68EC020に加えて「68040 personality」を選択可能に

CPU関連では、新たに「68040 personality」が追加されました。OSDから従来の68EC020と68040を選択でき、68EC020は引き続きデフォルト設定となっています。開発者によると、68040設定ではSysInfoが68040およびFPUを認識し、WhichAmigaでは「MC68040」「68040fpu」として認識されるとのことです。

ただし、これは実際のMotorola 68040をFPGA内に再現しているという意味ではありません。CPU処理自体は引き続きARM上のEmu68-A9 JITが担当しており、Amiga側から見えるCPUの性格を切り替える仕組みです。

またMMU関連のレジスターには応答するものの、実際のアドレス変換を行う完全なMMU実装ではないため、真のMMUによるメモリー再マッピングを必要とするソフトについては注意が必要です。

AMMXソフトにも対応するベクトル拡張「OMMX」

今回のアップデートでは「OMMX」と呼ばれるオープンなベクトル拡張も追加されています。開発者の説明では、Apolloシリーズなどで利用されるAMMX命令セットをOMMXのサブセットとして扱っており、既存のAMMX対応ソフトウェアを実行できるとしています。

ただし、これについても全AMMX対応ソフトの互換性が第三者によって検証されたという意味ではなく、現時点では開発者による実装・説明として捉えておく必要があります。

OSDも再構成。各Zorroボードを個別にON/OFF可能

OSDの構成も見直されています。CPU関連の設定は新設された「Emu68-A9」ページへまとめられ、Mode、JIT Cache、68882、OMMX、JITSTATSなどを設定できるようになりました。

一方、ハードウェア関連は「System」内の「Zorro Boards」へ整理。ZZ9000 graphics、ZZ9000 network、bigmigAHIをそれぞれ個別にON/OFFできるようになっています。

OFFにした場合は単に機能を停止するだけではなく、Amiga側へそのボード自体を通知しない仕様となっています。

このほか、CIA割り込みのラッチ処理も修正。また最大4台のCDドライブ向けに「CD0」から「CD3」までのマウントファイルが追加され、ISO、CUE、CHDイメージの入れ替えにも対応しています。

開発者測定では約520 MIPS

リリースページでは、SysInfo 4.4を使用した性能測定結果も公開されています。開発者による同一環境での測定では、68EC020+68882設定で520.16 MIPS/20.51 MFlops、68040設定では517.74 MIPS/19.38 MFlopsを記録したとしています。

ただし、これらはBigMig開発者自身による測定結果です。第三者によるベンチマークではない点には注意が必要でしょう。

また「Amiga実機を520 MIPS化する」というものでもありません。BigMigはFPGAで再現したAmigaチップセットとARM上のJITを組み合わせたMiSTer独自のハイブリッド環境であり、その構成上で得られた数値です。

導入時は公式MiSTer Mainを上書きしないよう注意

20260831の主要な配布ファイルは、「BigMig_20260831.rbf」「BigMig_20260831.txt」「Emu68.img」「MiSTer_BigMig」の4ファイルです。特に注意したいのが「MiSTer_BigMig」です。

BigMigでは専用のMiSTer Mainを使用しますが、これは通常の「MiSTer」を置き換えるものではありません。「MiSTer_BigMig」という別ファイルとしてSDカードのルートに配置し、「MiSTer.ini」に以下を追加します。

[BigMig]
main=MiSTer_BigMig

公式の「MiSTer」ファイルを上書きしたり、「MiSTer_BigMig」を「MiSTer」へ改名したりしないよう注意が必要です。

また「BigMig_20260831.rbf」と「BigMig_20260831.txt」は同じ場所に同じベース名で配置する必要があります。このTXTファイルにはARMコアをBigMig用ファームウェアへ渡すための起動引数が入っているため、片方だけでは正常に起動できません。

ゲートウェアとファームウェアについてもリリースごとに組み合わせてテストされているため、20260812など別バージョンのファイルを混在させないよう警告されています。

BigMigは、FPGAでAmigaのカスタムチップを再現しつつ、CPUや今回追加されたサウンドカードなどをARM側へ振り分けるという、MiSTerならではのかなり独特なプロジェクトです。

今回Ethernetや独自16ビットサウンドカードまで加わったことで、単なる「高速なMinimig」というよりも、MiSTerのFPGAとHPSの双方を使って拡張カードを備えた仮想的なBig Box Amigaを構築する方向性が、よりはっきりしてきたアップデートといえそうです。

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