『マリオカートWii』をiPhoneやiPadなどで動作させる非公式プロジェクト「KartPad」の最新版「v0.3.0-preview.1」が、2026年9月1日に公開されました。開発を手掛けているのはGitHubユーザーのchrissotraidis氏です。
今回のアップデートで大きく変わったのが、『マリオカートWii』向けの大型改造ディストリビューション「Retro Rewind」が、KartPadの主要なゲームモードとして直接統合されたことです。起動時にオリジナルの『マリオカートWii』と「Retro Rewind」のどちらを遊ぶか選べるようになりました。
●KartPad v0.3.0-preview.1(GitHub Releases)
https://github.com/chrissotraidis/kartpad/releases/tag/v0.3.0-preview.1
●KartPad(GitHub)
https://github.com/chrissotraidis/kartpad
●Retro Rewind Wiki
https://mkwiiki.org/wiki/Retro_Rewind
●Retro Rewind Status
https://status.rwfc.net/

Dolphinによる通常のエミュレーションではなく静的再コンパイルで動作
KartPadの特徴は、一般的なWiiエミュレーターをそのままiPhoneやiPad上で動かしているわけではないことです。
本プロジェクトでは「WiiCompiled」を利用して、『マリオカートWii』のPowerPCコードを事前に変換。Apple製端末向けのARM64コードとして実行し、描画にはMetalを利用しています。
つまり、ゲームプレイ中にPowerPCコードをARM64へ変換するJIT方式ではなく、あらかじめ変換しておく静的再コンパイル方式です。ストリーミングで別のPCからゲーム画面を転送しているわけでもありません。リポジトリでは、モバイル版にPowerPC用JITや実行時コンパイラ、実行コードのダウンロード機能は含まれていないと説明されています。
「Retro Rewind」のダウンロードから検証、導入までアプリ内で対応
v0.3.0-preview.1では、「Retro Rewind」を従来の別途導入するコンテンツではなく、KartPadの正式な選択肢のひとつとして扱う構成に変更されています。
起動画面から「Retro Rewind」を選ぶと、KartPadが対応する公式パックを取得し、ファイルサイズとSHA-256を使って内容を検証。その後、ゲームデータへ導入する仕組みになっています。
KartPadのリリースノートでは、今回対応するパックを「Retro Rewind 6.12.4」としており、12.9インチiPad Proを使った実機テストでは、パックのダウンロード、検証、インストール、起動を経て、実際にひとり用レースまで到達できたと報告されています。
なお、「Retro Rewind」自体は『マリオカートWii』向けの非公式カスタムトラック・改造ディストリビューションです。過去シリーズのコースやカスタムコースなどを多数収録しています。
利用には自分で用意したPAL版『マリオカートWii』が必要
今回公開されたiPhone・iPad向けIPAは無料で配布されていますが、署名されていないため、そのまま端末へインストールすることはできません。利用者側でIPAを再署名する必要があります。
また、ゲーム本体は含まれておらず、対応する『マリオカートWii』のゲームイメージを自分で用意する必要があります。
現在対応しているのは、合法的に入手したPAL版『マリオカートWii』のゲームID「RMCP01」、revision 0です。WBFSまたはISOからゲームデータを読み込むことができます。異なるリージョンやリビジョンなどは、現在の開発プロファイルでは受け付けない仕組みになっています。
IPA自体の容量は約80MiBで、展開された『マリオカートWii』のデータは約2.5GiB。「Retro Rewind」を利用する場合は、さらに約1.72GiBのアーカイブをダウンロードするほか、インストール時の一時的な空き容量も必要です。
配布されているIPAには、ゲームのディスクイメージや抽出済みのコース、テクスチャ、音声、「Retro Rewind」のパック、セーブデータ、Appleの署名情報などは含まれていません。
現時点では公開オンライン対戦は利用不可
「Retro Rewind」では独自のオンラインサービス「Retro WFC」が利用されていますが、2026年9月1日現在、この公開サービスはメンテナンス中です。そのためKartPadからの公開オンライン対戦も現時点では利用できません。
KartPad側では、互換性のある隔離されたWFC環境を使ったテストで、ログインやマッチメイキング、ふたりでのレース、リザルト、レーティング、ロビーへの復帰まで確認しているとのこと。ただし、実際の公開Retro WFCサービスが復旧するまでは、一般ユーザーによるオンラインプレイは確認できない状態です。
なお、この停止は「Retro Rewind」のインストールや起動、オフラインでのゲームプレイには影響しないとされています。Retro Rewind側のWikiでも、現在サービスがテスト/メンテナンス状態にあることが案内されています。
まだ「性能完成版」ではないプレビュー
実機でレースまで動作しているとはいえ、v0.3.0-preview.1はあくまでも実験的なプレビュー版です。
開発側も、KartPadについて「まだ性能面で完成した状態ではない」と説明しています。シェーダーを初めてコンパイルする場面やコースによっては大幅に処理速度が低下することがあり、安定したフレームペーシングについても現段階では完成条件を満たしていません。
実際にリポジトリでは、単純な場面では60FPSに達する一方、「Moonview Highway」では初回実行時に1.3FPSまで低下したテスト結果も公開されています。キャッシュが作成されたあとは改善するケースもありますが、現時点では端末やコースを問わず安定した性能が保証されているわけではありません。
また、現時点でAndroidとApple TVには対応していません。
「Retro Rewind 6.12.4」のバージョン表記には相違も
ひとつ注意しておきたいのが、「Retro Rewind」のバージョン表記です。
KartPadのv0.3.0-preview.1リリースノートとリポジトリでは、対応する公式パックを「Retro Rewind 6.12.4」と明記しています。その一方で、2026年9月1日時点で確認できるRetro Rewindの公式Wikiでは、最新版として「v6.12.2」、公開日として2026年7月22日と記載されています。
このため、少なくとも現時点では「Retro Rewindの一般公開最新版が6.12.4になった」とまでは断定せず、KartPadが指定しているバージョンが6.12.4である、と捉えておいたほうがよさそうです。
権利関係にも未解決部分あり
KartPadは任天堂やApple、「Retro Rewind」運営による公式製品ではなく、独立した非公式コミュニティプロジェクトです。
さらに開発者自身が、公開IPAに含まれている事前変換済みゲームロジックなどについて、上流プロジェクトやゲームコードの再配布に関する権利関係には未解決の部分が残っていると説明しています。
そのため今回のv0.3.0-preview.1についても、公式製品や『マリオカートWii』そのものがオープンソース化されたものではなく、「無料のコミュニティプレビュー」という位置付けで公開されています。
静的再コンパイルによって『マリオカートWii』をiPhone・iPad上で動作させるだけでもユニークなKartPadですが、今回のアップデートではさらに「Retro Rewind」の取得・検証・インストールまでひとつのアプリ内にまとめられました。
まだ性能、オンラインサービス、権利関係などに課題を残す実験的な段階ではあるものの、静的再コンパイルを使ったWiiタイトルの動作環境がどこまで発展していくのかという意味でも、今後の更新が気になるプロジェクトです。















ダンジョンズ&ドラゴンズ ビジュアル大全 半世紀を超えるその歴史とアート









ゲームコンソール2.0