まぁまぁのくせ者。PCエンジンCD-ROM2にも対応したマルチカートリッジ『Turbo EverDrive PRO』レビュー

まぁまぁのくせ者。PCエンジンCD-ROM2にも対応したマルチカートリッジ『Turbo EverDrive PRO』レビュー

PCエンジン用のマルチカートリッジである『Turbo EverDrive PRO』を、ようやく入手することができました。こちらの最大の特徴はHuCardのゲームのみならずCD-ROM2にも対応しているところです。また、少しだけ工夫は必要ですが最近発売されたAnalogue Duoでも使えるところがポイントとなっています。

実際に手に入れてふたつの環境でテストを行ってきましたが、そこから分かった使い勝手の良さや苦手な部分など特徴が分かってきたので、こちらではそのレビューをお届けします。

●Turbo EverDrive PRO
https://krikzz.com/our-products/cartridges/turbo-everdrive-pro.html

ちなみに現時点で公開されている最新ファームウェアのバージョンはV1.04です。こちらは昨年の4月11日にリリースされたものですが、それ以降新たなものは公開されていません。作者のKrikzz氏も認めていますが、現在はPCMのバグが残っており、音量がおかしくなる場面があります。そちらについては、次回以降のファームウェアで修正される予定となっています。

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▲公式フォーラムより。

というのを載せた直後にファームウェアのアップデートが久々にありました。

『Turbo EverDrive PRO』のファームウェアがv1.05にアップデート

目次

ケース入りの高級仕様だが同梱物はシンプル

現在売られている『Turbo EverDrive PRO』は、いずれもプラスチック製のケースに入れられており以前のものよりも高級感があります。ちなみに今回はサウンド面の問題があることが予想されたため、『EDFX』がセットになったコンボで注文しました。

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▲左が『Turbo EverDrive PRO』で右が『EDFX』。
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▲パッケージの背面側には巣ぺっきも記載されています。
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▲マニュアルなどは付属しておらず、チラシのような髪と本体のみという構成。

ちなみに公式サイトに以前のモデルのV2との比較も掲載されていましたが、FPGA自体のチップも異なっており、メモリーやセーブステートなど機能も大幅に強化されていることがわかります。

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カラーバリエーションは2色用意されていますが、今回はホワイトバージョンを選択しています。文字などが金色で描かれており、少し光って見えるところもなかなかクールです。カートリッジさし込み部分とは反対側には、開発用のUSBポートのほかmicroSDカードを差し込むスロットが用意されています。また、その近くにはボタンが用意されており、ゲーム起動中などにメニューを呼び出すこともできます。

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▲今回入手したのは、Model 22のRev.B。
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▲microSDカードスロットやUSBポート、メニューを呼び出すボタンなどが設置。
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実際に使用するときは、公式サイトからダウンロードしてきた最新のファームウェアをmicroSDカードにコピーしておく必要があります。ちなみにフォーマットはFAT32でもexFATでもいけるようですが、exFATは少し動作が遅くなるようなのでFAT32でテストを行っています。

対応しているROMの拡張子は.pceとsgx。CD-ROM2のゲームはタイトルごとにフォルダを作って入れておく必要があります。

●最新ファームウェアの入手先
https://krikzz.com/pub/support/turbo-everdrive/pro-series/firmware/

また、『Turbo EverDrive PRO』でCD-ROM2のゲームを遊ぶときは、別途BIOSを用意する必要があります。公式で推奨されているものは日本の「Super CD-ROM System v3.0」で、BIOSファイルは、microSDカードのedturbo/biosフォルダにコピーしておきましょう。

また、『獣王記』のように、System v1.0のBIOSを利用しないと途中でゲームが進まなくなってしまうようなタイトルについては、ゲームのデータを入れているフォルダ内に特定のBIOSファイルをコピーしておくことでそちらが優先されます。

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▲System v1.0のBIOSファイルを入れておけば、『獣王記』の不具合も回避できます。

PCエンジンコアグラフィックスIIで動作チェック

最初に試したのが、PCエンジンコアグラフィックスIIでの動作チェック。いわゆる実機ってやつですね。ここでかなりのことがわかりましたが、この『Turbo EverDrive PRO』は環境によって使い勝手かかなり変わる印象です。

コアグラフィックスII+HDMIブースター

まずは、比較対象としてPCエンジンコアグラフィックスIIにコロンバスサークルの『HDMIブースター』(たぶん終売)を接続してチェック。この構成では音の問題が発生することが予想できましたが、やはり『スナッチャー』と『うる星やつら STAY WITH YOU』で試しましたが、『Turbo EverDrive PRO』側のサウンド設定でモノラルとステレオのどちらに切り替えても、PCMしか音がならずボイスなどの音は聞こえてきませんでした。

まぁまぁのくせ者。PCエンジンCD-ROM2にも対応したマルチカートリッジ『Turbo EverDrive PRO』レビュー
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▲CD-ROM2の『スナッチャー』。音楽は聞こえるものの、ギリアン・シードのボイスはまった鳴らず。

コアグラフィックスII+EDFX+RAD2Xケーブル

元々ダメだと思っていたものを試して、実際ダメだったため「やっぱりね」という感想でしたが、続いて今回セットで購入した『EDFX』でチェックしてみました。こちらは、CD-ROM2のゲームをプレイするときに先ほどのような音の問題を解決するために作られたオプションデバイスです。PCエンジンの拡張端子に取り付けることでRGBで映像出力ができるというもので(出力端子はメガドライブ2と同じ)、特別な設定などはありません。

●EDFX
https://krikzz.com/our-products/cartridges/edfx.html

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▲こちらが一緒に購入した『EDFX』。
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▲メガドライブ2と同じ出力端子が付けられており、こちらからRGB出力ができます。

今回は、この『EDFX』に『Sega Mega Drive 2 / Genesis 2 RAD2X HDMI cable』を組み合わせてみましたが、特に問題なく映像出力することができました。

●Sega Mega Drive 2 / Genesis 2 RAD2X HDMI cable
https://www.retrogamingcables.co.uk/RAD2X-CABLES/Mega-Drive-2-RAD2X/SEGA-MEGA-DRIVE-2-GENESIS-2-32X-HD-RAD2X-HDMI-480P-CABLE

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▲『EDFX』に『RAD2X』ケーブルを組み合わせたところ。

まずは動作チェックということで、軽くHuCardとCD-ROM2のタイトルをいくつかプレイしてみることに。CD-ROM2については、一部読み込み動作に時間が掛かる印象もありますが、概ね問題ないといえます。また、HuCardについても同様でゲーム自体は普通に起動してプレイすることができました。

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▲先ほどの『HDMIブースター』と比較して、映像はクリアに。サウンド面でも問題ありませんでした。

Analogue Duoでの動作チェック

以前から所有していた『Turbo EverDrive』のV2.5では、理由はわからないもののAnalogue Duoで使うことはできませんでした。それが今回『Turbo EverDrive PRO』を購入するきっかけのひとつにもなっています。

ちなみに『Turbo EverDrive PRO』をAnalogue Duoで使用する場合、ネジの出っ張りが邪魔になってしまうのでそちらを外しておく必要があります。このネジ外すときに、なぜか1本だけ回しにくくなっており、ネジがなめてしまいました。幸いなことにペンチで挟んで回すことができ取り外すことに成功しています。

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▲横から見るとわかりやすいですが、ネジの頭が出っ張っており干渉するため外しておく必要があります。
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▲ねじを2本外したあとは、問題なく使用可能。

先ほどのPCエンジンコアグラフィックスIIとの大きな違いは、やはりくっきりと美しい映像でゲームが楽しめるところです。ためしにHuCardのゲームを『Turbo EverDrive PRO』から起動してみましたが、快適に遊ぶことができました。

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しかし、CD-ROM2のタイトルで音声が聞こえないことに気が付きました。こちらは、Analogue Duo側のメニューからSettings>System>Audio>Hucard AudioをONにすることで解決することができます。

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▲『うる星やつら STAY WITH YOU』で声が出てないことを発見!?
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▲Analogue DuoのメニューからHucard AudioをONにすることで解決。

ちなみに『Turbo EverDrive PRO』でもボタンの組みあわせでメニューが呼び出せるショートカットが利用できますが、同じくAnalogue Duo側でも同様の機能が用意されています。それぞれのボタンの組みあわせが被らないように、あらかじめ調整しておいた方がいいでしょう。

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▲こちらは『Turbo EverDrive PRO』側のショートカットの設定。

PCエンジンスーパーグラフィックス用のタイトルとして発売された『大魔界村』ですが、こちらはAnalogue DuoのSettings>System>SuperGrafxでSuperGrafx onにチェックを入れることでプレイ可能になりました。

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▲PCエンジンスーパーグラフィックス用タイトルを遊ぶ場合は、Analogue Duo側の設定も変更しておく必要があります。

プレイする環境の依存度が高いセーブデータの扱い

今回大きく分けてふたつのゲーム機でテストを行ってきましたが、そのときの環境によって結果が大きく変わったのがゲームのセーブデータの扱いです。これは元のハードの設計にも依存している部分があるため、人によっては不自由に感じる部分だといえます。

コアグラフィックスII+EDFX+RAD2Xケーブル環境でのセーブデータ

コアグラフィックスII+EDFX+RAD2Xケーブル環境でのセーブデータの扱いですが、まずはHuCardから。今回は『ニュートピア』を使用しましたが、そのままではデータをセーブすることはできませんでした。

本来は拡張スロットに『天の声2』などのバックアップ用デバイスを接続しますが、『EDFX』を使用しているため、そちらも利用することができません。ただし、ゲーム内にパスワードが表示されるほか、『Turbo EverDrive PRO』のセーブステート機能も使えるため、それほど大きな問題ではないかもしれません。

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CD-ROM2に関しては、タイトルによって『Turbo EverDrive PRO』でセーブできるものとできないものに分かれました。ちなみにCD-ROM2とPCエンジンスーパーグラフィックス用のタイトルについては、セーブステートも非対応になっています。

●セーブOK
・スナッチャー
・イースI・II
・悪魔城ドラキュラX

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●セーブNG
・うる星やつら STAY WITH YOU
・プリンセスメーカー2
・ときめきメモリアル

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セーブできないタイトルのうち『プリンセスメーカー2』に関しては、パッド端子に接続できる『メモリーベース128』が使えそうですが、いずれにせよ手間が掛かってしまいます。

※『プリンセスメーカー2』に関しては、「時を刻む」を選んでセーブする場所を選んだ後、さらに「時間を記録する」という項目にカーソルを選ぶことで問題なく保存できることがわかりました。

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▲『プリンセスメーカー2』は何度やってもセーブデータが保存されない。

Analogue Duo環境でのセーブデータ

Analogue Duoは実機よりも多少マシですが、少しだけ設定が必要なゲームもありました。まずはHuCardの『ニュートピア』。デフォルトのままではセーブすることはできませんでしたが、『Turbo EverDrive PRO』側のOptionsメニューからDefault EXP Device(本体の拡張端子に接続しているデバイスの種類)をTNK2にしておくことでセーブが可能になりました。

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▲『ニュートピア』では、セーブ領域の初期化メニューが表示され保存が可能に。

セーブはできるようになったものの、その代わりといってはなんですが不具合が発生してしまったのがセーブステートです。こちらはAnalogue Duoではかなり不安定で保存したセーブデータを読み込んだあと画面がバグってしまうことも。この環境で遊ぶときは、あまり使わない方がいいのかもしれません。

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▲セーブステートは、ゲームがバグるなどかなり不安定。

CD-ROM2のタイトルでは、実機で問題がなかった『スナッチャー』、『イースI・II』、『悪魔城ドラキュラX』に加えて、『うる星やつら STAY WITH YOU』、『ときめきメモリアル』は問題なくセーブすることができます。

しかし、『プリンセスメーカー2』だけはどんなに設定を変えてもセーブできなかった、あるいはセーブできたように見えてもデータを呼び出すことができないため、『メモリーベース128』などを利用するしか手がなさそうな印象です(※実際に使えるかは未チェック)。

ちなみにAnalogue Duoで普通に『プリンセスメーカー2』のディスクを入れても、やはり同様にセーブすることはできませんでした。

※『プリンセスメーカー2』に関しては、「時を刻む」を選んでセーブする場所を選んだ後、さらに「時間を記録する」という項目にカーソルを選ぶことで問題なく保存できることがわかりました。

●セーブOK
・スナッチャー
・イースI・II
・悪魔城ドラキュラX
・うる星やつら STAY WITH YOU
・ときめきメモリアル
・プリンセスメーカー2

●セーブNG
・プリンセスメーカー2

こうしたセーブデータに関しては、先ほど述べているように遊ぶ側の環境によっても変化します。そのため、タイトルによっては時分の思い描いているような使い方ができない場合もあるので注意が必要です。

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高島おしゃむ
ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。