Anbernicより、2023年5月6日より発売されたばかりの新型中華エミュ機『RG353PS』をご提供していただきました。今回はこの『RG353PS』のレビューをお届けします。
『RG353P』とほぼ同スペックの廉価版?
ぱっと見の印象は以前ご紹介した『RG353P』と瓜二つ。実際のスペック自体も、CPUはRK3566を搭載しており、液晶もIPSの640×480ピクセルと同じ。違いを挙げるとするとRAMが2GBから1GBに減り、OSがデュアルからLinuxオンリーになった程度といった感じです。
これだけ見ると単なる廉価版ともいえそうですが、価格差は6000円ほど安く1万2699円とお手頃なマシンとなっています。
フラグシップマシンと同性能ながら価格は1万円安い
家電やPCなど、一般に販売されている製品にはいくつかのランクに分けられている場合があります。例えば製品の種類が3種類あり、それぞれに値段の差がある場合は真ん中の製品が選ばれる傾向にあるそうです。これはマーケティング的には「松竹梅の法則」と呼ばれており、最も高いフラグシップの製品や、機能を絞った一番安い背品は、それぞれ購入したときに失敗したくないという心理が働き、中間の価格帯を選ぶ人が多いのだとか。
ちなみに筆者の場合、いくつかの商品ラインナップがある場合、基本的には高いものを買ってしまう傾向にありますが、この『RG353PS』はどんなユーザーに向いた商品なのか深掘りしてみることにしました。
Anbernicの商品ラインナップがどのように決められており、それぞれの型番にどのような意味が込められているのかまったくわからないのですが、単純にストアで「RG353」という同じ型番が付けられた商品を探してみたところ、『RG353PS』を除くと3つの商品がヒットしました。それぞれ価格順に並べてみると以下のような感じに。
【松】RG353M
価格:2万1499円
【竹】RG353P
価格:1万8799円
【梅】RG353VS/RG353V
価格:1万3999円/1万7299円
最後の『RG353VS/RG353V』は、厳密にいうと2機種に分かれていますが、今回はその中の上位である『RG353V』を対象にしておきます。
見た目自体も結構違いがあったためこれまでそれほど意識はしていなかったのですが、それぞれのマシンが価格差に見合うほどのスペックの違いがあるのかチェックしてみたところ……それほど大きな違いはないことがわかりました。
スペックの共通項目
●CPU
RK3566 Quad-Core 64 bit Cortex-A55、最大1.8GHz
●ディスプレイ
3.5インチIPSパノラマ、ゼロ距離 OCA 全密着/ 640×480、マルチタッチ
●サポートしているエミュレーター
PSP、ドリームキャスト、セガサターン、PlayStation、ニンテンドーDS、NITENDO64、NEOGEO、ゲームボーイアドバンス、ゲームボーイ/カラー、ファミコン、スーパーファミコン、メガドライブ、セガマスターシステム、ゲームギア、MSX、PCエンジン、ワンダースワンなど
上記外の違いとしては、スピーカーやボディの素材、といったところです。つまり、エミュレーターゲーム機としてみるとさほど大きな違いはありません。
……と、かなり前置きが長くなりましたが、そこで今回の『RG353PS』です。基本的には『RG353P』と似ているのですが、上記のマシンたちと共通点は同じです。つまり、フラグシップの『RG353M』と比較して1万円ほど安いにもかかわらず、ほぼ同じようなパフォーマンスでゲームを楽しむことができます。しかしも製品ラインナップ的には売れ筋の竹的な製品にあたる『RG353P』のいいところを引き付いてでいるということに!?
カラーバリエーションは3種類
Anbernic『RG353PS』のカラーバリエーションは、クリアホワイト、グレー、クリアパープルの3色で、いずれも16GBのmicroSDカードが付属しています。このmicroSDカードにはOSのほかゲームのROMデータも入れることができますが、ディスク系のゲームをインストールするとすぐにパンパンになってしまうため、別途用意した方がいいでしょう。
今回は見た目が良さそうということで、クリアホワイトを選択しています。
『RG353P』の場合は、ふたつのmicroSDカードを差し込み直すことでLinuxとAndroidの切り替えが行えるようになっていましたが、本気はLinuxのみというシンプルな構成です。FAT32などでフォーマットしておいたmicroSDカードを、開いているスロットに差し込むことで、各機種ごとの専用フォルダーが自動で作られます。
そこにROMデータを入れていくだけで特に何の設定もせずに、エミュレーター側で読み取ってくれるのでかなり楽ちんです。
UIもシンプルだが扱いやすい
本機では、UIにEmulation Stationが採用されており、ゲームのROMも非常に選択しやすくなっています。今回は紹介しませんが、UI自体はいくつかテンプレートが用意されているので、好みに合わせて変更して良いでしょう。
とりあえずデフォルトのものが使いやすいため、変更せずに使用しています。
十字キーでそれぞれのメニューを切り替えていきAボタンを押すことでROM選択画面が表示されます。後ゲームを選んでAボタンを押すことで起動ができます。
プリセットで入っている謎のゲーム! オススメはファミコン版の『2024』
ここ最近のAnbernicの中華エミュ機には、以前のように明らかに違法なROMデータなどは入っていることはなくなりましたが、それでもよくわからないゲームがいくつかプリインストールされていました。『DOOM』はともかく、中には『プリンセス・オフ・ペルシャ』や『ボンバーマン』など権利関係がどうなっているのかよくわからないものの入っています。
そうした中で、個人的にお気に入りのソフトがファミコン版の『2024』です。スマホなどで多数配信されている定番のパズルですが、シンプルに遊べる分、ついつい時間を忘れて遊んでしまいます。
また、ソフト自体の出来映えもヘタなスマホ用のアプリよりも良くできており、そこもお気に入りのポイントです。
第3世代や第4世代のゲーム機中心なら快適にプレイ可能
RK3566を搭載した中華エミュ機全般にいえそうなことですが、エミュレーターとしてのパフォーマンスとしては、第3世代のファミコンや第4世代のPCエンジン、メガドライブ、スーパーファミコンあたりはほぼ快適に遊ぶことができます。
第5世代のセガサターンやPlayStation、NINTENDO64は、ゲーム自体は遊べるものの、ムービーシーンでカクついたりフレームレートがさほど出ないなど、もうひとつパフォーマンスが足りないような感じです。そのため、ある程度快適に遊べるゲームに絞って使用した方が、ストレスがないかもしれません。
そうした中で、特に本機で遊んでいて快適に感じたものをピックアップしてご紹介してきます。
液晶の感じがオリジナルに近いゲームボーイ&ゲームボーイアドバンス
ゲームボーイやゲームボーイカラー、ゲームボーイアドバンスは、液晶画面の表示がオリジナルのディスプレイを再現したような表示になっており、こちらはかなり雰囲気が出ていました。ジャイロを使ったソフトなど一部のゲームは遊べないものもありますが、パフォーマンスも良好で本機との相性もバッチリといった印象です。
ちなみにゲームボーイアドバンスのエミュレーターですが、毎度おなじみの『AGSエージングカートリッジ』でパフォーマンスをチェックしてみたところ、メモリーのみエラーになりましたが、それ以外はテストにパスしていました。
デフォルトで設定されているのは『mGBA』ですが、エミュレーターの精度としてもなかなかです。
ニンテンドーDSでは画面の表示方法を瞬時に切り替え可能!
今回のテストで最も驚かされたのが、ニンテンドーDSのエミュレーターでした。こちらはL2ボタンで縦と横2画面の切り替えができ、R2ボタンで2画面と1画面の切り替えが瞬時に行えます。2画面から1画面に切り替えるときは、基本的に上画面(縦のとき)または右画面(横のとき)が選ばれます。
この法則をわかっていることで、場面に合わせて使い分けが出来るということですね。ためしに『ドラゴンクエストVI』を起動してみたのですが、こちらはゲームのパフォーマンスも含めてかなり快適にプレイ出来ました。
入門機としてだけではなくいつでも持ち歩ける相棒としてもおすすめ
というわけでひと通り本機をチェックしてみたのですが、最初は何を押せばいいのかよくわからない機種だなと思っていたものの、コストパフォーマンスがかなりいいことがわかり、なおかつエミュレーターゲーム機としてもややこしい機能がほぼないため誰でも扱いやすいマシンであることがわかりました。
初めて中華エミュ機を購入する人のエントリーモデルとしても最適ですが、0.209キログラムとかなり軽いため、いつでも持ち歩けるサブマシンとしてもよさそうです。なによりも、1万2699円というお手頃な価格が最大の魅力といえるでしょう。
そろそろ新しいマシンを1台ほしいなと思っている人は、ぜひこちらも検討対象に入れてみてください。