Guimli氏は2026年9月13日、セガのアーケード基板「NAOMI」「NAOMI 2」向けの非公式診断BIOS「NaomiDIAG」v0.13を公開しました。今回のアップデートでは、実機で診断結果の音声が出なかった問題が修正されたほか、RAM検査の読み戻し処理や画面上の結果表示などが改善されています。
NaomiDIAGは、ゲームを起動するための一般的なBIOSとは異なり、故障したNAOMI/NAOMI 2基板の状態を調べるために開発されている診断用BIOSです。CPUやRAMなどを順番にテストし、その結果をシリアル出力、画面表示、音声の最大3系統で伝える仕組みが用意されています。
エミュレーターでは音が出るのに、実機では無音だった原因を修正
今回のv0.13で大きく改善されたのが音声出力です。これまでのNaomiDIAGでは、エミュレーター上では問題なく音声が再生される一方、実際のNAOMI基板では音が出ないという問題がありました。
原因となっていたのは、NAOMIに搭載されているサウンドプロセッサー「AICA」の初期化処理です。AICAでは各チャンネルにローパスフィルターがあり、関連する5つのレベルレジスターはリセット直後にゼロ、つまりフィルターが閉じた状態になっています。しかし、これまでのNaomiDIAGではこの値を書き換えていなかったため、音声データや出力レベル自体が正常でも実機では音が出ない状態になっていました。
Guimli氏は、MAME上でオリジナルのNAOMI BIOSとNaomiDIAGをそれぞれ起動し、AICAのレジスター内容を比較することで違いを発見したと説明しています。オリジナルBIOSでは必要な値が書き込まれていましたが、NaomiDIAGではその処理が抜けていました。フィルターの挙動を再現していないエミュレーターではこの問題が表面化せず、実機で初めて無音になるという、ハードウェア診断ツールならではの問題だったようです。
この比較ではほかにもAICA周辺の初期化処理に違いが見つかっており、ARM7のリセット状態やDSPのリングバッファーについてもオリジナルBIOSに合わせた修正が行われています。
RAMの読み戻し処理を整理。結果表示も見やすく改善
RAM検査についても処理の見直しが行われています。従来はRAMへ書き込んだデータを読み戻す際、データそのものを比較する処理に加えて、CRC-32を2回計算していました。
開発者によれば、すでにすべての32ビット語を期待値と直接比較しているため、このCRC計算は異常検出という点では重複しているとのこと。そのためv0.13では標準設定でCRC計算を無効化し、32ビット語あたりの読み戻しループを59命令から17命令へ削減しています。これは読み戻しループの処理量について示された数字であり、RAM検査全体が必ず同じ割合で高速化されるという意味ではありません。
診断結果の画面表示にも手が加えられました。正常終了したバステストなどが画面上の行を占有し続けないようにしたほか、メモリー検査終了後には進捗バー用の領域も結果表示に利用することで、表示可能な行数を従来の19行から22行へ増やしています。
また、サウンドRAMはAICAの背後にある16ビット幅のメモリーですが、32ビットアクセス時に同じ物理データ線が2回使われる関係で、ひとつの異常なデータ線が結果上では重複して表示されることがありました。v0.13では、実際に存在する16本のデータ線に合わせて結果をまとめるよう修正されています。
導入には27C160 EPROMへの書き込みとBIOS交換が必要
NaomiDIAGは、PC向けアプリのようにファイルをダウンロードしてそのまま実行するタイプのツールではありません。NAOMI/NAOMI 2基板のIC27に搭載されているBIOSを、NaomiDIAGを書き込んだEPROMへ交換して利用します。
v0.13では27C160 EPROM用の2 MBイメージとして、英語版の「NaomiDIAG_EN.bin」とフランス語版の「NaomiDIAG_FR.bin」が配布されています。同じイメージでNAOMIとNAOMI 2の両方に対応しており、どちらの基板なのかは起動時に判別される仕組みです。日本語版は現時点では用意されていません。
そのため実際に利用するにはEPROMライターなどの機材と、基板上のBIOSを交換するための知識が必要です。一般ユーザー向けのユーティリティというよりは、NAOMI基板を修理・保守しているユーザー向けのツールといえるでしょう。
まだ開発途中の診断項目も
NaomiDIAGではCPUや各種RAM、RTC、DIMMボード、カートリッジなど複数の項目をチェックできますが、すべての診断機能が完成しているわけではありません。
READMEによると、設定用EEPROMの読み出しや本格的なJVS I/Oボードのテストについては、MIEへZ80用コードをアップロードする処理が必要となるため、今後の作業として残されています。また、基板上の一部RAMについては物理的なICとの対応関係に未確定な部分もあり、診断結果だけですべての故障箇所を確実に特定できるツールというわけではありません。
開発者はREADME上で、NaomiDIAGを利用して異常が報告されたチップを交換し、実際に基板を修復できた事例も紹介しています。ただし、これは開発者自身による報告であり、今回当サイトで実機による追試を行ったものではありません。
古いアーケード基板の修理では、「起動しない」という症状から故障している部品を絞り込む作業そのものが大きなハードルになります。NaomiDIAGは、そうしたNAOMI/NAOMI 2の保守作業を支援することを目的としたプロジェクトです。今回のv0.13では、実機特有の音声初期化問題がひとつ解消され、RAM検査や診断結果の確認についても使い勝手が改善されています。















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