MiSTer FPGA向けに開発されている非公式のDVD-Video再生プロジェクト「MiSTer DVD」のv0.3.0が、2026年9月1日にGitHubで一般公開されました。
●MiSTer DVD v0.3.0 Release
https://github.com/owenb321/MiSTer_DVD/releases/tag/v0.3.0
●MiSTer DVD公式リポジトリ
https://github.com/owenb321/MiSTer_DVD
当サイトでは8月30日に、本プロジェクトがクローズドベータへ移行し、DVDメニューやISOファイルの再生、CRTへの出力などが動作するようになったことをお伝えしました。
その時点では音声出力はステレオで、サラウンド音声には未対応となっていましたが、今回公開されたv0.3.0では新たにHDMI経由でDolby Digital(AC-3)/DTSの5.1ch音声をAVアンプなどへパススルーできるようになっています。しかも、追加のデジタル音声出力ボードは必要ありません。
MiSTerのHDMI端子からそのままDolby Digital/DTSを出力可能に
これまで「MiSTer DVD」でAC-3やDTSのビットストリームを外部へ出力する場合、Digital I/O BoardのTOSLINK端子、あるいはAnalog I/O Boardのmini-TOSLINK端子を利用する必要がありました。
v0.3.0では「Audio Out = Passthru」を選択することで、AC-3またはDTSの圧縮されたビットストリームをMiSTer本体のHDMI端子から出力できるようになっています。
AVアンプ側でDolby Digital/DTSをデコードする仕組みであるため、MiSTer側に5.1ch分の非圧縮音声を生成する必要はありません。開発者によると、この方式ならMiSTerからHDMI送信チップへ接続されている1本のI2Sラインで扱えるとのことです。
このHDMIパススルーを利用するには、通常のMiSTer Mainではなく、プロジェクトに含まれているカスタムMain「MiSTer_DVDcss」が必要です。
接続しているAVアンプなどのEDIDがAC-3またはDTSへの対応を通知している場合は自動的に有効になります。対応機器にもかかわらずEDIDで通知されない場合は、「MiSTer.ini」の[DVD]セクションへ以下の設定を追加する方法も案内されています。
dvd_hdmi_bitstream=2
なお、AVアンプやテレビ側がAC-3/DTSをデコードできない場合はノイズが出るのではなく、HDMI音声は無音になります。
パススルーできるのはAC-3とDTS。LPCMとMP2はDecodeを使用
注意しておきたいのが、HDMIパススルーで扱える音声フォーマットです。今回対応したのはAC-3とDTSで、LPCMとMPEG-1 Layer II(MP2)は「Passthru」を選択すると無音になります。これらの音声を収録したDVDでは「Decode」モードを利用する必要があります。
また、非圧縮のマルチチャンネルLPCMについては、MiSTerハードウェアからHDMI送信チップへ必要な配線が用意されていないため、5.1chのままHDMIへ送信することはできないと説明されています。
一方でAC-3については、これまで無音になっていた1.0chのモノラルや、3/0、2/1、3/1、2/2といったチャンネル構成にも対応しました。現時点で例外となっているのは1+1のデュアルモノです。
DVDメニューの「LINK FAIL」問題も大幅に改善
v0.3.0では音声だけではなく、DVDメニューの互換性も改善されています。これまでは、一部のDVDでメニュー上の異なる選択肢を選んでもすべて同じ場所へ進んでしまったり、「LINK FAIL」と表示されて先へ進めなくなったりするケースがありました。
開発者が505枚のDVDを調査したところ、今回修正した処理を利用する構造が178枚で確認されたとのこと。そのうち、特に問題につながる構造を持っていたものは70枚ありました。
修正によって6枚は起動不能の状態から正常にメニューを操作できる状態になり、505枚を対象としたテストでは今回の変更による回帰は確認されなかったと報告されています。
暗い場面でフィルム判定が不安定になる問題も修正
映像関連では、暗い場面でフィルム映像の判定が不安定になる問題も修正されました。ほぼ真っ黒なフレームには判定に利用できる有効な情報が少ないため、これまでは映画の途中で検出状態が切り替わってしまう場合がありました。今回の更新では、判定材料として利用できないフレームを無視するよう変更されています。
123枚のDVDを使った調査では15枚で改善が確認され、悪化したディスクはなかったとのことです。
クローズドベータから一般公開へ
当サイトが8月30日にお伝えした段階では、「MiSTer DVD」はクローズドベータとしてテストが進められており、一般ユーザー向けにはまだ公開されていませんでした。
今回のv0.3.0ではGitHubのReleaseページからRBFやインストール用ファイルなどを一般ユーザーも入手できるようになっており、実際に試せる段階へ進んだことになります。
GitHubのリポジトリでは現在も本プロジェクトを「pre-release alpha」と位置付けているため、完成版というわけではありません。また、Retro RemakeやMiSTer本体の公式機能ではなく、コミュニティによって開発されている非公式プロジェクトです。
SuperStation OneでのHDMIパススルーは未検証
もうひとつ重要なのが、SuperStation Oneでの動作についてです。当サイトではこれまでSuperStation One/SuperDockと組み合わせたDVD再生について紹介してきましたが、今回追加されたHDMI経由のAC-3/DTSパススルーについて、開発者が実機で確認しているのはDE10-Nanoです。
SuperStation Oneは基板そのものが再設計されており、HDMI送信チップがDE10-Nanoと同じものかどうかも確認できていないため、開発者は「未テスト」と明記しています。
したがって、現時点ではSuperStation Oneでも同じようにDolby Digital/DTS 5.1をHDMIから出力できると断定することはできません。
また、今回追加されたDVDドライブのリージョン確認・設定ツールについても、リージョンを読み取る処理は実機で確認されている一方、設定する処理は未検証です。DVDドライブにはリージョン変更回数の制限もあるため、安易に変更しないほうがよさそうです。
わずか数日前まではクローズドベータで、サラウンド音声にも対応していなかった「MiSTer DVD」。今回のv0.3.0では一般公開へ移行すると同時に、追加I/Oボードを用意することなくMiSTer標準のHDMI端子からDolby Digital/DTSの5.1ch音声を取り出せるようになりました。
まだアルファ段階のプロジェクトではあるものの、DVDプレイヤーとして利用できる機能は着実に増えています。















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