スーパーファミコンはその発売時期により、様々なモデルが登場しました。中でも後期に発売されたモデルはふたつのビデオチップをひとつに統合した「1Chip」と呼ばれ、それまでのモデルよりも輝度が高く見栄えがよく見えるのが特徴となっています。
この1Chipモデルも、発売時期によって「SNS-CPU-1CHIP-01」「SNS-CPU-1CHIP-02」「SNS-CPU-1CHIP-03」という3つのモデルに分かれています。以前スーパーファミコンの後期に発売された、1Chipモデルを調査したことがありましたが、そのときに感じたのは1Chip-01や1Chip-02と比較して、圧倒的に1Chip-03のタマが少ないということでした。
以前見かけたときは4万円ほどのプレネで売られていたため諦めていましたが、今回比較的安価で入手することができたため、今回はその性能を他のモデルと比較してチェックしていきたいと思います。
ちなみに、以前の調査ではシリアル番号のS252226XXが1Chip-03の目安だと思っていましたが、今回入手したモデルはなんとシリアル番号がSM120688XXでした。もしかしてと思い中身を確認しましたが、「SNS 1CHIP 03」の刻印を見つけホッとしました。
各モデルとの比較
ハードウェア的な特徴は後回しにして、まずは手持ちのスーパーファミコンからノーマル、1Chip-01、1Chip-02、1Chip-03を用意。それぞれの映像を比較してみました。今回映像の出力に採用したのは、
Retro Gaming CablesのRAD2Xケーブルです。こちらは、今話題のアップスケーラー『RetroTINK 5X-Pro』の前モデルである『RetroTINK2x』と、同等のテクノロジーを採用したケーブルとしても有名ですね。
4枚の画像を並べてみると、輝度の高さはノーマル<1Chip-01<1Chip-02=1Chip-03というような感じに見えます。
1Chip-03と1Chip-02の一部モデルではCSYNC信号を出力するチップが省略されている?
1Chip-03特有のハードウェアの特徴として、それまでのモデルでは搭載されていたCSYNC信号を出力するためのチップが省略されている点が上げられます。
このCSYNC信号(複合信号)は、水平同期信号(HSYNC)と垂直同期信号(VSYNC)で構成されるタイミング信号のことを差しています。コンポジット同期のRGBSCARTケーブルでは、ジェイルバーとも呼ばれることのある縦縞などのビデオ効果を軽減するのに役立ちます。
簡単にいうと、映像をより安定して出力するためのものといった感じですね。必ずしもすべての環境で必要というわけではありませんが、映像が縦縞などが出る場合などはチェックする必要があります。
●参考文献:RGBと同期の謎を解き明かす
https://www.retrogamingcables.co.uk/composite-video-vs-composite-sync
というわけで、以前は1Chip-03で欠けているCSYNC信号を補うために、ジャンパーで配線するという手法がとられていました。しかし、そもそも欠けているチップを補えるわけではないため、現在では推奨されていません。
また、不足したチップを後付けできるパーツも個別で販売されています。たしかにこれらを使って改造を行うことで、CSYNC信号の出力が行えるようになります。とはいっても、ハンダ付けなど改造のハードルはそれなりにあるため、万人にお勧めできません。
●スーパーファミコンSNS-CPU-1CHIP-03CSYNC復元/修理キットC-SYNC
https://console5.com/store/super-nintendo-sns-cpu-1chip-03-csync-restore-repair-kit-c-sync.html
改造不要でもっともオススメなのは、「sync-on-lumaケーブル」を利用することです。たとえば、Retro Gaming Cablesで販売されている『スーパーファミコンNTSCファミコンSNESRGB SCART PACKAPUNCH PRO CABLE』は、1Chip-03で利用することで「sync-on-lumaケーブル」として使うことができます。
●スーパーファミコンNTSCファミコンSNESRGB SCART PACKAPUNCH PRO CABLE
https://www.retrogamingcables.co.uk/packapunch-super-nintendo-entertainment-system-snes-n64-rgb-av-scart-cable-ntsc-gold-scart
今回画像の比較用として、最初にジャンクになった1Chip-02のスーファミを開けてチェックしたのですが、なんとこちらの基板は1Chip-03同様にCSYNC信号のチップがカットされていました。噂には聞いていましたが、 1Chip-02の一部にもこのようなバージョンがあるようです。
上記で使用した写真は、ジャンクではないほうの 1Chip-02 です。
画像比較でもご紹介したように、1Chip-02と03については、やや輝度が高すぎる傾向にあります。こちらに関しては、750オームの抵抗を取り付けることで解消することができるようです。
ちなみに、1Chip-03であっても今回の映像撮影で使用した Retro Gaming CablesのRAD2Xケーブル では、1Chip特有のものを除く映像に関する不具合はとくに感じなかったので、あまり気にしなくてもいいのかもしれません。
また映像的な差もほぼないため、比較的に入手のしやすい 1Chip-02でCSYNC信号のチップがカットされていないモデルを選ぶのがベストといえるでしょう。
もう1点。こちらはすべての1Chipモデルに共通していましたが、一部のゲームでグリッチが発生することがありました。1Chipというと映像が綺麗というイメージがありますが、必ずしも良い面ばかりではないので注意が必要です。