PSPでショウジョウバエの神経回路が動く!? 糖に反応する実験ソフト『PSP Fly Arena』が公開

PSPでショウジョウバエの神経回路が動く!? 糖に反応する実験ソフト『PSP Fly Arena』が公開

PSPでゲームではなく、ショウジョウバエの神経回路をシミュレーションするという、ユニークなHomebrewソフト『PSP Fly Arena』が公開されています。2026年10月19日には海外のPSPコミュニティでも紹介され、GitHubやデモの配布先が共有されました。

本作は、saruar-ryskaliyev氏がGitHubで公開しているプロジェクトで、実際のショウジョウバエの神経回路データを利用して、仮想空間での行動を再現しようというものです。PSPの画面に糖を置くと、それに反応してハエの動きが変化するなど、一般的なゲームとはひと味違った実験が楽しめます。

●『PSP Fly Arena』公式GitHub
https://github.com/saruar-ryskaliyev/psp-fly

PSPでショウジョウバエの動きを再現する実験ソフト

『PSP Fly Arena』は、PSP-2000で動作することを想定して開発されたHomebrewソフトです。最大の特徴は、単にプログラムでハエを動かすのではなく、実際のショウジョウバエから得られた神経回路の接続データを利用していることです。

この神経回路の接続関係をまとめたデータは「コネクトーム」と呼ばれています。神経細胞同士がどのようにつながっているのかを記録したもので、本作ではそのデータをもとに神経活動を計算し、ハエの行動に反映させています。

画面には、ハエを表す三角形のような小さなオブジェクトが表示され、2Dのフィールド内を動き回ります。ハエは神経回路を利用した仕組みによって方向を変えたり、立ち止まったりします。

もちろん、ショウジョウバエの脳を丸ごとPSP上に再現しているわけではありません。実際の神経回路データと、開発者が独自に組み立てた制御モデルを組み合わせることで、こうした動きを実現しています。

糖を置くとハエが反応! 神経回路データを使って行動をシミュレーション

本作で面白いのが、PSPのボタンを使ってハエのいるフィールドに干渉できることです。

アナログスティックでカーソルを移動し、×ボタンを押すと、その場所に糖を配置できます。すると、フィールド内を動いているハエが糖の領域に入った際に、摂食に関係する神経回路が反応。ハエがその場に立ち止まる動作をシミュレーションします。

このとき、画面には摂食状態を示す「FEED」や、関係するニューロンの活動状況なども表示されます。ハエが糖を消費すると、その領域は徐々に小さくなり、約10秒で消滅。その後は再び移動を始めます。

また、△ボタンで障害物を配置したり、○ボタンで近くにある物体を削除したりすることも可能です。

ただし、ハエが離れた場所にある糖を見つけて、自分から近づいていく能力を完全に再現しているわけではありません。基本的にはフィールドを動き回り、糖の領域に入ったときに神経回路が反応する仕組みです。

それでも、実際の生物の神経回路データをもとにPSPの画面上でハエの反応を観察できるというのは、なかなか興味深い試みではないでしょうか。

本物の神経回路データを利用する一方、まだ課題も

このシミュレーションでは、ショウジョウバエの神経回路を解析した『FlyWire』のデータが利用されています。

糖への反応を扱う回路には、2774個のニューロン(神経細胞)と、9万1598のシナプス(神経細胞同士の接続)が使用されています。つまり、神経細胞がどのようにつながり、刺激を伝えていくのかという情報を利用しているわけです。

ただし、これらの数字はショウジョウバエの脳全体ではなく、今回取り出された糖への反応に関係する回路の規模です。

また、ハエが移動する方向を決める一部の仕組みや、過去に糖があった場所へ向かうような動作などには、開発者が手作業で構築したモデルも使われています。

さらに、視覚に関する神経回路のモデルも組み込まれていますが、現段階では十分に機能していない部分もあります。たとえば、フィールド内に障害物を設置することはできるものの、ハエが視覚情報から障害物を認識し、自発的によけて移動するところまでは実現できていません。

このように『PSP Fly Arena』は、ショウジョウバエの脳の働きを完全に再現したものではなく、実際の神経回路データを利用して、どこまで行動をシミュレーションできるのかを試す実験的なプロジェクトです。

現在、GitHubではソースコードが公開されており、PSP向けのビルド方法や、PSP-2000への転送方法が説明されています。PSPエミュレーター『PPSSPP』での実行方法も掲載されていますが、当サイトでは実機での動作検証は行っていません。

2004年に登場した携帯ゲーム機のPSPが、20年以上の時を経て、このような神経科学の実験に利用されるというのは面白いところです。

PSPのHomebrewといえば、ゲームやエミュレーター、便利なツールなどが思い浮かびますが、『PSP Fly Arena』はそれらとはまったく異なる方向性のソフトウェアといえるでしょう。

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