セガが1994年に発売したアーケード用レースゲーム『デイトナUSA』を、PSPで動作させる非公式移植プロジェクト「Daytona USA Recomp for PSP」のソースコードがGitHubで公開されました。
開発したのは木々諒(Makoto Kiki)氏で、2026年10月12日にはRedditでも公開を報告しています。今回のプロジェクトで特徴的なのは、一般的なアーケードエミュレーターを使って動作させるのではなく、オリジナルのプログラムをPSP向けに変換することで、ネイティブ動作を実現している点です。
すでにPSP-3000の実機で動作が確認されていますが、現時点ではオリジナルと同等の速度には達しておらず、さらなる最適化が進められています。
●開発者GitHubリポジトリ
https://github.com/kiki-macoto/DAYTONA-USA-for-PSP
アーケード版のプログラムをPSP向けに変換
『デイトナUSA』は、セガのアーケード基板「Model 2」を採用したレースゲームです。今回のプロジェクトでは、1994年のアーケード版にあたる「Revision A」を対象としています。
移植のベースになっているのは、Ben Templeman氏らが開発した「daytona-arcade-recomp」というプロジェクトです。こちらを元に、木々氏がPSP向けへの移植を行っています。
通常、PSPのような異なるハードウェアでアーケードゲームを動作させる場合、エミュレーターを使用する方法が考えられます。しかし、今回採用されているのは「静的リコンパイル」と呼ばれる方式です。
具体的には、アーケード基板で使用されているCPUの「i960」や、3D演算用プロセッサの「TGP」、サウンド用の「68000」のプログラムをあらかじめC++に変換し、それをPSP向けにコンパイルしています。
また、グラフィックの描画にはPSPに搭載されているGPU(GE)を利用し、音声もPSPの機能を使って出力する仕組みです。
つまり、アーケード基板の動作をそのままエミュレーションするのではなく、ゲームのプログラム自体をPSPで実行できる形に作り直しているというわけです。
PSP-3000で動作を確認!ただし速度はオリジナルの約75パーセント
開発者が公開した情報によると、PSP-3000にカスタムファームウェアの「ARK-5」を導入し、CPUを333MHzに設定した環境で動作を確認しています。また、PSP用エミュレーターの「PPSSPP 1.19.3」でも動作が確認されています。
気になる処理速度ですが、レース中は1フレームあたり約23ミリ秒となっており、オリジナルのアーケード版と比較すると、およそ75パーセントの速度にとどまっているそうです。
開発者はRedditへの投稿で、平均約25fps、タイムアタックモードでは約30fpsで動作すると説明しています。
さらに、処理負荷を軽減するため、描画は基本的に2フレームに1回となっており、負荷が高い場面では3~4フレームに1回まで自動的に間引く仕組みが採用されています。
レース中に登場する車両の台数も削減されています。オリジナルのアーケード版では初級40台、中級20台、上級30台となっていましたが、今回のPSP版では初級20台、中級10台、上級10台に変更されています。
こうした制限はあるものの、PSPという携帯ゲーム機でアーケード版『デイトナUSA』そのもののプログラムが動いているという点は、なかなか興味深いところです。
なお、操作についてもPSP向けに割り当てられており、アナログスティックでハンドル操作、×ボタンでアクセル、□ボタンでブレーキ、L・Rボタンでシフトチェンジが行えます。十字キーによる視点切り替えにも対応しています。
PSP-2000やPSP Goにも対応。ただしゲームデータとビルド環境が必要
GitHubで公開されている情報では、対応機種としてPSP-2000、PSP-3000、PSP Goが挙げられています。ただし、実機での動作結果として具体的に報告されているのはPSP-3000であり、ほかのモデルについて同様の動作状況が確認されているわけではありません。
一方、初代モデルのPSP-1000については、メモリー容量が不足するため、現在のバージョンでは動作しないと説明されています。
また、今回公開されているのは、あくまでも移植プロジェクトのソースコードです。ゲーム本体がそのままダウンロードできるわけではありません。
実際に動作させるには、適法に用意したアーケード版『デイトナUSA』Revision AのROMデータに加えて、Linux、またはWindowsのWSLなどを利用したビルド環境が必要です。PSP本体にもカスタムファームウェアを導入する必要があります。
GitHubにはビルド方法が掲載されており、必要なデータからPSP用の実行ファイル「EBOOT.PBP」などを生成する仕組みになっています。なお、生成されたファイルにはROMから変換されたデータが含まれるため、開発者はそれらを再配布しないよう注意を呼びかけています。
今後の最適化でどこまで快適になるのか?
現時点ではオリジナルのアーケード版と同じ速度で動作するわけではなく、開発者自身も安定性に問題が残っていることを認めています。そのため、今回の公開は完成版というよりも、今後の改良に向けた段階のひとつと考えたほうがよさそうです。
それでも、かつてゲームセンターで人気を集めた『デイトナUSA』が、PSPの小さな画面で実際に動作しているというのは驚きです。
しかも今回は、単純にエミュレーターの性能向上によって実現したものではなく、プログラムを別のハードウェア向けに変換するという技術的なアプローチが採られています。
今後、描画処理やゲームの実行速度がどこまで改善されるのか、引き続き注目したいプロジェクトです。
なお、本プロジェクトはセガとは関係のない非公式のファン移植であり、利用にあたっては対応するゲームデータの用意や動作環境の構築が必要です。















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