2000年代にiTunes Storeで販売されていたiPod向けクリックホイールゲームを、現行のパソコンで動かすことを目指した非公式プロジェクト「iPod Click Wheel Recomps」がGitHubで公開されました。GitHubの履歴では2026年9月2日に6タイトルを収録した初回コミットが行われ、9月4日にはRedditでもプロジェクトの内容が紹介されています。
●iPod Click Wheel Recomps — GitHub
https://github.com/DogParty/iPodClickWheelRecomps
今回公開されたのはiPodそのものを再現するエミュレーターではなく、各ゲームのARMコードを解析し、現行環境でコンパイルできるC++などへ置き換えて動作させる「リコンパイル」方式のプロジェクトです。開発者によれば、これによってiPod向けに販売されていたゲームがiPod以外のハードウェアで動作する環境を実現しており、現時点では6タイトルが対象になっています。
対応しているのは以下の6本です。
- 『Mini Golf』:macOS/Windows、Nintendo Switch向け
- 『Cubis 2』:macOS/Windows
- 『Texas Hold’em』:macOS/Windows
- 『LOST』:macOS/Windows
- 『The Sims Bowling』:macOS/Windows
- 『Vortex』:macOS/Windows
このうち最も完成度が高いのが『Mini Golf』で、元ゲームの機械的に変換されたコードが残っていない唯一のタイトルとされています。ゲームロジックまで読みやすいC++としてデコンパイルされており、macOSとWindowsに加えてNintendo Switch向けのHomebrewビルドも用意されています。
ただし、Nintendo Switch版については注意が必要です。開発者自身が実機のSwitchではまだ動作確認しておらず、エミュレーター上での確認にとどまっていると説明しています。そのため、「Switchでも動作確認済み」という状態ではなく、あくまでSwitch向けにビルドできるコードが用意されている段階と考えたほうがよさそうです。






クリックホイール操作をキーボードやゲームパッドに置き換え
元のiPodゲームでは、クリックホイールを回す、特定の位置を押す、方向ボタンをクリックするといった独特の操作が使われていました。「iPod Click Wheel Recomps」ではこれらをキーボードの方向キーやゲームパッドのアナログスティック、十字キーなどへ割り当てています。macOS/Windows版ではキーの再設定にも対応しており、iPod本体のクリックホイールがなくてもゲームを操作できるようになっています。
単純に元のゲームを動かすだけではなく、現行ディスプレイ向けの機能も追加されています。オリジナルは320×240ドットの画面を前提としていましたが、レンダリング解像度を最大8倍まで引き上げられるほか、文字についてはディスプレイ側の解像度で描画する仕組みを採用。フレームレートの変更やキー設定、『Mini Golf』の全コース開放、『LOST』の全チャプター開放など、一部タイトルには追加機能も用意されています。
ゲーム本体のデータは含まれず、自分のコピーが必要
重要なのは、GitHubで公開されているプロジェクトに元ゲームのデータが含まれているわけではないという点です。ゲームのコード、グラフィック、音楽、ステージデータなどの著作物は配布されておらず、実際に動かすにはユーザー自身が所有するゲームから取得した復号済みのゲームファイルが必要とされています。
『Mini Golf』の場合は、初回起動時にゲームフォルダーのZIPファイルを指定し、中身のファイルサイズやチェックサムを検証して利用する仕組みです。ほかの5タイトルについては、現在も元ゲームのバイナリから一部のC++コードを生成する工程が残されています。つまり、現時点では一般的な市販ゲームのPC移植版のようにダウンロードしてすぐ遊べるものではなく、ビルド作業や手元のゲームデータを用意できるユーザー向けのプロジェクトです。
GitHubのReleases欄にも現時点で一般向けの配布パッケージは掲載されておらず、各タイトルのREADMEではCMakeやC++コンパイラー、Python、SDL3などを利用したビルド方法が案内されています。
8月に登場したiPodエミュレーターとは別のアプローチ
「レトロゲームで遊ぼう!」では2026年8月16日に、Apple純正のRetailOSを起動できる「ipod-emulator」を紹介しました。こちらはiPod Video 5.5Gそのもののハードウェアをエミュレーションし、純正ファームウェアに内蔵された『Brick』を遊べるところまで到達していました。
一方で、iTunes Storeで販売されていた市販のクリックホイールゲームについては、DRM認証の問題から起動できていませんでした。「iPod Click Wheel Recomps」はこのエミュレーターを改良したものではなく、ゲームを個別に解析して現行環境向けに再構築するまったく別のアプローチです。そのためiPodのOS自体を再現するものではありませんが、結果としてこれまで実機への依存が大きかった6本をmacOS/Windows上で動かせる状態まで持ってきています。
もともとiPodのクリックホイールゲームについては「iPod Clickwheel Games Preservation Project」により、かつて販売された54タイトルの保存が進められ、対応するiPod実機で再びプレイできる環境が整備されていました。今回のプロジェクトは、そこからさらに「古くなったiPod本体に頼らずゲームを残す」という方向へ踏み込んだ取り組みといえます。
なお、開発者は今回の解析やコード作成でClaudeを含むAIを大きく活用したことも明らかにしています。GitHubの初回コミットにもClaudeとの共同作業を示す記録が残されており、Redditでは数週間にわたって自身が結果を確認・修正しながら開発を進めたと説明しています。
現状は6本のみですが、2006年から2009年にかけて販売されたiPodゲームは全部で54本あります。今回構築された共通ライブラリーやリコンパイル環境がほかの作品にも利用されていけば、iPodという特殊なハードウェアに閉じ込められていたゲームを現行環境へ残していく新たな手段になりそうです。
via.Reddit














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