個人ゲームサークルのおんねんチャンネルより、2024年12月13日にSteamで発売されたスプラッターホラー・ビジュアルノベルゲーム『箍の外れたビスクドール』。このゲームは、ウェブで公開された、本作の企画・原案を手掛けた恐怖院怨念氏と三衣千月氏による原作がベースとなっている。
恐怖院怨念氏は主題歌である「覚醒カーニバル」の作詞も手掛けているなど、かなりマルチな才能の持ち主だ。今後注目のクリエイターのひとりとなることは間違いないだろう。
作品そのものは、アドベンチャーゲームスタイルになっている。それも、90年代を思わせるような、どこか懐かしい雰囲気すら漂っているため、レトロゲームファンにも馴染みやすい作りだ。
一応選択肢のようなものはいくつか登場するが、少なくとも今回リリースされたものでは途中でゲームオーバーになってしまったり、あるいは物語はループするといったこともなかった。そのため、純粋にノベル作品として楽しめるような作りになっている。
ちなみに、今回発売されたものはあくまでもプロローグであって、これだけで物語は完結しない。今後物語の続きはDLCでリリースされていく予定となっている。
いつもどおりの通学が非日常の世界へと変わっていく
ゲーム冒頭。主人公の水野竜太は、通学途中の信号でひとりの少女を見かける。いつもの光景のはずなのだが、なぜか全く回りの音はまったく聞こえず、その少女が何かを訴えているものの、その声は雑音でかきけされてしまう。どこかで見たことがある記憶はあるものの、誰なのかは全く思い出せない。これが、これから始まる物語のスタートとなるのであった。
その後、幼なじみの親友達とたわいもない会話が続いた後学校にたどり着いたのだが、そこもいつもとは違う空気が流れていた。なんと同級生が教室内で殺人を犯していたのだ。しかし、これはひとりがおかしな犯行を繰り広げたというわけではなく、この学校そのものがおかしな状況になっていたのである。
突然目の前で行われている惨劇から逃げるために職員室にたどり着いた、主人公。しかし、先生達はあちらこちら行っている異常事態で出払ってしまっている。そこで対応したのが、ひとりだけ職員室に残っていた豊田先生であった。
一見普通のような対応にも見えたのだが……ひとりの生徒が話しかけたときに、突然その姿が豹変する。原因は謎だが、もはやあらゆる人物達が、狂ってしまっていたのであった。そして、その後さらに物語は壮絶さを増していくのである。
『ひぐらしのなく頃に』のコミカライズを担当した鈴羅木かりん氏がキャラクターデザインを担当
ホラー系のゲームということもあり、どうしてもどぎついシーンばかりが注目されてしまいがちだ。だが、それ以外の通常の会話シーンなどもあり、そこでは穏やかなキャラクターたちの姿がいきいきと描かれている。
実は本作でキャラクターのデザインを担当したのは、『ひぐらしのなく頃に』のコミカライズなどで知られる鈴羅木かりん氏だ。同氏が描くキャラクターたちは、その変貌ぶりも合わせて見どころのひとつといえるだろう。
また、すべてのキャラクターというわけではないが、主要な人物たちはボイスでその声を聞くこともできるようになっている。なかでも聞き所のひとつが、先ほどの豊田先生のシーンで登場した男子生徒1の声だ。
男子生徒1という、もはや絵すら用意されていない完全なモブからなのだが、なんとこの声を演じているのが人気YouTuberとして知られるホッカイロレン氏である。なぜか中二病のように暴れまくりそうなマスクでもしているかのような、どこかくぐもった声になっているのですぐに気が付くことができるだろう。
物語の世界観を補完するTIPSとエンド後の裏話も楽しめる!?
シナリオを進めていくことで、「TIPS」が手に入る。こちらは直接ストーリーと関わっているというよりも、どちらかというと設定やサイドストーリーで世界観そのものを補完するようなものが読めるようになっている。
そして、今回のプロローグを最後まで遊び終わると、エピローグ後の楽屋話の「打ち上げ会場への招待状」が「TIPS」に現れる。ここで表示されるコナミコマンドのようなものを入力することで、特別なシナリオが楽しめるようになっているのだ。
この「打ち上げ会場への招待状」では、今後どのようなシナリオが展開されていくのかといったことや、本編では名前すらわからなかったキャラクターたちなども登場するなど、かなり興味深い内容となっている。
ゲーム自体は1時間ちょっとで遊ぶことができるライトな仕上がりだ。だが、今回はあくまでもプロローグに過ぎず、今後どんどんシナリオが追加されていく予定となっている。まずは作品の世界観に触れるためにも、少しでも興味を持ったならばぜひとも遊んでほしい1本である。