【90年代PCゲーム男】ターン制シミュレーションゲームの最高峰『ヒーローズ オブ マイト & マジック 3完全日本語版』

【90年代PCゲーム男】ターン制シミュレーションゲームの最高峰『ヒーローズ オブ マイト & マジック 3完全日本語版』

※この記事は1990年代に雑誌用に書かれたものを再編集して収録したものです。

シミュレーションゲームの新しい方向性を確立!

『Wizardry』や『Ultima』と並んで称されるRPG、『マイト&マジック』。そこから派生したシミュレーションゲームがこの『ヒーローズ オブ マイト&マジック』シリーズである。

1990年代後半のシミュレーションゲームの主流は、『エイジ オブ エンパイア』や『スタークラフト』に代表されるリアルタイムストラテージだった。人やコンピューターが各々同時間軸でユニットを編成し、リアルタイムに戦い合うのである。いわば、それらと対極的なターン制シミュレーションを採用したのが、この『ヒーローズ オブ マイト & マジック 3完全日本語版』(以下HOM3)といえる。

ひとりひとりのプレーヤーが順番にユニットを動かし、攻撃を仕掛けたり内政を施していくという、昔ながらのシミュレーションゲームである。というと、なんだか古くさいシステムを引きずっただけのゲームに思わ れるかもしれない。この『HOM3』では、シミュレーションにRPG要素を加味し、他のゲームとはひと味違った面白みを生み出しているのだ。

【90年代PCゲーム男】ターン制シミュレーションゲームの最高峰『ヒーローズ オブ マイト & マジック 3完全日本語版』
▲40種類の中から好きなものを選べるシングルシナリオ。ゲーム目的もシナリオにより異なる。

プレーヤーの探求心を煽るRPG要素を持ったマップ

なぜ、RPGの『マイト&マジック』からシミュレーションゲームが生まれたんだ、といった疑問を持つ人もいるだろう。それは、このゲームをやってみれば一発で理解することができる。プレーヤーは一国の指揮官となり、勇者を操りながら全土を制圧するなどの目的を達成していく。

ゲームスタート当時には、ひとりの勇者がプレーヤーに与えられており、このユニットを操りながら冒険を進めていくのだ。操る勇者ユニットの視界は、ゲーム当初自分のまわりが少し見える程度である。ユニットをいろいろな場所へ移動していき、初めてこの世界がどうなっているのかがわかるようになっているのだ。

マップのあちらこちらには、宝物や貴重なアイテムが点在している。鉱山や資源などを支配することにより、定期的にこれらの資源を入手できるようにもなる。こういったおいしい要素がたくさん転がっているため、どんどん冒険したくなっていくのである。

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ゲームスタート直後、勇者の見える範囲はとてもせまい。何やらチラリと見えている建物や宝石が、冒険心を掻き立てる。クエストをこなすというのも、ゲームを進めていくうえで重要な要素となる。

しかしながら、ターン制のため1回にユニットの移動できる範囲は限られてしまう。ほかにすることがなければ、次のターンに移りふたたび冒険を続けていくことになる。この、プレーヤの探求心をくすぐるようなマップの仕掛けが、ゲームをやめられなくしてしまうぐらい恐ろしい魅力を持っているのだ。また、この世界で出会う人の中には、勇者にクエストをくれるものもいる。たいていは、何かしらのアイテムを探しだし、彼らに渡せばよいといった内容である。クエストの報酬はなかなかおいしく、経験値をくれるものもいる。序盤での効果は絶大で、クエストをこなしたと同時に勇者のレベルが3段階ぐらいあがることもあるのだ。

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▲魔道師ギルドにから、新しい魔法を学ぶことも可能。魔法には、風、地、火、水の4つの流派がある。

シンプルながら奥の深い戦闘モード

勇者の行く手を、時にモンスター達が遮っていることがある。そんなときは、戦闘で決着を付けるのだ。『HOM3』 では、勇者は基本的に部隊の指揮をとり自分では攻撃を仕掛けない。部隊が全滅すると同時に勇者も野に下り、プレーヤーの前から消え去ってしまうのだ。

戦闘は基本的にターン制で行う。ユニットにより1回に移動する距離は異なり、中には魔法や遠隔攻撃などの特殊な能力を持ったユニットも存在する。部隊の指導者である勇者が”戦術”技能を持っている場合に限り、戦闘を開始する前に陣形を整えることが可能だ。防御力も弱く、接近戦しか仕掛けてこない敵は楽勝なのだが、遠隔射撃を主力とした部隊には以外と苦戦を強いられる。その場合には、こちらも遠隔攻撃が可能なユニットを揃えて戦うのがいいだろう。部隊を無駄死にさせるようなことだけは避けたい。

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▲戦闘は様々な場所で行われる。平原が一般的だが、時には艦隊戦戦闘も発生する。

ちなみに、自軍のユニットを増やしたいときは2つの方法がある。ひとつは、マップに潜んでいるユニットの中で、自分たちの仲間になりたがっているものを探し出す。もうひとつは、勇者の街にユニットを作るための建物を建造する方法である。前者は、ややいきあたりばったり的な感じであまりお役に立たないが、重要なのは後者のほうである。このゲームには、ユニット自体のレベルアップという概念の他、街を増設していき、自軍の能力を高めていくといった要素も盛り込まれている。

新しいユニットを作成したり、呪文ポイントの回復や魔道師ギルドから新しい魔法を学ぶことができるのだ。街の種類は全部で8つあり、特定の街でしか得られないユニットや能力なども存在する。ゲーム序盤では、ひとつの街しか持っていないが、冒険を続け、他の街を占領していくことにより、これらの恩恵を受けられるようになる。

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▲勇者は、最初に与えられた1人だけではなく、酒場などから雇うことも可能。

ボリューム満点の4つのゲームモード

『HOM3』 に用意されているゲームモードは全部で4種類。初心者がすぐにゲームになじめるよう、練習できるチュートリアルモード。40種類以上のシナリオの中から好きなものを選びプレーする、シングルシナリオモード。ひとつの壮大な物語を、善、中立、悪それぞれの立場になりプレーするキャンペーンモード。そして最後に、最大8人まで同時参加可能なマルチプレーモードである。

ひとつのシナリオをこなすだけでもかなりのボリュームがあり、これ1本あればしばらく他のゲームを買う必要がない。シミュレーションとRPGが見事に融合したゲーム世界を、ぜひとも楽しんで欲しい。

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▲勇者のレベルが上がるたびに、特別な能力を高めていくことができる。
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高島おしゃむ
ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。