POLYMEGA~その誕生から現在まで続くドタバタ劇の歴史~【2024年Remix版動画公開】

POLYMEGA(ポリメガ)~その誕生から現在まで続くドタバタ劇の歴史~

2021年9月12日に発売された、Playmajiのマルチレトロエミュレーター互換機『POLYMEGA(ポリメガ)』。最近その名前を聞いた人も多いと思いますが、実はその歴史は(結果的に)意外と長かったことをご存じでしょうか?

そこで今回は、この注目度の高いマシンの生い立ちから現在まで続くドタバタ劇の歴史を、公式のツイッター投稿を中心にまとめてみました。

RetroBloxはFPGAの夢を見るか?

2017年1月31日。カリフォルニア州ロサンゼルスを本拠地にする企業が、革新的なゲーム機を発表しました。その名は、『RetroBloxモジュラー』。それは、カートリッジと互換性のあるエレメントモジュールと、ディスクゲームと互換性のある光学ドライブ、それにオンライン機能を組み合わせたレトロゲーム専用機でした。

メガCD、PCエンジンCD-ROM2、プレイステーションなどディスクベースのゲームが遊べるというのが本機の最大の特徴です。ゲーム画面は1080pにスケールアップして出力することができ、SNSに投稿するほか、プレイ中の映像をYouTubeやTwitchといった動画サイトにストリーミングすることもできます。

POLYMEGA~その誕生から現在まで続くドタバタ劇の歴史~

これを作ったのが、CEOのブライアン・バーナル氏とCTOのエリック・クリステンセン氏のふたりです。ブライアン氏は、2000年代初頭にインタープレイのQAテスターとして、『フォールアウト』や『バルダーズゲート』といったゲームを担当。企業内の食物連鎖の最下層からそのキャリアをスタートし、2009年には『ラチェット&クランク FUTURE2』のプロジェクトマネージャーを務めています。

その後、Googleやソニー、トヨタ、レゴなどの広告代理店やソーシャルゲーム開発を行っているBooyahでデジタル広告などを担当してきました。同社の共同創業者であるエリック氏は、Insomniac Gamesでゲームプレイディレクターやプリンシパルソフトウェアエンジニアなど、いくつかの役職に就いており、ブライアン氏とは10年以上にわたる友人でした。

このふたりが、新たなマシンを作ることになったきっかけは、ブライアン氏がガールフレンドと日本旅行をしていたときです。そこで、子供の頃に雑誌で読んだエキゾチックなレトロゲーム機を見つけたいと考え入手したものの、50インチのテレビに接続しても優れた画質を得ることはできませんでした。

当時も、レトロゲーマー向けに『Retron 5』といった互換機が存在していましたが、当然のことながらそれらはブライアン氏が日本で入手したすべてのゲームが遊べるわけではありません。

そこで、ゲーム業界の友人とFPGAベースのPCエンジン互換機に関するアイデアを話し始め、ロブワイアット氏に連絡。そこからプロジェクトがスタートしています。そこで、様々な問題に苦しんでいるレトロゲームファンに利益をもたらす「ハイブリッドエミュレーション」という方法を発見。その可能性から、システムをモジュール式に変更することを決定しています。

POLYMEGA~その誕生から現在まで続くドタバタ劇の歴史~

この「ハイブリッドエミュレーション」の特徴は、エミュレーターがカートリッジとコントローラーを電気的に読み取ることができるところです。これにより、最新のSOCスタイルに接続したときにも、オリジナルの家庭用ゲーム機同様に機能させることができます。

また、カートリッジからROMファイルをダンプして常駐メモリーに保存しておく代わりに、エレメントモジュールのコネクターからCPUに直接入出力されるデータを、ベアメタルレベルで読み取ることも可能です。そのため、カートリッジ内で何が起こっているかに関係なく、100パーセントのエミュレーションシステムではうまく機能しない可能性のある自作ゲームや、特殊なタイプのゲームとの互換性も大幅にアップさせることができます。

POLYMEGA~その誕生から現在まで続くドタバタ劇の歴史~


『RetroBlox』がモジュラー式を採用した理由は、多くの互換機が単一のコントローラーしか利用出来ない状況のなかで、オリジナルのコントローラーを利用出来るようにするためでした。

これらの発表時点では、クラウドファンディングのKickstarterを利用する予定で、PS1、セガCD、PC-エンジン/ TurboGrafx-CDといった3つの形式がサポートされる予定でした。その後、このマシンは『POLYMEGA』と名前を変更。社名も、RetroBloxからPlaymajiへと変更されています。

(参考文献1:nintendolife)(参考文献2:nintendolife

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E3 2017年の直前に、POLYMEGAが4つ目のCD-ROMフォーマットとしてネオジオCDをサポートすることが発表されました。現在ではかなり高価になりつつあるレトロゲーム機を、もう少しお手頃な値段で利用出来るように試みたものでした。

オリジナルのネオジオCDは読み込みに時間が掛かるという欠点がありましたが、幸いなことにPOLYMEGAはオリジナルよりも最大80パーセント高速でゲームをロードすることができます。

(参考文献3:nintendolife

最初のプレオーダーが2018年9月に開始

2018年は、前年に発表したPOLYMEGAのプレオーダーが開始されるという華々しい年となりました。しかし、この頃より、徐々に言い訳に近い投稿が増えていきます。

E3 2018に出展

POLYMEGA~その誕生から現在まで続くドタバタ劇の歴史~
▲E3 2018の会場で行われた、ブライアン・バーナル氏へのインタビュー動画。

最初のプレオーダーがスタート

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▲プレオーダー開始に合わせて、ローンチトレーラーが公開。
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▲プレオーダー開始時にサーバがダウンした模様。

FPGAを採用しなかったことに関してユーザーから疑問が噴出

POLYMEGAのそもそものスタートは、PCエンジンをFPGAで再現するというものでした。しかし、実際に発表されたものは100パーセントのエミュレーションシステムだったことに対して、ユーザーから疑問が出始めたようです。

この話題は、その後Analogueを巻き込んでやや炎上気味に。皮肉なことに、そのAnalogueからは2020年にPCエンジンをFPGAで再現した互換機『Duo』が発表されています(2021年発売予定。事前予約は執筆時点で未定)。ちなみに、この記事を執筆している時点(2021年8月)で唯一FPGAに対応しているPCエンジンの互換システムは『MiSTer』のみです。

POLYMEGA~その誕生から現在まで続くドタバタ劇の歴史~
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▲この時点ではSNESはFPGAである可能性を匂わせる。
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▲すべてのゲーム機をFPGAでサポートするのは、この時点では現実的ではなかったため、現在の仕様になったこと自体は正しい判断だったのかもしれません。
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同時期に行われたnintendolifeのインタビューによると、アクティブなカートリッジ読み取り技術がPOLYMEGA向けに準備する環境が整っておらず、リリースを遅らせないためにもベースユニットからFPGAを削除したというのが理由の模様。この頃に、セガサターンの対応も発表されたようです。

NESとSNESのモジュールに関しては、資金調達の目標が達成された場合のみFPGAにすると触れていましたが、この時点ですでにあまり焦点が当てられていないようでした。また、同記事内ではすでにPOLYMEGAに対して懐疑的なユーザーが増えてきていることにも触れられており、そちらもなかなか興味深いものになっています。


(参考文献4:nintendolife

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▲なぜかAnalogueを批判し、炎上気味に。
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コロナの影響まったく関係なし! 2019年から出荷に関するいいわけがついにスタート!?

POLYMEGAといえば、発売が近づくとそれを先延ばしにするということを何度も繰り返してきている印象ですが、どうやらそれが始まったのが2019年だったようです。ご存じのように、この頃はまだ翌年から現在まで続くコロナ渦の影響もありませんでした。

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▲上記に加えて、S-DD1もサポートされると投稿。
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▲発送の遅れに関する、記念すべき最初のいいわけがスタート。
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▲CPUが入手出来ず発送できない状態が続いているのにもかかわらず、2回目のプレオーダーを発表。
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▲ファミコン拡張音源は、VRC7(『ラグランジュポイント』で使われている)以外はサポートされている模様。
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▲最初のプレオーダーの価格が249ドルで2度目のプレオーダーの価格が299ドルになったことに対しての、ユーザーからの質問への回答。ちなみに、現在は499ドルからになっています。

2019年5月7日より2度目のプレオーダーが開始へ

POLYMEGA~その誕生から現在まで続くドタバタ劇の歴史~
▲最終的にどうなったかは不明ですが、このときは30日間限定のプレオーダーと発表していた模様。
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▲E3 2019で専用光線銃の対応を発表。
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▲インテルのCPUが供給されないことを言い訳にしていることに対しての、ユーザーからの質問。
POLYMEGA~その誕生から現在まで続くドタバタ劇の歴史~
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▲もちろん、この時点でもっと待たされることになることを、彼らは知らない。
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2020年2月下旬に発送する予定と発表

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なのにβテスターの募集開始?

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最初のβテスター向けに発送開始。

この4月に、後々問題になるウォールマートや日本のアマゾンなどでの予約注文も開始。
このあたりに発売が7月に延びた?(※要確認)

POLYMEGA~その誕生から現在まで続くドタバタ劇の歴史~
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2020年10月にプレオーダーしたユーザーに向けて「Polymega will be arriving soon.」と書かれたメールが届き始める。そのわずかひと月後……

POLYMEGA~その誕生から現在まで続くドタバタ劇の歴史~
▲筆者の元に届いたメール。

当初2020年7月に発売が予告されていたのにもかかわらず、わずか数日前に延期が発表。ユーザーのほとんどが半信半疑の状態だった中、10月にプレオーダー向けにもうすぐ発送される旨のメールが届き始めます。一瞬世界中が湧いた瞬間でしたが、そのわずかひと月後に、ふたたび奈落の底に落とされることになります。

2020年11月11日、何度目か忘れたけど延期を発表!

もうすぐ発送されるはずのPOLYMEGAでしたが、公式サイトのリニューアルに伴い、さらに発売の延期も発表されました。以下、簡単な要約。

・100万ドル以上を費やした
・約5000台の最初のパッチはすぐに届けることができる
・リリースは2021年初頭に遅れる(2021年2月21日)

●発売日の更新
https://polymega.com/blogs/system-software-updates/polymega-launch-information

さらに、ウォールマートトラブルがあったことが、公式サイトで明らかになります。以下、要約。

・ウォールマートで人事異動があったので、あいつらのせいで連絡ができなくなった
・2月下旬から2018年と2019年のプレオーダー向けに発送を開始する。

●NA WALMARTをご利用のお客様へのお知らせ
https://polymega.com/blogs/system-software-updates/important-update-for-na-walmart-customers

●nintendolifeの記事:ウォルマートでポリメガを予約注文しましたか?私たちはあなたに悪いニュースを持っています
https://www.nintendolife.com/news/2021/01/pre-ordered_a_polymega_with_walmart_weve_got_bad_news_for_you

プレオーダー向けに2021年9月12日より発送を開始すると発表

2020年11月に、2月に発売を延期すると発表していましたが、実際はごくわずかな台数のみ発送されただけでした。また、それに先駆けて、専用光線銃の予約販売も開始しています。

●2021年2月1日:GC01ライトガン – 予約販売中
https://polymega.com/blogs/system-software-updates/gc01-light-gun-now-available-for-preorder

さらに、一部のユーザーからビジネスライセンスが切れているという指摘がありました。その後、問題自体は解決したようですが、これまで同社とPOLYMEGAを擁護してきたnintendolifeにも、フォローととも取れる記事が掲載されています。

また、この間の発送遅延に関するいいわけは、ミャンマーのクーデターだったと述べていたようです。

●生産上の問題にもかかわらず、Polymegaが「まだ軌道に乗っている」をリリース
https://www.nintendolife.com/news/2021/03/polymega_release_still_on_track_despite_production_problems

POLYMEGA~その誕生から現在まで続くドタバタ劇の歴史~
▲以前は饒舌だった公式ツイッターが、最近はカメのように黙りこくっていましたが、なんと久々にツイッターを投稿。
POLYMEGA~その誕生から現在まで続くドタバタ劇の歴史~
▲2021年9月12日より、プレオーダーしたユーザーを対象に発送を開始すると発表。

というわけで、ついにプレオーダー組に向けて2021年9月12日から10月末にかけて発送を開始すると発表されたPOLYMEGA。はたして、今度こそ本当に我々は手に入れることができるのでしょうか? 

信じるか信じないかは、あなた次第!

発売後も続くドタバタ劇

POLYMEGA~その誕生から現在まで続くドタバタ劇の歴史~

2021年9月12日を迎えるより前に、事前購入者あてにメールが届き、商品も送られ始めました。しかし、2018年9月に注文したユーザーよりも早く、公式以外のパートナーに商品が届いており、これまたユーザーの不信感と不満を募らせる対応となったようです。

たしかにビジネス的なものを優先するならばパートナーとの関係は重要ですが、その結果早くから彼らをサポートした購入者をないがしろにしたことになります。

さらに届いた商品にも問題があったようです。以前はCPUにIntel Pentium Gold G5500Tが搭載されていましたが、届いたユーザーが中身を開けて確認したところIntel Celeron® G4900Tになっていることが発覚しています。

POLYMEGA~その誕生から現在まで続くドタバタ劇の歴史~
POLYMEGA~その誕生から現在まで続くドタバタ劇の歴史~

ロジスティクスの問題などから、第1便以降の出荷が止まっていましたが、とりあえず2回目の出荷が2021年10月20日より再開されるようです。

POLYMEGA~その誕生から現在まで続くドタバタ劇の歴史~

2020年2月10日に注文組ですが、筆者のところにはまだ発送メールすら届いていません。その他のショップからの注文にたいしても、のらりくらりとした返事を繰り返しているようです。

日本のアマゾンから注文したユーザーあてに、発送延期のメールが届き始めているようです。どうやら、今年の年末から年明けとなっているようですね。どちらにしろ、中国国内のロジスティックスがロックダウンで止まっているので、時間が掛かりそうな印象です。

POLYMEGA(ポリメガ)より新たないいわけ「この四半期に工場のリードタイムが増加しました」――あとついでにサターンにMPEGが追加されるよ!
POLYMEGA(ポリメガ)の言い訳アップデート! 「リードタイムはあまり変わっておらず、特に悪いです」

NINTENDO64に対応したPOLYMEGAの『EM05 – ウルトラモジュールセット』

もうすっかりお忘れかもしれませんが、2021年11月25日に突如発表されたのが、NINTENDO64に対応したモジュールの『EM05 – ウルトラモジュールセット』です。その後、2022年12月21日よりプレオーダーが開始。当初は12~18週間後に発送するとアナウンスされていましたが……その後一切音沙汰無し。

すっかり忘れかけていましたが、なんと2023年11月21日に、予約したユーザーに一斉に住所確認のメールが送られてきました。順調ならこの後発送される予定ですが……はたして!?

NINTENDO64に対応したPOLYMEGAの『EM05 – ウルトラモジュールセット』の住所確認メールが届き始める――海外の反応は?

ということで、2023年のクリスマスに合わせてなんと『EM05 – ウルトラモジュールセット』が届き始めましたが、その時点でファームウェアが更新されておらず、使えないという状況に。このあたりのちぐはぐさもPOLYMEGAらしいといえばらしいところです!?

『Polymega App』などを発表するも?

2023年2月21にPOLYMEGAが発表したのが新サービス『Polymega App』や『Polymega® Remix』、『Polymega XL』など新たなサービスやそれに付随するサービスなどでした。……が、同じ年の4月1日。エイプリールフールかと思ったところ、なんとこれらのβリリースが延期されたと発表。

以降、2023年11月22日時点で一切音沙汰なしとなっています!?

すべてのデバイスでPOLYMEGAと同じ体験ができる無料で利用可能な『Polymega App』を発表。購入者を対象に2023年3月よりクローズドβテストを実施
『Polymega App』のβ版リリースが延期へ。『Polymega® Remix』は半年後に発売されるほかPolymega ゲームショップも今夏にオープン

ATARIと提携を発表するも?

2023年7月5日に、ATARIとPlaymajiの戦略的提携が発表されました。これにより、POLYMEGA上でAtari 2600 およびAtari 7800の互換性を追加する新しいカートリッジ モジュールが開発される予定とアナウンス。しかし、2023年11月22日現在、特に大きな進展はないようです。

ATARIがPlaymajiとの戦略的提携を発表。『POLYMEGA』にAtari 2600とAtari 7800に対応したモジュールを提供

…To Be Continued

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高島おしゃむ
ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。