ファミコンなどの光線銃を使ったゲームは、現代の液晶ディスプレイでは使用できずブラウン管ディスプレイでないと遊べないというのは、レトロゲーマーならある程度常識として知られていることですよね。
理由は「映像の表示方式が違うから」と説明されているのを、多く見かけてきました。まぁ、それはわかるものの具体的にどんな? という疑問がずっと残ったままになっていました。そこで、光線銃の歴史から追いかけ直してきた結果、現代の液晶ディスプレイでも利用できる方法があったため、そのご紹介をしていきたいと思います。
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ファミコン光線銃の歴史:きっかけは横井軍平の逆転の発想
ファミコンの光線銃というより、任天堂の光線銃の歴史はゲーム&ウォッチやゲームボーイ、バーチャルボーイを生み出した天才開発者の故・横井軍平氏の発案から生まれたものです。
シャープが太陽電池を開発したときに、任天堂にも何か使って欲しいと営業がやってきました。 ちょうどその頃、光センサーを使用した銃に興味を持っていた横井氏は、光で電気を生み出すという本来の使い方ではなく、光を受けることで電気が発生するセンサーとしての役割を果たすことができるということに気が付き、光線銃の開発をスタートしています。
この当時、シャープの技術担当をしていたのが、後に任天堂に入社してファミコンを生み出すことになる上村雅之氏だったというのは有名な話しです。
1970年に『光線銃SP』という玩具を発売して大ヒット。その後、アーケード用など光線銃を使った様々なコンテンツが横井氏の手で生み出されていきます。
逆転に次ぐ逆転
光線銃は、当初銃側に豆電球を仕込んで的側の太陽電池で受光しアタリ判定を行っていました。しかし、レジャー施設向けに「クレー射撃」をゲーム化しようとしたときに、その方式では問題があることがわかりました。いわゆる競技用の「クレー射撃」では、的をそのまま狙い撃つのではなく、弾が着弾するタイミングを見計らってあらかじめ少し手前に狙いを定めて撃つ、いわゆる「偏差撃ち」が行われており、よりリアルに近づけるにはそれに対応する必要があったのです。
そこで横井氏が考えたのが、またまた逆転の発想でした。なんと銃側を受信機にしてしまい、目に見えている的のやや前方に人の目では見えない赤外線を映し出すことで、この偏差撃ちを実現しています。
ちなみにファミコンの光線銃も、この流れから銃側が受信機になっています。
ファミコン光線銃の仕組み
ファミコンの光線銃は、先ほども紹介したように銃側にセンサーが取り付けられており、トリガーを押した瞬間に画面が一瞬反転して的となる部分だけが白いブロックで表示されることで、それを受光してアタリ判定を行っています。
ブラウン管と液晶ディスプレイの表示方式の違いと Brad Smith氏の野望
ブラウン管テレビは、受信したデータを瞬時に一ラインずつ表示していく方式がとられています。それと比較して、現在の液晶ディスプレイはバッファに画像をため込んで絵が完成した時点で表示するという方式がとられています。そのため、人の目にはわからないレベルでラグが発生しているのです。
その問題を解決して、現代の液晶ディスプレイでも光線銃が使えるようにならないか挑戦した人物がいます。それが、Brad Smith氏です。Brad氏はまず、ソフトウェアを調整してラグを再現してみることにしました。しかし、この方法だけでは上手くいかないことがわかりました。通常のNES Zapperでは、テレビからの光を受光することができなかったのです。
その後、光線銃の機能を完全に理解するために、テストプログラムを作成しています。NES Zapper自体が正常に動いているかはわからなかったものの、蛍光灯の電球から信号を受信できることはわかりました。
そのときに、NEWSDevフォーラムのメンバーから、NES Zapperにはブラウン管の急速に変化する光源だけを捉えるために設計されたフィルターが組み込まれているという情報を得ています。
このフィルターは約15000Hzに調整されており、ブラウン管の光源が画面をトレースするのに掛かるのとほぼ同じ時間となっています。ブラウン管の光は、その構造上暗い部分から明るい光へと速く進んでいきます。人の目では判断できないものの、ブラウン管の光のレベルは液晶ディスプレイの約1000倍速く変化しているのです。
ファミコンのCPUは、ひとつのフレームで光線銃からのレポートを1000回チェックすることができます。これらが発売された当時はブラウン管テレビが主流でしたが、これは電球や影などテレビ以外の光源をなどを受信しないようにするための素晴らしい方式でもありました。
ここまでたどり着いたBrad氏でしたが、ソフトウェアの変更はできてもハードウェアがうまく動かず、2015年に一度このプロジェクトを諦めることにしています。
一度は諦めたときに転機が訪れる
これまでのアイデアを取るに足らないものだったと考えていた、Brad Smith氏。転機が訪れたのは、その後です。いくつか、光線銃関連のユニークなプロジェクトが誕生しました。
『LightGunVerter』は、実際にテレビから届く光を待たずに、Zapper側が見ていたものを再現するというプロジェクトです。オリジナルのゲーム画面と連動して、Wiiリモコンと最新のポインターデバイスを使用するという、若干大がかりなものとなっています。
また、2018年にはクラウドファンディングのキックスターターで『Modern Mallard』と呼ばれるNES用『ダックハント』のキットも募集が行われていましたが、残念ながら目標金額に届きませんでした。
こちらは元となるゲームカートリッジにパッチを当て、光線銃側にも変更を加えるキットとなっていました。しかしながら、多くの人にとってあまりにも高すぎるように思われたようです。
さらに、『NES-LCD-Mod』と呼ばれるプロジェクトで、『ダックハント』にラグを発生させるパッチが配布されていました。これは、まさに数年前にBrad氏が挑戦していたときと同じアイデアで、「彼らは液晶ディスプレイでは使えないことを知らないのか?」と思ったそうですが、ひとつだけ異なる部分がありました。そう、光線銃そのものが、Brad氏が使っていたモノとは違っていたのです。
彼らの使っている銃には、CRTフィルターのようなものは搭載されていなかったにもかかわらず、それが機能していたのです。そこで、サードパーティから発売されている最新のZapper代替品でも使えるのではないかと思いつきます。
Brad氏は、すぐさまHyperkinから発売されている光線銃の『Tomee Zapper Gun』を発見します。非常に安価な銃でしたが、テストしたところ問題なくプレイできることがわかったのです。
『NES-LCD-Mod』はすでに優れた仕事をしていたと考えたBrad氏。それに満足して、自分のプロジェクトは復活させる必要はないと考えたのです。このBrad氏の物語は、下記のYouTubeで見られるので興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。
ちなみに、2019年1月にHyperkinから液晶ディスプレイで使える光線銃の『Hyper Blaster HD』が発表されました。こちらは、専用の光線銃とカセットの間に挟むアダプターなどのセットになっているようですが、どうにも上手く動かないのか米アマゾンでは★2の酷評が付けられています。
液晶ディスプレイで光線銃を使うために必要なものと手順
ここまで前置きが長くなりましたが、もうひとつの本題である液晶ディスプレイでファミコンの光線銃を利用する方法をご紹介していきます。
最初にざっくりと説明すると、 『NES-LCD-Mod』にアクセスしてIPSファイルをダウンロードします。対応しているソフトは、海外版NESの光線銃タイトルである『Duck Hunt』『Wild Gunman』『Hogan’s Alley』『Freedom Force』『Duck Hunt VS』『Barker Bill’s Trick Shooting』の6本。ROMデータは別途必要になるので実機から吸い出して用意しておきましょう。これにIPSと呼ばれるパッチを当てて、『Everdrive』などを利用してプレイするという感じです。
利用する銃は、オリジナルのものではなくHyperkinの『Tomee Zapper Gun』など、最新の光線銃を用意した方がいいようです。
どうやってIPSファイルでROMにパッチを当てればいいんだという人は、romhacking.netにアクセスして『Lunar IPS』というツールを入手しましょう。使い方は簡単で、「Apply IPS Patch」を押してIPSファイルを選択。次に「Create IPS Patch」を押して、パッチを当てるROMを選択すればOKです。
ちなみに、 『Tomee Zapper Gun』 ですが、ニューファミコンにそのまま挿しても仕様上動かないため、下記の記事で紹介しているような改造が必要になります。
パッチを当てたROMでは、メインメニューで上下または左右のキーを押すことで手動で調整できるほか、Aボタンを押してオートに戻すこともできます。ゲーム開始後、どれぐらいのレートでラグが発生するようになっているか確認したいときは、スタートボタンを押しましょう。
銃は改造しているニューファミコンの場合2コン側に挿す必要があります。
まとめ:まーまー使えそうな感じも?
実際にプレイしてみたフィーリングですが、まぁ使えるといえば使える感じがします。が、オリジナルをそれほどよく知っているわけでもなく、ブラウン管も手元にないので、どれぐらいプレイフィーリングが異なるかまではわからないといったところですね。
光線銃自体の対応ソフトもあまり多いというわけではないため、どちらかというと現代ではスルーされがちのタイトルですが、こうして最新の技術でまた遊べるようになるというのもいいものですよね。