2023年9月21日から24日まで、幕張メッセで開催された日本最大のゲームイベント「東京ゲームショウ2023」。そこで、初日からある界隈をざわつかせていたのがTASSEIこと建成電気のブースでした。こちらで展示されていたのは、ニンテンドー3DSの互換機や、FPGAでセガサターンにPlayStation 2、ファミコンなどを動かしているデモ機です。
グループの本社は中国深センを拠点にするDashine Electronicsで、達成電気はその日本本社として設立された企業です。今回同社が「東京ゲームショウ2023」で、こうした互換機を出展することになった狙いはなんだったのか、同ブースにいた代表取締役社長のAdrew Steel氏にお話をお伺いしてきました。
MiSTer FPGAはデモに使えるコンビニプラットフォーム
――こちらのセガサターン互換機は、MiSTer FPGAをベースに作ったとお聞きしましたが、コアはMiSTerのものを利用しているのでしょうか?
Adrew Steel氏(以下、Andrew氏):はいそうです。
――独自性がある部分はどちらになるのでしょうか?
Andrew氏:こちらはコンセプト機です。東京ゲームショウに来ている多くの人が、みなさんこちらに興味を持たれています。MiSTer FPGAはオープンソースのプロジェクトですが、少し調整するだけで機能させることができます。今回出展しているものはすべてプロトタイプなので、私たち(達成電気)は製品化する予定はありません。私たちはあくまでも、開発と製造をするだけの企業です。
――では、技術デモとしてこうしたレトロゲーム互換機を披露して、そちらに興味を持った企業と取引をしようということなんですね。
Andrew氏:はい、そうです。私たちの技術力を見せるためのすべて展示しています。たとえばこちらのマシンにセガさんが興味をもってくださったら、一緒にプロジェクトをしましょうといった感じです。なので、ライセンスを取得して、売るぞといったものではありません。
今日ブースに訪れた人たちは、ミニサターンがどんな感じなのか見たいと思っています。どんなフィーチャーがあるのか? どんなサイズになっているのか? そして最後に人々が何を欲しがっているかが大事です。
――こちらは皆さんに内緒で社長が作られたそうですが、夜中にこっそりと作業されていたのでしょうか?
Andrew氏:オフィスで作りました。わたしだけではなく、中国の向上にソフトウェアエンジニアがいるので、チームのみなさんが手伝ってくれました。コードを調整してコンパクトにできる人もいます。コンセプト自体も一緒に考えて、ミニサターンのコンセプトにどんなアイデが合うのか考えました。
――MiSTer FPGAはオープンソースですが、それ以外のFPGAで開発は考えられていますか?
Andrew氏:MiSTer FPGAは、デモに使えるコンビニプラットフォームです。マスプロダクションに関しては、低エンドハードウェアを使う必要があります。MiSTer FPGAは高価です。デモに使えるのはいいですが(笑)。
――MiSTer FPGAはコストが掛かりすぎるんですね。
Andrew氏:MiSTer FPGAにはセガのBIOSは含まれていません(※著作権に絡む部分であるため、自分で別途用意してセットアップする必要がある)。セガのBIOSはセガのIPです。仮にセガがこうしたマシンを作りたいというときは、機密になっている部分を開示していただき作ることは可能です。
最後に1番大事なことをお伝えします。私たちは、アンラインセンスなプロダクトを一切販売するつもりはありません。誰ともケンカしたいとも思っていません。ケンカを売っているわけでもありません。
――そういう目的で出展したというわけではないということですね。
Andrew氏:繰り返しになりますが、透明性ということを大事にしています。たとえばセガさんが、この展示をやめてくださいといわれたら、すぐに取り下げます。私たちが証明したいのは技術力です。こうしたプロダクトでなにができるのか? ということをコンセプトとして見せています。
X(旧:Twitter)などで「これはアンライセンスな商品じゃないか?」とおっしゃっている方もいますが、そういうつもりではありません。ただの技術デモなので、日本のゲームの未来として何ができるのかということを、一緒に探っていく感じです。
技術的にこうしたものが可能だということを見せたくて、私たちは工場でもありますが、単に中国とベトナムに工場を持っているだけの会社ではなく、テクノロジーの会社でもあります。私自身も博士号を取得したエンジニアです。その技術力を見てもらいですね。
――わかりました、ありがとうございます!
達成電気ブースに展示されていたレトロゲーム互換機
Andrew社長のインタビューにもあったように、基本的には技術デモがほんどんだった、達成電気のブースに展示されていたレトロゲーム互換機。いずれもよく見てみると、レトロゲーム系のガジェットにある程度リテラシーがある人なら、ほとんど知っている技術を使っているものばかりでした。
今回すべてのプロダクトはチェックしていませんが、いくつかをピックアップしてご紹介していきます。
ニンテンドー3DSの互換機
FPGA系の互換機などはシークレットブースのようなスペースで展開されていましたが、目立つ場所に設置されていたのがニンテンドー3DSの互換機のデモです。90Hzのリフレッシュレートと2400×1080ピクセルの解像度、輝度600nitsのAMOLEDをデュアルスクリーンで搭載(6インチと7インチ)。
「RED」は、ニンテンドー3DSが遊べるマシンで、「BLUE」はRyzne 5でPCゲームがプレイ出来るものとなっています。3DSはFPGAベースではなくエミュレーターでROMを動かしているとのこと。
セガサターン互換機
Andrew社長へのインタビューで最も詳しく聞いたのが、FPGAベースのセガサターン互換機です。『ミニサターン』といった呼び方をしていましたが、こちらはオープンソースのMiSTer FPGAを使用しており、コアもウクライナに住むFPGA開発者として知られるSergey Dvodnenko(@srg320)氏が開発したセガサターンコアが採用されています。つまり、普通のMiSTer FPGAといったところですが、サターンの筐体の中にDE10-Nanoボードを収めて、それらしく仕上げているようです。
開発したのはAdrew社長自身でもありますが、極秘で作っていたものだそうです。本来こうしたイベントに余りだしたくないという意見も社内にあったようですが、社長自身が技術者でもあるため、できたものを見せたいことから出展されています。
ゲームボーイアドバンス互換機
こちらはゲームボーイアドバンス互換機……というよりも、中身はまんまオリジナルのハードウェアで、ゲームボーイアドバンスをHDMI出力化するMODの『GBAHD』を使用したものです。ものがわかってしまうと、な~んだ、あれかとなりますが、知らない人たちにとっては興味深く見えるのかもしれませんね!?
世界最小サイズのPS2互換機?
……っていうか、見た目がPS1だろ! というツッコミを入れたくなってしまうのが、世界最小サイズ(推定)をうたっていた、PlayStation 2の互換機です。
中身がエミュレーターかオリジナルのハードを利用したものなのかはわかりませんが、FPGAベースではなさそうです。主に「psx-pi-smbshare」や「Open PS2 Loader」、「FreeMCBoot」を使用しているということなので、FMCB化したPlayStation 2をラズベリーパイに接続して遊べるようにしているようですね。
唯一商品化が予定されているFPGAベース互換機の『RETRON FPGA』
基本的にコンセプトを披露するためのデモ機の展示がメインでしたが、同ブース内にはHyperkin Japanの社員の方もおられ、展示されていたのが『RETRON FPGA』というHyperkinからリリースが予定されているFPGAベースのマルチレトロゲーム互換機です。
ポスターをよく見てみると、黒いマシンがどうやら本体となっており、NESのカートリッジはアダプターとして接続している模様。『レトロフリーク』などと似たようなスタイルなのかもしれません。
今回出展されていたものは、コンセプトのようで、こちらをHyperkinが自作キットあるいは製品として販売するかは確定していないようです。早ければ来年末、もしくは再来年を目処に販売される予定とのこと。
ファミコンだけではなく、2000年代以前にリリースされたほぼすべてのゲームがプレイ可能で、オリジナルのコントローラーが利用できるほか、HDMI出力もできるようになっています。
MiSTer FPGAのようなものにゲームのカートリッジからROM化して読み込めるよな感じのシステムになっているのかもしれませんね。