日本でも『Steam Deck(スチームデック)』が発売されて、その魅力の虜になっている人が増えてきています。よりふかくこのマシンについて知ろうとしたときに、ちょくちょく目にするのが『Proton』です。人によっては、オリジナルの『Proton』よりも『Proton GE』のほうが優れている、もしくは動かなかったゲームが動くようになったという声も耳にします。
はたして、この『Proton GE』とはいったいなんでしょか? 今回は、ノア・クペツキー氏のレポートの抜粋と合わせて、その概要とセットアップ方法をご紹介していきます。
●Proton GE Steam Deckガイド
https://steamdeckhq.com/tips-and-guides/the-proton-ge-steam-deck-guide/
『Steam Deck』には、Arch LinuxをベースにしたValveオリジナルのSteamOSが採用されています。ここで少し時間を遡りましょう。Linuxがリリースされた2年後の1993年に、『Wine』が作成されました。これは、互換レイヤーと呼ばれるもので、Linux上でPCのアプリケーションを動かすためのプログラムです。しかし、PC用に作られたゲームは非常に複雑であったため、この『Wine』はそれほど受け入れられることはありませんでした。
そこで登場したのが『Proton』です。
2018年に、CodeWeavers の開発者と提携しているValveが『Proton』をリリースしました。こちらも『Wine』同様に、LinuxベースのOSでウィンドウズのアプリを動かすための互換レイヤーですが、ゲーム用のアプリを動かすためにゼロベースから設計が行われています。
『Proton』は、ゲームで使用される特定のライブラリーとソフトウェアでコンパイルされており、パッチが適用されたバージョンの『Wine』の上にあるレイヤーです。これにより、ウィンドウズのゲームで使われるDirectXなどの固有の呼び出しを、Linuxで読み取り可能なVulkan形式に変換しています。
『Proton』により、多くのゲームが互換性を保つようになり、多数のゲームの安定性が確保され、多くのサポートが提供されるようになっています。
Steam Deckではなぜウィンドウズが採用されなかったのか?
Linuxは、オープンソースで非常にユニークなOSです。ビルドのために使用される全てのコードは公開されており、誰でも変更が可能です。そのため、Linuxには様々なバージョンやフォークが作成されてきました。その中には、UbuntuやMintなど有名なOSも含まれています。
Valveはこれと同じアイデアで、『Steam Deck』で使用するSteamOSを作り上げています。独自のOSを作ることで、画面のリフレッシュレートやフレームレートキャップ、電力制限 (TDP) の制御など、ゲームプレイを強化するための機能を盛り込むことができたのです。また、こうした要素こそが『Steam Deck』を驚異的で用途の広いデバイスにしているのです。
『Proton GE』とは何か?
『Proton GE』は、ひと言でいうならば『Proton』のカスタムバージョンです。通常の『Proton』は、ライセンスの問題などでゲームのビデオ用メディアエンコーダーなどが含まれていないものがあります。しかし、『Proton GE』は商用的にリリースされているわけではなく、いわば野良アプリのようなものです。そのため、そうしたライブラリーも内包することができるのです。
一部のゲームでパフォーマンスが向上したり、互換性が上がることがあるのは、こうしたライブラリーに対応などが理由になっているのかもしれません。
『Proton GE』自体は、GloriousEggroll氏が個人で開発・更新をしているもので、おそらくその名前のから「GE」と名付けられていると思われます。そうしたこともあり、オフィシャルの『Proton』よりも頻繁に更新が行われ、多くのゲームがサポートされています。その反面、多くのバグが紛れ込む可能性もあります。GloriousEggroll氏自身は、そうした困難を日々乗り越えながら、開発を続けているそうです。
●『Proton GE』のGitHub
https://github.com/GloriousEggroll/proton-ge-custom
『Proton GE』のセットアップ
『Steam Deck』に『Proton GE』を導入する方法はふた通りあります。ひとつはGitHubからファイルをダウンロードして、自分でセットアップを行う方法です。それでもいいのですが、もっと楽にセットアップする方法があります。
それが、DavidoTek氏によって開発された『ProtonUp-QT』と呼ばれるプログラムを使用することです。
まずは『Steam Deck』をデスクトップモードで起動して、ストアアプリの『Discover』で「ProtonUp-QT」を検索してインストールしましょう。
インストールした『ProtonUp-QT』は、ウィンドウズメニューのようなところの「Utilities」に入っているので、デスクトップにショートカットを作っておいてもいいでしょう。
『ProtonUp-QT』を起動すると小さいなウインドウが表示されます。「Add version」をクリックしてインストールするメニューを表示します。この時点で最新バージョンが選択されています。
「Install」をクリックして、インストールをします。インストールが完了すると、リストにインストール済みの『Proton GE』のバージョンが表示されます。また、ここでゲームリストを確認することも可能です。
とりあえずインストール自体はこれで完了したので、ゲームモードに戻りましょう。
『Proton GE』の使用方法
たとえば、『CONTROL』で『Proton GE』を設定したいときは、ゲームを選択して歯車マークのアイコンを選択します。
メニューが表示されるので「プロパティ」を選択し、「互換性」のタブを表示します。そこで「特定のSteam Play互換ツールの使用を強制する」にチェックを入れると、リストが選択できるようになるので、先ほどインストールした『Proton GE』を選択すればOKです。
互換性がいまいちだったり、パフォーマンスが思ったほどではなかった、あるいはゲームが起動しないときなどは、この「互換性」のチェックを外しましょう。
via.Steam Deck HQ、Reddit