糸井重里氏がディレクターとシナリオを担当し、日本では1989年7月27日に任天堂からファミコン向けRPGとして発売された『MOTHER』。北米でもリリースに向けてローカライズ作業が行われていましたが、スーパーファミコン(北米ではSuper Nintendo Entertainment System)の発売が1991年8月13日に迫っていたことなどの理由により、1991年に発売中止が決定されました。
それから25年が過ぎた2015年。米国で開催された「任天堂ワールド・チャンピオンシップ2015」に糸井重里氏が登壇。本作が、『EarthBound Beginnings』というタイトルで Wii U向けバーチャルコンソールとして配信されると発表。2015年6月14日より北米でも配信が開始されています。
『Mother to Earth』は、その『MOTHER/EarthBound Beginnings』シリーズの誕生から、1990年初頭に失敗に終わってしまった英語版ローカライズの歴史を伝えるドキュメンタリーとして、クラウドファンディングのキックスターターで資金の募集を行い作られた作品です。
英語版ローカライズの中止から、なぜ25年後にあらためてローカライズされリリースされることになったのか? 2000年代初頭から、ネット上で公開されていたローカライズされたゲームを、ファンがどのように見つけたのかといったことについて迫っていきます。
本作のために、様々なレトロゲームコレクターの元も訪問。その中には、正式リリースされる数十年前に、ローカライズされたプロトタイプをリークし、ハッキングやアップロードの手伝いをしたという人物も含まれているそうです。
元々北米向けにリリースするために、ローカライズ作業が行われた『MOTHER』ですが、翻訳作業そのものも、ニンテンドー・オブ・アメリカにとっては大きな負担でした。膨大な量のテキストを翻訳するだけではなく、薬物使用、宗教的または性的なコンテンツなどの検閲も同時に必要になるからです。
また、ゲーム内に新機能も追加していました。これは、ゲーム内のマップ機能をアイテムからスタートボタンに変更したり、キャラクターやエリアの名前をアメリカ向けに変更も行われました。残念ながらリリースに至らなかったこの北米版『MOTHER』ですが、その後『EarthBound Zero』として海賊版が出回ります。

ちなみに『MOTHER3』は海外ではリリースされていなかったものの、ファンの手により翻訳されたパッチがリリースされています。こちらは12人のメンバーが翻訳作業に携わり、2年と数千時間という膨大な時間がかけられたそうです。それを翻訳フリーランスのコストに換算すると、3万ドルにもなるといわれています。
2020年3月現在、いまだ『MOTHER3』の正式リリースは北米で行われていませんが、米国の大手通販サイトではこの海賊版と思われるバージョンが販売されています。


本作の制作には、2年にわたる調査や研究が行われてきました。クラウドファンディングそのものはすでに終了していますが、オンラインストアでデジタルダウンロードや、DVD、Blu-Rayディスクの他、Tシャツなどのグッズも販売されています。
リリース時点では英語版のみのようですが、今後日本語などの言語に対応されることを期待して待ちましょう。

●Mother to Earth公式サイト
https://www.mothertoearth.com/
●Mother to Earthクラウドファンディングページ
https://www.kickstarter.com/projects/1168741079/mother-to-earth-a-documentary-about-earthbound-beg
MOTHERシリーズの歴史
- 1989年7月27日にFC用『MOTHER』が日本国内で発売
- 1994年8月27日にSFC用『MOTHER2 ギーグの逆襲』が日本で発売
- 1995年6月5日に『MOTHER2 ギーグの逆襲』の海外向けタイトル『EarthBound』が発売
- 2003年6月20日にGBA用ゲーム『MOTHER1+2』が日本国内で発売
- 2006年4月20日にGBA用ゲーム『MOTHER3』が日本国内で発売。海外でのリリースはなし
- 2015年6月14日より『MOTHER』の北米版『EarthBound Beginnings』がWii U向けバーチャルコンソールとして配信開始